もう真夜中だから安心だな。

 狐の神、紅葉として最初で最後の仕事。

 『闇夜に咲く花は、消して光のもとへ行けずその場に行くのであれば…人の願いを叶える』

 代々行ってきたことだ。

 そして、私の番。

 この、願いを叶える縛りは一人一回。

 しかし、神たちの経歴は一神一回だった。

 それがもう一つの縛りである光が駄目なこと。

 圧倒的時間が少ないんだ。

 そして、書には「愛を知った」と言う記述が必ず書かれていた。

 きっと、私のようにみんな恋をしたのだろうね。


 「こんばんは、夏目桜花。私は紅…」

 「シロ?」

 そこには、今日の昼よりも痩せこけて疲れきった桜花が居た。

 「そうだよ桜花。シロだよ。」

 私は彼に抱きついた。

 弱い彼の力でも、抱き締め返してくれたのが分かる。

 それから、私が神で他にも色々とされて、して。

 夢のようだった。

 これが好き。

 愛する。

 「桜花、君は何を願う?」

 「うーん、俺はね~」

 陽気に上機嫌に真剣に…

 「兎卯香を治してやってくれ。」

 とだけ言った。

 「…それが、答えか?」

 「あぁ。それだけ…」

 「バカ飼い主。最後くらい自分を労れよポンコツ。変態。ヘタレ。イケメン。優男💢」

 「エェー」

 「気づけよ。私が神ではなく、個人として君を好きに成ってしまった。その償いを君にはして貰うからな。」

 「どういう?」

 「そのままの意味だわ💢」

 ッフ…。代償なんてどうでも良い。

 「一つ、人喰らう呪いの解除。

 一つ、私の前に居る桜花の病気の消滅。

 一つ、我が愛しき人が幸せに居きられる未来を譲渡」

 数刻の無音の末に…

 「?苦しくない?」

 「これで癌とはおさらば。お仲間さんの呪いも未来も守ったから。」

 「ッエ?じゃあシロとも結婚でき…」

 「つくづく調子の良い男だな。」

 「シロ?」

 体が光を纏って溶けていく。

 「お別れだ、桜花。」

 「っ…。待ってくれよ。行くな。」

 泣きそうな…。

 「男が廃るわよ。桜花、貴方に出会えて嬉しかった。ありがとう。」

 「俺ははお前が…」

 最後に彼の腕での中で眠れて良かった。

 幸せにね。

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雪月風花 桜吹雪 @dazai036

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