殿とは知り合い

まりとっつぉ

プロローグ 

 今の時代のように、平和な時代ではない。乱世と呼ばれるほど、この日本は荒れていた。その時代を、戦国時代という。



「秀吉様、お話とは何でございましょうか」


 一人の少女が大阪城に呼ばれる。彼女の名はこうという。彼女は以前、三回目の結婚をしたばかり。出来れば結婚に関係ない話がいいな。と思ったところ――


「洸、また嫁いでくれないか?」


 イラッとなる。洸の一番最初の相手は死別、二番目と三番目の相手は離縁になった。また別れるなら、いっそ息子法三郎と一緒に大阪にいた方がましだと思っていた。いくら秀吉が土下座しても。


「北条と縁を結ぶ為に、水下氏貞みずしたうじさだに嫁がせようと思ったが…………」


 水下氏貞は、北条氏政の家臣。旧・武田家臣だったが、武田が滅亡してから、北条に身を寄せていた。


「氏貞殿…………」


 洸の目から、光が溢れる。信玄や勝頼が愛用していたという噂があった。その人と結婚なんて、夢にも思わなかった。


「水下氏貞殿と、結婚します!」



 やってしまった。別に憧れていないけど。


 氏貞は洸の三歳年上。幼い頃に一回会ったが、よく覚えていない。多分、氏貞殿も覚えていないだろうな──



 当日。水下氏貞の居城で行われた。宮橋城みやはしじょうと言う。


「……洸です」


 氏貞の顔を見ないようにして挨拶した。


「洸か!久しぶりだな!」


 覚えていたのか……。


 あの時──父が信玄様と挨拶をしに行った時に起こったこと。


「信繁さま!信繁さま……!」


 信玄に頼まれて、信繁にこの書状を渡せと言われてきたのだ。


「信繁さ…………わっ!」


 誰かとぶつかった。見上げてみると、数え年6歳の少年だった。


「姫様、お怪我はございませんでしたか?」


 6歳とは思えない感じだった。その6歳の少年は、後の水下氏貞である。


「ありがとうございます!私は洸と言います。貴方あなたの名前はなんと言うのですか?」


「私は、桜五郎おうごろうと言います。」



 氏貞殿は、今も昔も変わらない。私の参謀という感じだ。



 結婚して一ヶ月後──


 洸は、女子を生んだ。法三郎の妹の関係になる。その女子は、れいと言う。

 法三郎は、零ととても仲が良い。養子も養女もいなかったから、妹がいるだけで幸せだ。


 その翌年は、宝響丸ほうきょうまるという男子を生んだ。これで、水下は絶やすことはないだろう。


 ある、雨の降っていたときの早朝のこと。


「洸」

 

 氏貞に呼ばれる。早朝に評定があったから、その結果を教えに呼んだのだろう。


「北条は、豊臣と戦う事になるだろう。戻らなくて良いのか?」


 そろそろ、今でいう小田原征伐が始まる。

 豊臣の関係者は、北条氏直の妻の督姫と、水下氏貞の妻の洸がいる。この二人が、両軍の架け橋となるのだ。


「私はここにいて、ここで氏貞様と共に果てます。でも、わざと負けないでください」


 また離縁するなら、果てる。そう決心したのだ。未練を残すことなく、幸せに。


「……わかった。共に逝く。約束しよう」


「早死にしないでくださいよ」


 そう二人で約束した。


 何が起こるか分からない、この時代に───









































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2024年12月20日 06:00
2024年12月21日 06:00
2024年12月22日 06:00

殿とは知り合い まりとっつぉ @marinba00

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