0283:コンビニに行く途中だった

 元々避難を想定して造られたこの地下居住区には、緊急用の配給所を兼ねた店舗兼倉庫的な建造物が各エリアに数カ所用意されている。


 これ、ちょっとズルイというか、21世紀地球なら、大統領が自分の娘を社長にしたコンビニを特定の区域に独占開店させる的な、完全な汚職なのだが、俺が俺の思うとおりのコンビニが欲しいので、公的権力を有効活用して、最大限の価格努力を行って格安店を建造していこうと思う。


 貴族が自分の領の御用商人を弟の経営する商店に設定し、商圏をやりたい放題して牛耳らせるなんていうのは世界的に当り前らしいので、別に気にしなくていいらしい。


 ちなみに本店は地下領主館の片隅……商品研究開発室は俺の部屋のすぐ裏に予定している。


 まあ、他を自然淘汰するような格安店を用意すると、当然、転売が行われることになってしまう。で。そこで有効なのが領民カードですわ~。


 家賃を天引き収納する際に大活躍だったわけだけど、今回も大活躍してくれそうだ。この俺のコンビニ、略して俺コンは領民カードのポイントだと超割引で買い物が出来る。領民カードには支払った税金に応じて、特定の割合でポイントが蓄積するようになっている。まあ、単純に税金を直接還元しているだけなんだけど、そのお得感がスゴくなるように設定する。人間、オマケを好むのは一緒の様だ。


 例えば。ジャガイモを薄くスライスして油で揚げて、塩を振った食べ物。まあ、うん、前の世界の様に薄く切れる訳じゃ無いから、ちょい厚めでボリューミーなんだけど。これはポイントだと1ポイントで交換できる。なんかお安い!


 地上の市場や屋台で、普通にお金で買うと5Gとかだ。油が高いのでどうしょうもないのだという。一食分のパンひとつが1G=約百円くらいなので、かなり高いおやつ? おつまみ? が、働いているうちにいつの間にか溜まっているポイントの最小単位で購入出来てしまうのだ。


 あ、でも何でも格安ってわけじゃないよ? そもそも、生活必需品は地上の市場で買えばいい。安いのは、ちょっとした軽食、飲料、お菓子。それ以外は割高。特に食料品は高いし、生鮮食品は置かないで調味料中心。将来的にはオベニス新聞とか、オベニス食べ歩きMAPとか、都市案内的なモノも用意したい。紙がね、輸出するだけある=オベニスでは手軽に使用出来るようになっているからね。うん。


 トイレットペーパーは以前から行っていた、芯交換システムが機能している。水洗トイレに別のモノを流されたら困るからね。


 あ! アイスとか……売れないかな……。どうかな? 迷宮で生み出せるリストの中に冷凍庫……あったよな。確か。だって、仮設住宅にも冷蔵庫兼で付いてたし、今の領営住宅? にも付いてるんだから。


 と思って確認してみたら。この冷凍冷蔵庫。氷の術を冷凍部分で発動させて、その冷たさの余波をそのまま下へ落として、冷蔵部分も冷やしていることが判明。なので、冷蔵部分の上の方に生鮮食品を入れると凍っちゃって大変……ってなことになりかねないというか、なっているらしい。


 で、当然の様に、冷凍庫と冷蔵庫、セパレートタイプも存在した。よかった。というか、この辺はもう、本当に、茂木先輩の趣味次第で、設計、製作、登録されているっぽいので、これはあるだろう? っていう物がない可能性もある。まあ、どちらも、魔石を使用するタイプはこの世界のお金持ちであれば所持しているのが普通。そこそこ高級であれば料理店や食料品店にもあるし。知られているからね。


 とはいえ。食べ物を凍らせて冷凍庫で保存……っていうのは厳しいよなぁ。


 まずは、アイスで冷たい食べ物っていうのがどういうモノなのか? っていうのを認識してもらうところから始めたい。


 それと……もうひとつ。禁じ手を使用している。塩。砂糖。アイスを筆頭に……このコンビニで売る食品関係には、DP(ダンジョンポイント)で変換した、塩、砂糖を使用している。


 そもそも、オベニスの周りには海がない。なので、まず塩は岩塩だ。元々は東の辺境伯領に塩湖が存在し、それを切り出した物を使用していた。

 正直、どんなに細かく砕いて、不純物を除いても、独特の苦みがあって日本人にお馴染みのまろやかな塩味とはほど遠い。料理の味が限られてくる。


 ちょっと前から、セズヤ王国との取引に海から取れた塩が追加されているので、贅沢になり始めている気がするが、領主館の料理人と、コンビニの商品生産部にだけ、迷宮産の塩を渡している。


 そして砂糖。元々砂糖は非常に稀少なアイテムだった。南の諸国から運ばれてきたモノを買い付けると言っていたから、無い訳では無いが、超高価な調味料の一つだった。

 では。この国の料理人は甘みをどうだしていたのか? 主に蜂蜜である。虫の蜂に加えて、一部の蜂形の魔物から取れる蜂蜜は高価ではあるものの、それなりに流通していた様だ。


 と、まあ、そんな状況の料理人たちに、無制限で白糖を渡すとどうなるか。一時期、何にでも砂糖が入ってて、ちょっとたしなめたくらいだ。さすがに全部それは辛い、と。甘過ぎだし……糖分過多でやばいよね。






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