アタシの生活2 said:兎卯香

 その後のことは、よく覚えてない。

 気づいた時は真っ黒な要塞の前だった。

 アタシが連れてこられた屋敷には一言でいえば猫だった。

 部屋のいたるところに、猫をモチーフにした家具や小物があった。

 そして仮面の男は私を応接室に通すと、

 部下を下げて二人っきりの空間を作った。

 「僕の名は、猫さんとでもしておこう。」

 彼はそう言うとこう続けた。

 「君は、これから僕の直属の部下になってもらう。

 いろいろ頑張ってもらうけど、無理なことはさせないつもりだから。

 こんな形になってしまってすまない。

 これから、ここで生きていくすべを身に着けてもらう。

 敷地内は自由にしてくれていい。

 行く末お前は僕の妻になるのだから。」

 そう言うと、彼はアタシに仮面をとって見せた。

 傷は男の勲章とよく言ったものだ。

 彼の顔はとても見るに堪えない傷で様になっていた。

 「怖くないのか」

 いまさら何を言ってるのだろうか。

 この男はどうかしている。

 それから、もろもろの注意事項を説明し終わったら、

 アタシに傍付をよこし出ていった。

 傍付は無口だった。

 分からないことは大抵聞けば答えてくれるが…

 仕事の手際の良さに寒気がしたくらいだ。

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