0110:鑑定
「ファランさん、鑑定していいでしょうか?」
「ああ、当然だ」
心の中で鑑定……と呟く。ああ、やはり、口に出さなくても大丈夫だ。椅子に座って……じっとしている。というか、この時移動されたら……どうなるんだろうか。後で検証しないと。
やはり、二十分いや、三十分以上かかってるな……これ。他人を鑑定した時の方が長い……のか。身内にしか使えないやん……。敵対した相手を即時鑑定……なんて難しくね?
名前:ファラン・ネス
種族:ヒーム 性別: 女
腕力:87(64) 躯体:123(41) 器用:187(21)
敏捷:154(36) 知恵:274(55) 精神:254(79)
スキル:
魔力制御5(69)
火5(42)
風4(20)
雷5(21)
闇3(45)
召3(74)
騎乗理解3(78)
麻痺の呪い、戒めの呪い
ん? どういうことか。なぜ、ファランさんの知恵や精神が俺の半分ちょいなのか。どういうことだ? むむむむ……解せぬ。どういうことなんだろう? 普通に考えて知恵のパラメータが魔術の効果なんかに影響を与えると思うんだけど。
魔導士とかマジックユーザー=知恵のパラが高くて、その高さは攻撃魔法の攻撃力に直結しているのが普通じゃ無いんだっけ?
とはいえ、ファランさんは、もう、これ以上は無いってくらい、魔術特化だ。まあ……俺の能力値と比べれば、どれだけ差があることか。
ちゅーか、それにしても、俺の知恵と精神の数値……無駄に高いな。なんでだろう? もの凄い賢い訳では無いと思うんだけどな。勉強だってそこそこだったし。
さらに判らないのが精神……こっちも高い。精神力の数値が高いことで、何か恩恵がある……んだろうな。きっと。
「騎乗理解」は単純に馬(の様な生き物)に乗れるかどうかっていうスキルか。イリス様と二人で冒険者として旅をしてたって言ってたからな……。そりゃ馬にも乗れるか。カッコいいな。馬以外にも、騎乗できる動物や魔物には有利に働きそうだ。
「これが……私の能力……か。数値やスキルで表示されると、ハッキリと差が判るモノだな……まあ、判るだけ……か」
「そうですね、現状は判るだけです……ね」
自分の力を客観的に見れるっていうのは、イロイロと役に立つと思うんだけどな。まあでも、現状は判ったからといって何も起こらないか。
多分、ファランさんは、鑑定の真の凄さに気付いていない。うん、ゲームとかで馴染んで無ければ……そんなものか。ちなみに、うちの領主様もピンと来ていない様で、別にどうでもいいって感じだった。興味のあることと、無い事の差が激しすぎだよ……。
そして……あぁ……もう鑑定は使えない! 使おうと思ってみたら、ダメって言われた。ちゅーか二回か~。ヘタレというか、魔力総量が……少ないんだなぁ。
ってでも、よく考えなくても魔力が無い異世界から来たんだからな。ゼロスタートなのは当然なのか。仕方ない。
ファランさんに魔力を増やすための指輪はもらったし、魔力を減らし、限りなく少なくして寝て回復を繰り返すと、次第に多くなるらしいからな。もう、ゲロ吐かなくていいんだ。というか、あのツライのを味わわなくていいんだ。良かった。もう魔力の少ない日本人はいないんだね。うん。
と、思っていた自分を褒めて……いや、叱ってやりたい。
「モリヤが転移でこの地に戻れるというのは大きな利点だ。さらに言えば、鑑定、収納も回数が使えた方がとんでもない効果を及ぼすのは明らかだ。ということで、お前の魔力総量は多ければ多いほど、我々に理がある。幸い、行政に関してはパティがいることでなんとか回るようになってきている。安心して訓練を行おう。幸い……界渡りの能力なのか分からないが、お前の魔力総量の伸びは異常だ。通常なら数年かかる量を数日で増加させている。毎日やれば数十日でどうにかなるのではないか?」
まあ、はい、そうですね。そうです……そうですよねー。ということで、ゲロ吐きながら倒れる(意識を失うのはギリギリ回避できるようになってきた)訓練の再開となりました。
起床→食事少量→仕事小一時間→鑑定と収納を使う→魔術かけられる→苦しむ→横になる→五時間くらい経過、起こされる→鑑定と収納を使う→魔術かけられる→苦しむ→横になる→五時間経過→食事→睡眠……という日々が既にさらに十日くらい続いている。
ちなみに、精神系の術をかけられて、それに耐える時間……は、最近では一時間程度まで伸びている。これも魔力総量アップの大きなポイントだそうだ。
俺の魔力総量がとんでもない勢いで上がっているのは、普通なら一瞬で終了する試練の様なこの訓練を、異常に耐えているのが原因らしい。
ファランさん的に言うと「さすが界渡り」で済まされてしまうのがなんか、腹が立つ。
いやだって、本当にね、ツライ……つらいス……つらいっスって繰り返しちゃうくらいツライ。せめて鑑定でなー魔力総量が数値化されてくれれば……その経験値とか判れば。成果が実感出来てもうちょっと、やる気ゲージも上がったのに。
「……そもそもモリヤがどれくらい魔力総量が少ないのか? も判っていなかったな」
ね。ファランさんも今頃になってそんなことを言い出すもんだから。本当にヒドイ。魔術に関しては、根本的な門外漢ってことで、素直に従ってきたのに。
ちなみに。最初に詰め込んだときにはバックパック程度の容量だった収納のサイズ。現在ではリアカー一台くらいの大きさになっていると思う。全身鎧装備を3セット入れてもまだ余裕があったから。ってくらいになって来たのに、未だ、転移は出来るという判断にならない=転移するには魔力が足りない。トホホ。
「魔力制御を既に所持しているのだから、あとは適性か。火、風、水、土。自分で一番しっくりくるのはどれだ?」
「んーわからないですねぇ……何も感じません……敢えて言うなら全部不得意? な感じが」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます