雪月風花

桜吹雪

プロローグ

 『闇夜に咲く花は、消して光のもとへ行けずその場に行くのであれば…』

 時に、我は灰雪の中に居ます。

 辺りは、冷たく涼やかで我の髪のように真っ白。

 今宵の月は、我の瞳のように全てを見定めた琥珀色であった。

 我が名はもみじ。

 人の世を見守る狐の神である。

 とは言うものの、我の運命は永遠の時を彷徨い続けるからか、日々絶望している。

 池を除くと、猫が死んだ。

 珍しいことではない。

 ただ、この様子を見ていると少し、本の少しだけ悲しくも羨ましい。

 なぜかって?

 タイムリミットが有ることはとても幸せなことだ。

 時間があるから、大切に生きようとできる。

 それに、私が代替わりしてこの世に落ちたとき宿命は決まっていたのだから。

 一度ギリギリまで苦しめられ、絶望し何も感じず見守るという使命が

 目を閉じて、少し息を吐き、眠りに落ちる。

 最後に耳に残ったのは、風の寂しげな囁きだった。

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