0268:精神攻撃
グァン
波が。もう一段階濃くなる。密度が濃く、身体全体をすり抜けていく。ああ。確かに気持ちが悪い。精神が苛立つのが判る。
発注先のミスで注文が少なかった。当然、俺の部下の新人くんは言われた通りの数を発注する。当然足りない。言った、言わないの押し問答。最終的に俺が謝りに行くことになった。こちらがミスとして処理した方が、会社として上手く行くと判断されたからだ。
「申し訳ありませんでした」
「いやいや、杜谷さんが悪かったわけではありませんから」
「それでも申し訳ありませんでした」
「新人さん、上手いこと教育していただければ」
「はい、肝に銘じます」
「ああ、あの新人さんの事は本社の阿部さんにも報告させていただきましたんで~」
なんだと? そんなことしたら、新人は確実に部署異動の上で難癖つけられて退社に追い込まれるコースじゃないか。うちの会社のブラックっぷりは、そういう無駄な見切りの早さにも反映されているのに。何の為に俺が謝りに来たと……くそっ。元々はどう考えてもお前がミスったんだろうが……。
「すいません、主任……」
「こっちこそ、力になれずスマン……親御さん、大丈夫なのか?」
「なんとかします。ハハハ」
新人くんはとにかく正社員になって親御さんを安心させたがっていた。噂では親御さん、特に父親が癌で余命幾ばくも無いと言われていたらしい。今回の件で遠回しに向いてないから辞職した方が良い攻撃をされたらしい。しかも複数から。で、心折れ、辞めることにしたそうだ。くそっ。たった一度のミスだぞ? しかも本当はミスじゃ無い。真相も知らないようなヤツが適当に厳しいことを言う。それがブラックたる所以。これは……親御さんに言えないだろうな……うん。
ぐすん。……って何? 今の記憶。過去の……自分の行動か。
え? ええ? そういう精神的な攻撃? え? ああ、まあ、俺自身には肉親の死に関係するようなトラウマ的な思い出はあまり無い気がするけど……。だからってもう何年も前に数カ月関わった新人くんの理不尽なリストラ話? で? うん? まあ、結構怒っていたような気がするけど、今更だし、実際はそんなでも無いよ? うん。ごめん。
ってこんな思い出見せやがって。さらに腹立つだけなんだけどな。
「くっだらねぇ精神系の攻撃だな。この野郎。お前のせいで、後世がとんでもなく面倒くさいことになってるのに、自分は意識失って、さらにイイ感じで魔物に進化しやがって。賢いんだったら、賢いなりに、きちんとその辺まで考えて行動しろよ。理性失ってんじゃねぇよ。選ばれた種族で、長命で……それだけで生き物としての責任があるんだからな」
グギァアアア!
白い靄が幾つも浮かぶ。薄い白い中にまだらに靄が浮かび上がっている感じだ。無数に浮かぶそれが、幾つも俺に向かってくる。スピードはそれほどではないが……量が多いのでうざったい。
それらが全て、俺の目の前……というか、俺が生み出している結界によって撥ね除けられている。というか、よく見ると、溶けるように消えていっているようだ。これもやっぱり、光術の系列の力……なのかなぁ。でも、光術のスキルが無い人も結界は使ってるんだよな……。それにしても。
「情けないなぁ。自分の生み出した術に飲み込まれて……何の因果もないけどさぁ……俺はお前みたいなのが一番嫌いだ」
グブァ!
さらに、その靄が鮮明に……何か形取るようになってきた。幾つもの白い死霊? 生首みたいなのが大口を開けて、歯を剥き出しにして襲い掛かってくる。
おうおう。まあ、怖いっちゃぁ怖い……のか? これ。
ああ、そういえばこんな感じのヤツの黒バージョンに、モミアはやられたんだな。……彼女……辛かったろうなぁ。余裕が無くて完全な治療はまだできてないけど。欠損回復って出来るのかな……俺に。どうなんだろう。出来るといいんだけど。
出来なかったら彼女あのままか……。そりゃね。命が助かったんだから良しなんですよ。まずは。でもね。それまで当たり前の様にあったモノが無いっていうのはよっぽどですよ。よっぽど。それこそ、障がいを持って生まれてね。生まれた時から片腕が無い。そういう人は、何年も何十年もかけて、その腕と向き合って、闘って、慰められて、なんとか安定を手に入れる訳ですよ。
でも、途中からっていうのは、実に中途半端でそこから抜け出せない。無くなったところから先へ進めなくなる。しょうがないんだけどさ。
くそう。ますます腹立ってきた。
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