第6話

わしはずっと一人だった。家族と過ごした記憶も徐々に薄れて。話し方も忘れるくらいに一人じゃった。あいつと出会うまでは。


 名前はおぼえている。飛鳥井空。かすかいくう。由来なんかは知らない知る前に離れ離れになったから。それだけは絶対に忘れないと心に決めている。

 手術台に縛り付けられよくわからない薬を毎日入れられる。それもいつからだろう、大体200年ほど前からだっただろうか。世代交代も何度か行われている様で見たことある顔のやつがちらほらいる。毎日体の中身を取り出される。前に臓器移植の実験が行われたことがある。それはもちろん失敗した。くうの臓器はすでに人間のそれではなく、化け物になっていて移植された奴は毒でも盛られたかのように苦しんで死んだ。

 今や日課になっている内蔵を取り出す手術はあまり意味はなくて、ただの医者たちの趣味に成り下がっている。

内蔵だけではなく目や手足もいじられる。特に目は大変で再生するまで真っ暗の暗闇で過ごすことになるから寂しいし怖い。手を握ってくれる人なんていないしずっと一人ぼっちでこの拷問に耐えなくてはいけない。何も悪いことなんてしていないのに。なんてこというと、生きていることが罪だと医者はいった。

 餅つききでついてもどんなに強い毒を打っても水に沈めても、高いところから落としても首をはねても動物に食わせても再生することが分かってからはひどかった。死なないようにしていた手術も実験ももっとつらいものになった。死ぬたびにすり減っていく、甦るたびに記憶も薄れていく恐怖で、くうは何も考えられなくなった。それからは楽になって自分が痛めつけられているのにどこか他人事のように感じた。

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