転移先はロクでもない世界で・・・
ノエ丸
1.転移先の草原で
夢を見ていた。何の夢なのかわからないが一人の男と対峙していた。
「なぜ君と戦わなければいけないんだ!!」
目の前に居る男は苦痛に顔を歪ませながらも声を荒げ叫んでいた。
「他に方法があったはずだ!」
自分の口が動いているのわかるが何を言っていたのかまではわからなかった。
頭の中に響く声が五月蠅い。男の目を真っ直ぐ見つめ、俺は剣を振りかぶりながら男へと駆け出した。
「っ!クソぉぉおおおお!!」
男の剣はあっさりと俺の胸を貫いた。想像以上の痛みが俺の胸に走った。
「な、なんで・・・」
男は驚いた顔をしてこちらを見ている。そりゃそうだろうな。どうしてそうしたのか分からないが、自分から刺さりに行っていた。向けられた切っ先に自ら身を沈めるように。
口から血を吐きながら倒れこむようにもたれ掛かる。
抱き止めた男は震えていた。
「どうして・・・なぜ避けなったんだ・・・・・・」
男に向け何かを口にしたがそこで意識が途切れた。
◇
ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ ピッ
んぅー。なんか夢を見た気がする、胸の辺りさすりながらベッドから身を起こした。
何かの夢を見ていたが内容までは正確に思い出せなかった。思い出せなかったが胸に残る違和感だけはハッキリと覚えていた。
取り合えず目を覚ましに顔を洗い。学校に行く準備をパパっと済ませるかな。
俺は顔を洗い、簡単な朝食を取った。
両親は共働きで家庭より仕事な人間なので朝でもあまり顔を合わせることはない。あれこれ口うるさくされずに自由にできるので楽なのだが小さい頃は寂しく感じていたな。唐突にそんな事を思いながら俺は家を後にした。
◇
いつもと同じ通学路を歩いていると後ろから声をかけられた。
「おはよう、空」
おう、おはよう。
声のする方を振り返り何時も通りに朝の挨拶を返す。
声を掛けてきたのは幼稚園からの友人であり、親友の
顔もよければ性格も良い。文武両道で女にもモテる。物語でいう所の主人公のような存在だ。
因みに俺の名前は
二人で学校までの道のりを喋りながら歩いていると、不意に今朝見た夢の話になった。
そう言えば今日変な夢見てな~。
内容は詳しく覚えていないが断片的な内容を話し胸に嫌な感触があったことを話した。何故か翼は考え込むようにしながら俺の夢の話を聞いていた。
「僕もここ最近同じ夢を見るんだよ。なんだか空の見た夢と似ている気がするよ。もっとも僕の場合は刺す方なんだけどね・・・」
翼は自分の手を見つめながら、少し悲しそうな顔をしていた。確かにあの夢の男が翼なら俺を刺し殺したのは翼ということになる。仮にあの夢が本当だとしても、何らかの事情があってコイツに殺されるなら・・・。俺は許してしまうだろうな。
事情が在ってお前に殺されるなら、それはそれで有りだけどな。
そう笑いながら言うと翼は少し怒りながそれを否定した。
「どんな事情が在っても、僕は君を殺すなんてことはしたくないよ・・・」
・・・そうか。
なんだか空気が重くなってしまったので、話題を変える為に今日の授業の話を切り出した。
そういえば1限目の数学の課題やってきたか?昨日発売したゲームをプレイしていてすっかり忘れてしたんだけど。もしよかったら写させては頂けないでしょうか?。
俺は頭をヘコヘコしながらお願いした。
「まったく、写すのは良いけど今度何かで埋め合わせはしてよ?」
フフフッと笑いながらそう言ってきた。持つべきものは秀才な親友だよなぁ。俺はこの高スペックの親友に感謝の気持ち抱きながら学校への道をいつも通り、他愛のない会話をしながら共に歩んでいった。
俺たちは何時も通りに学校へ到着しクラスへと向かった。
因みになんの奇跡か小中高と俺等はずっと同じクラスなのであった。どっちかが休みでもない限りは何時も一緒に登校していた。
それが原因なのかはわからないが、翼が教室の扉を開けた時。俺達は光に包まれた・・・。
◇
光が消え、眩しさが無くなり目を開くと・・・。
そこは見慣れた教室ではなく。
見渡す限りの草原が広がっていた。
勿論見たこともない草原だ。
え?なにこれ・・・。
あまりにも現実離れした現象に脳がフリーズした。
どういうことだ、何が起きた。直前の行動を思い返す。
俺と翼は学校に付き何時も通りに、教室への扉を開けた・・・。
そうだ!翼は!。
慌てて周りを見渡すも自分以外には誰も居らず小高い草原の上に、俺一人だけが佇んでいた。
一体何が起きたんだよ・・・
俺は1人そう呟き、頭を抱えその場にへたり込んだ。少しの間思考が止まっていたが、自分の荷物を確認することにした。
着ている服は制服のままか。カバンも背中に背負っているし中身も無事だ。ここが何処なのかを確認する為に立ち上がりポケットからスマホを取り出し画面を見る・・・。
そこには圏外の文字が映し出されていた。
「もしかして此処って異世界というやつなのか?」
俺は時折漫画やアニメで目にする異世界という所に来てしまったんではないかと考察する。
取り合えず足元に生えている草をじっと見るも、専門的な知識がないのでこれが地球産の植物なのかもわからない。他に何かないかと周りを見渡しそのまま空を見上げると。
「太陽二つあるじゃん・・・」
割と簡単にここが日本ではないことが分かった。太陽っぽい天体の横に、半分位の大きさの同じく光を放つ天体が俺の目に映った。つまり太陽が二つあるという事なのだろう。
雲一つ無い良い天気だ。俺はもう一度その場で頭を抱えた。
取り敢えずは今後の事を考えなければいけない。
此処が異世界だと云う事を前提に動くとしよう。確かこういう場合は神様的なのが出てきてチート能力や便利な道具をくれたりするのが定番だ。
・・・神様的なのは待てど暮らせど現れる気配が無い為その線は無いものとする。
次はステータス画面とかそんなのが表示されるやつなのだが・・・声に出すのは少し恥ずかしいな・・・ゴホン。
「ステータスオープン!」 シーン
出ねぇ!・・・ステータス!プロフィール!メニュー!ファイアーボール!。
・・・なんも出ねぇ。今後どうしたらいいんだこれ・・・。
この世界の情報が一切無い為どう動くのが正解かもわからない。言葉とか通じるのかな・・・。
一応草原の向こう側に道の様な物は見えるんだよなぁ。街道っぽい感じかな?
取り敢えずは村や街を目指してみよう。今後についてはその後考える事にしよう。何も考えずに街道に向かって歩いてみることにした。
状況が分からない今は、悪い方向に考えてしまうからな。一応学校に行く前にコンビニに寄ってお昼と飲み物を買っていたのが救いだな。一食しか持たんが・・・。
俺は小高い草原から見える街道を目指して歩き始めた。
体感で10分程歩いただろうか、俺は街道に到着しどちらに向かって進むべきか悩んでいた。
道の先を見ても村や町が在るのかわからない。もっともこの道を進んでも村や街がある保証なんてないしな。どうしたものか・・・。
そんな風に考えていると思わぬ出会いが待ち受けていた。
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