蜘蛛

逢初あい

 

男は害虫駆除を専門としていた。市から雇われ、多額の報酬で駆除を行なった。男が望んだ訳では無かったが、彼を雇った者たちは嫌な仕事だからと喜んで金を与えた。

 男は自らが綺麗にしているこの街が好きでは無かった。この街は些か綺麗すぎるのだ。いつからか、自分だけが薄汚れていると感じるほどにこの街は清浄だった。その予感は的中することになる。街から害虫は消え失せ、外からも入って来る事は無い程に潔癖になったのだ。男は、職を失う事になった。これからの事を思案していると、役人が男の部屋を訪ねて来た。これまでの労から、報奨が渡されるらしい。幾人もの役人が来たのはなるほど、パーティーでもする訳だ。男は思わず涙を湛えた。

 それから、どれだけの時間が経ったのだろう。騒がしかった男の部屋は、シンと静まり返っている。窓を打つ雨粒の音が嫌に大きく聞こええるほどに。男は、騒ぎ疲れたのかベッドに力無く寝転がっている。強烈な眠気に、意識の糸はプツリと切れた。

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蜘蛛 逢初あい @aiui_Ai

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