0226:禅譲
「え?」
「ああ?」
「傷が?」
「はいはーい。では。王よ。これから貴方たちを斬り刻みまーす。で。癒しの術で治しまーす。これは魔道誓約書でーす。王位を譲ると書いてありまーす。さらに、それに伴い、今回の企みに荷担した貴族の取り潰しに関しても書いてあります~。ありますよね? これに王がサインするまで繰り返しまーす。ではどうぞー」
王が何を言われたのか? という顔をしている。
「はい、さん、に、いち、どん」
今度は着色していない「風裂」を数発。王に擦らせた。あ。腕落ちちゃった。
「げはっ!」
血塗れで倒れる王。
「あ。ちょっとズレちゃった。ごめんねー。今治す治す」
「あががはががががが」
「ぐああああ」
声にならない声と、血が弾ける音、溢れ出す音が響く。当然だが、その辺の貴族もガンガン被害を受けている。
で。俺は。ジリジリと、ゆっくり、癒しの術を掛ける。斬り落とされた腕もそのままくっついた様だ。うん。なかなかイイ感じだ。
「オラ。立て。お前がオベニスのために見殺しにした兵は何人死んだ? そして、国民は何人死んだ?」
強引に立ち上がらせる。えっと、床から生やした土の棒を背中に入れた。立った。
まあ、この斬り刻み&回復拷問、これ、自分でも一度やってみたのだが、精神的に凄まじくツライ。血もある程度再生出来ているので肉体的にはちゃんと治っているのだが……こうしていろいろなモノを無視して、拷問として使われると……強制癒しが特に厳しい。
「王女。よく見ておけよ? 道を違えた為政者の末路はこうなると、魂に刻み込め。民の血税を己が力と勘違いしたあげくがこの体たらくだ。簡単には殺してやらねぇよ? 俺の大事な仲間も殺されてるんだ。もしも貴様が勘違いをしたなら。託した者として必ずケジメを付けに来る」
コクコクと人形の様に頷く王女。
「やめ、やめてく」
「サインは終了しましたか? 王よ。んー名前を書いて血判、血で拇印を押すだけじゃないですか~。ほら、ここにペンもありますし。インクも」
「あ、ああああ」
「ふざけるなよ?」
ザクザクと傷跡が顔や手などの目立つ部分に発生する。色を付けずに詠唱もしなければ、魔力を感じることが出来ない者にはいきなり傷が出現したようにも見えるだろう。
「許さねぇと言ったぞ? これくらいで自失するくらいの弱々しい意志しかないのなら、王を名乗るな糞野郎」
ダラダラと流れ出た血液の下、癒しの術で治す。血の跡は残るが、傷は癒えている。
「はあぁ、ああ、あああ!」
「うるせえよ」
とさりげなく、左腕を切断する。既に服は術と血でボロボロだ。ボトンと落ちた腕を拾い、おや、落ちましたよ? とさりげなく拾って、くっつける。
「あ、あああああ! ああ!」
王が、首をブンブン振り始めた。ヨダレとか涙とか鼻水とか汚いよ。
「狂うのもはえぇよ。というか、弱いな、王。よくそんなんで国を背負う覚悟が出来たな?」
ガス!
「風圧」とでも言おうか。雑誌くらいの大きさの壁を空気で作って、それでひっぱたくイメージだ。
「がは、げは……」
「まだまだ、永遠にサインしなくてもいいんですけどね。こちらは。その分、痛めつけられますし」
と言いつつも、傷は増え、それが癒されていく。継続的に繰り返される痛みは永遠に続くかのように感じられるハズだ。
淡々と……なじりながら。嫌味を言いながら。何度も何度も繰り返していく。既に悲鳴に関しては全く何も感じなくなってしまった。うんうん、鳴いてるねって感じ。
「……婿殿……は。怒っていた」
「そのようですね」
「結構普通に過ごしていたのだがな……怒っていたのだな」
「怒ると怖いことが判明した」
「ああ」
いつの間にかイリス様とファランさんも謁見の間に姿を現した。完全に……片付いたということだろう。
「ああ、そういえば、言っていなかったですね。私、オベニス領領主、イリス・アーウィック・オベニス伯爵の夫でもあります。女王陛下、以後よろしくお願い致します」
陛下に振り返って、そう告げる。彼女がまた、ビクッとした。
「あがががが」
既に人語を発していないし、目は血走ってるし、鼻や口からいろいろ漏れ出てるし、漏らしてるしで臭いし、王としての威厳どころか、人間としての尊厳を失っている物体に目を向けると。
やっとサインが終了したようだ。魔道誓約書がボウッと光る。魔力が与えられ、発動した。ちなみにさりげなく、誓約が守られなかった場合、その血族郎党全員が呪われるとなっている。
現王を頂点としたその後の一族だ。優しいと思うんだけどな。それくらいで許してるんだから。まあ、とはいえ、これくらいはしないと誓約を破る者もいるらしいので仕方ない。
ちなみに、女王陛下は特別に許しておいた。さすがに施政する前から縛られているのは可哀想だし、やる気が無くなるもんな。
この魔道誓約書は迷宮産のレアアイテムで、古の帝国の技術で造られている呪いと言って良いような効果を発揮するという。
サインはしたし、血判を押させたが、アワアワと口から何かを漏らしながら、正気を失った王を運ばせた。謁見の間にいた他の貴族……まあ、多分今回のオベニス襲撃を多少でも知っていた、判っていた者が残っていたのだが……王と王子の反抗というか、攻撃でほとんど死んでしまった。というか、王子はさりげなく、俺がさっくり首を飛ばしておいた。生きてると面倒だろうしね。
「女王陛下。この後、どうまとめるかは貴方の手腕次第です。この後内乱には……まあ、ならないと思いますが~そうならないようにお願いしますね」
「は、はい」
王を殺さなかったのは、この世界の王には、何かと魔導具的な鍵が結びつけられている可能性があるからだ。というか、ここまできたら、どこかに幽閉されて、毒を召されるパターンになるだろうと言う事なので、それをするのは新しい為政者の覚悟を見せてもらうってことで、任せたのだ。
可哀想ね、王女。
「さて。宝物庫、宝物殿か。どこ?」
「お館様、こちらです」
当然ながら。さっきの魔道誓約書にこっそり潜ませてある。オベニスへの慰謝料は、現在の王家代々の宝物殿からこちらの望むモノ、一切ということになっている。土地から何から全部、いや、命を含めて全部持って行かれるよりは、非常に優しい判断だと思うのだがどうか?
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