20.マルコの提案

 マルコさんより、今回の依頼の詳細を説明してもらう事となった。


「まずは⋯⋯そうだな。ソラはロックタートルについて何も知らないよな?」


「知りませんね」


 俺は山奥で育った事になっているので、基本的な常識なんてものは備わっていない設定になっている。

 元の世界でいう所の、狼に育てられた少年みたいな感じだろうか。どんな野生児だ。


「だよな、ロックタートルについて簡単に言うと。

 鉱石を食う亀だ」


 その後マルコさんの説明を受けるも、他のメンバーの補足やらが飛び交う。

 分かったことは以下の通りだ。


 ロックタートルとは。

 要はデカい亀だ。

 主な食料として、鉱石の入った岩石を食べる事からロックタートルと名付けられたらしい。


 このロックタートル。

 狩る事自体は難しい事ではない様で。

 動きが亀と同じようにゆっくりしているという事、但し甲羅は硬い。

 俺の知っている亀と、同じような生態をしている。


 しかし、ここは異世界。

 このロックタートル、鉱石を持って近づくと物凄い勢いで襲ってくるという。〈収納魔法アイテムボックス〉に入れても感知してくるようで。

 普段は鈍感だが、鉱石を持って近づいた時だけ、とんでもない速さになるそうだ。


 そういう理由がある為。

 討伐役、解体、回収役と役割を分けなければいけないらしい。


 討伐自体はシルバーファングの面々でも問題ないが、解体して手に入れた素材を持ったまま戦う事ができない為、今回俺達2人に手伝いを要請して来たらしい。


 とは言っても〈収納魔法アイテムボックス〉の性質上。

 信頼していないと回収役は頼めないので、俺とシャロの事をシルバーファングの面々は、それなりに信頼してくれている様だった。


「時折な、妻がお前達2人が街の依頼を頑張っている姿を見ているらしいからな」

「だな、俺のトコも時々話題に出るぞ」

「実はうちの実家にも、ソラが何度が手伝いに行ってるんだぜ?」


 思ったよりも俺とシャロの評価は高いようだった。


「まっ、そんな訳でな。知らない赤の他人を雇う位なら、知り合いのお前たちを雇おうって事になったんだよ」


「なるほどー、そう云う理由なら喜んで受けます。な、シャロ」


 俺的には問題無いので受ける事にするが、シャロはどうだろうか。


「あたしもいいよー」

 シャロも同意してくれた。


「そうか。なら2人とも参加って事でいいな?」


「はい」

「いいよー」


「よしっ!それじゃあ明日の朝に門の前に来てもらってもいいか?あと〈収納魔法アイテムボックス〉の中は出来るだけ空けて置いてくれ。ああ、それと目的地までは、歩いて1日位掛かるから。途中で野営もしなきゃならんが、その辺の道具は俺達のお古を渡すからそのつもりでいてくれ。」


「分かりました。食事は自分たちで用意しておいた方がいいですよね?」


 野営何て初めてだな。

 色々と準備が必要かと思ったが、野営の道具は貸してくれるっぽいな。

 それ以外に必要なのは食料位か。


「そうだな。その辺は好きにしてくれ。念の為3日分位の食料は持つようにしてくれ」


「そうだ。俺この前盾壊れてからそのままでして、今ヴィーシュさんの所で、作ってもらってる最中なんですけど。盾無しでも大丈夫ですか?」


 気軽に荷物持ちを受けると言ったが。盾がないのを思い出した。


「盾か⋯⋯、基本戦闘は俺達がやるからな。剣はあるな?よし、それなら大丈夫だ」


 大丈夫だった。


「そうそう。報酬の割合だが俺達が8でおまえらが2でいいか?大体これくらいの金額だな」


 マルコさんから提示された額は結構あった。


「7:3で」

 シャロさん?

 さっきまで黙ってたくせに、シャロが急に交渉し始めた。


「8:2だ」


「仕方ないね」


 シャロが肩を竦めながら、ヤレヤレといった感じを出していた。

 なんなんコイツ。


「一回こういうのやってみたかったんだよねー」


 理由がおバカ。

 マルコさん達も思わず苦笑い。


「じゃあ、打ち合わせはこれ位でいいな?他に聞きたい事とかあるか」


「俺は特にないですね。シャロは?」


 依頼の内容はあらかた聞き終えたよな。

 他に聞きたい事も特にないし、シャロはどうだろうか。


「あたしもー」


 シャロも特に聞きたい事は無い様だった。

 そう云う事で、この日は解散となった。


「それじゃ、明日宜しくな」


 明日の準備の為、マルコさん達は宿屋を出て行った。


 俺達は何をするか⋯⋯。

 流石に今からギルドの依頼を受けるのもなんだしな。

 ギルドの資料室に行って、ロックタートルの情報でも集めておくか。


「俺はこれからギルド行くけどシャロはどうする?」


「あたしは装備の整備しとくかなー」


 じゃあこっからは別行動だな。

 俺はシャロと別れて、冒険者ギルド内にある資料室へと向かった。


 ◇


 冒険者ギルドの資料室には様々な資料がある。

 魔物の特徴や生態を記した本だったり。

 薬草、鉱石と云った採取系の本もある。

 他にも街の歴史の資料などもあるが、今回は用が無いので見る事は無いだろう。


 俺はこの世界に転移した際に体を弄られたのか、この世界の文字を読むことが出来るし、書くことも出来る。


 文字自体は見た事も無い形をしているが、何となくで読めるし書ける。

 一応意識しながら書けば日本語も書くことが出来た。

 この辺の原理は良くわからないし、考えるだけ無駄だろう。


 暫く資料室の魔物について書かれている本から、ロックタートルについての情報を見つける事が出来た。

 分かったことは以下の通りだった。


 ロックタートル

 自動車位の大きさのデカい亀だ。

 鉱石を含んだ岩石を好んで食べる様で、山の中腹か鉱山の近くに生息する魔物だそうだ。

 食べた岩石から鉱石を体の中に蓄える習性があるらしく、冒険者の間では[鉱石袋]と呼ばれたりしていたりするとか。

 蓄えた鉱石は不純物が取り除かれている為。質の良い鉱石になるのだそうだ。


 動きが遅く倒すのはそう難しくない魔物なのだが、鉱石を持った人間に対しては過剰な敵意を示すようになり、普段のゆっくりした動きからは想像できない程のスピードで襲ってくる。


 〈収納魔法アイテムボックス〉に鉱石を入れていても、感知して襲ってくるので狩りをする際は、狩る人間と鉱石を保持する人間とで2つに分かれて行動しなければならない。


 因みに肉は食用には向いていないそうだ。


 一通り資料に目を通してみたが得られる情報はこれ位だった。

 概ね、マルコさん達から聞いた情報と同じだな。

 知りたい情報も得られたし、残りの時間は持ってく食事の用意に当てるか。

 シャロの分も一応作っておくか。


 俺は冒険者ギルドを後にし、市場へと向かった。

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