0286:モリヤ隊嫁会話①
「お館様はなんていうか~悩みすぎだと思う」
リアリスは前から、お館様が無駄に悩んでいるのを心配している。
「アレ、悩みすぎると髪の毛が抜けると思うんだけど。気にしてるよね」
厳しい。
現在、我々は王都の情報収集にあたっている。私、アリエリと、リアリス。そして今ここには居ないがクリシアが今回の担当だ。
まあでも、確かに。私もお館様は気を使いすぎだと思う。いくら界渡りでももう少しこちらのやり方で良いと思うのだけど。
「そうだね。悩みすぎは良くないし、一人で抱え込む事は無いと思う。私も」
「でしょう~?」
そもそも。我々ノルドの「訳あり」の穀潰し女(家に居るしかない出戻りの女などは、ノルド界ではそう呼ばれる事が多い)十人に「生き甲斐」を与えてくれたことだけでも、感謝しかないというのに。
それに……。
「ねえ、それにしてもさ~アリエリちゃんはどう思った? アレ」
「……」
思い出すだけで顔が赤くなってしまう。
「スゴイよね〜何されてるのか全くわからなかったよ〜。「まっさーじ」かな〜と思っていたらアレより上があったとはね」
頷く。
アレは相当なものだ。気持ちいいなーと思っていたら、力が抜けて、あんな感じやそんな感じにされて、更にお館様に一番近づいて、最後はドーンだ。
今思い出してもビビる。あんな事になるとは思わなかったし、あんな風にされるとも思っていなかった。アレはスゴイ。そして気持ち良かった。
すごく気持ち良かった。
「気持ち良かったね……あーもっとされたいなー」
「うん……」
でも、アレをするとお館様がかなり消耗する様だった。私たちは十人。さらにイリス様とファラン様もいるのだ。あ。あと、オーベ師もか。だが、オーベ師はする前のデータをもっと取っておきたいと言って、まだ、「して」ない。順番を譲って、最後にして、さらに、既に二周目もパスしている。
「ここまで長生きしてきたのだから、多少の時間は関係ないのじゃ。それよりも、強化される前に今ある術の全部のデータを記録してからじゃな」
怖がってる……感じでは無かったので、本気で学術的なモノなんだろう。さすがハイノルド様だ。我々ノルドとは格が違う。
同じ様な理由でファラン様も、二周目はかなり遅い番手だった。研究熱心だ。
ああ、その番手、順番を決めたのはクジだ。お館様はそんなんで……と言っていたが、公平でいいと思う。文句も出ないし。最初、イリス様が腕比べにしようとか言っていた。あれは最悪だ。最低だ。イリス様は領主として非常に好ましいし、尊敬してるけれど、物を深く考えないし、その手の事はお館様に丸投げするし、最終的に力勝負で決着させようとするのはずるい。
力勝負だと破格で強いからなぁ……。
まあでも、お館様が、イリス様は本妻なので一番ですと宣言したので、そこはあっさり決定した。その後はクジ。全部クジ。
「でもさークジって運の良い人には勝てないってことだよね……」
「お館様が運の能力値っていうのは無いそうだから、平等でいいんじゃ無い?」
「んーんーなんかさーオーベ師じゃ無いけどさ。データを取ると運の良い人、悪い人が判るんじゃ無いかな?」
……リアリスが……なんか、本気だ。というか、お役目というか、仕事をほっぽり出して、その研究を始めそうで怖い。というか、頭の中はそれでイッパイ……なのかもしれない。
「ただいま~」
小さいめの挨拶とともに、クリシアが戻ってきた。ここは王都の市民街。お館様が購入した小さな一軒家だ。近所には商人の別宅ということになっている。
「どうだった?」
「んー大して進展というか、動きはないみたい。マセル達がザワザワするような動きも無いって言ってたから、本当に何も無いんだと思う」
クリシアはモリヤ隊の中で唯一、獣を使うことができる。獣使いの能力を持っているのだ。まあ、元が「訳あり」なので、会話が理解出来たり、完全に使えるのは
まず、賢さ。
さらに、数。王都だけでも千はくだらない。それだけいると、人だけでなく、物の流通経路の情報も押さえられる。
そんな彼らが本能で上げてきた情報なのだ。信用するに値する。
「そっか。じゃあ、しばらくは……大丈夫なのかな?」
「うん、だと思う……けど~」
「けど?」
「なんでもない。もう少し確定してからじゃ無いとデータにもできないし。ただ、みんなの勘は当たるから、お館様には報告する~」
はっ!
「そうやって! お館様に役に立つでしょアピールする気でしょ!」
「……」
「各街の
「い、いいじゃな~い。あた、あたし、みんな(マセル)の情報の回収の手間で皆よりもオベニスに帰れる時間が少ないんだから~」
「……」
「……」
「さびしいね」
「うん」
「お館様に会いたいな~」
「会いたいね」
「うん」
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