ジュリア・フォレスター

旅立ちの初夜

『あっさり、しろからはらわれたな~♪』



 勇者ゆうしゃ日野ひの雄大ゆうだい』(17さい)は、勇者とう穂村ほむら』に揶揄からかわれていました。

 ――と、っても、これでも、穂村は、雄大を元気げんきけているつもりです。


 雄大は、聖騎士せいきし『セシル』のけんで、王城おうじょうから追いされるようなかたちで、たびつことになりました。

 穂村が、あかるく言います。


『こうなったら、わたし結婚けっこんするかい?』

「すまない‥‥無理むりだ」


 雄大は、穂村のづかいの冗談じょうだんを、真面目まじめことわりました。



 みち案内あんないのレンジャー女性じょせい『ジュリア・フォレスタ―』(24才)がげます。


数日すうじつほど、街道かいどうでの旅路たびじになります」


 その言葉ことばに、雄大は、かるうなずきました。

 二人ふたりかたなは、旅をつづけます。


 やがて、れてきました。



#街道沿いの野宿のじゅくで――

 ジュリアが、雄大を気遣います。


今夜こんやは、えるので、一緒いっしょ毛布もうふくるまりませんか?」

遠慮えんりょする」


 きっぱりと、雄大は、もうを断りました。

 それでも、ジュリアは、ほほあからめながら、続けて言います。


「では、勇者さま‥‥わたしでければ、その‥‥」

無駄むだだ、生娘きむすめ‥‥こいつは、むくわれないこいきる、玄人くろうと童貞どうていだからな!』


 穂村が、雄大を揶揄やゆして、ジュリアを気遣いました。

 すると、ジュリアは、すこしだけ安心あんしんしてつぶやきます。


「そうですか‥‥」


 ジュリアの呟きには、少しばかりの落胆らくたんじっていました。



 旅立ちの初夜しょやは、しずかにけて行きました。

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