二丁目スナックさいかわ チーママ沙樹編

水無月賞

　えらい雨やなぁ。お兄さん、まぁ座りぃ。タオルあるからこれで拭きや。ほれ。遠慮せんと。

　あたしとは初めましてやんなぁ？　沙樹です。さん付けでもちゃん付けでも呼び捨てでもええよ。

　もしかして、さいかわさん目当てやった？　すんませんなぁ、今日はあたしだけやねん。まあ、こういう日は好きにやらせてもろとうよ。

　えーと、どないする？　オススメ？　これなんかどうやろ。「だいやめ」いう名前やねんけど、芋焼酎やねん。でもな……ほら。ライムの香りせぇへん？　不思議やろ？　ソーダで割るんがあたしのお気に入り。騙されたと思っていっぺん飲んでみぃ。

　ほんで……お兄さんアレやろ。水無月賞のアレで来たんやろ。そんくらいわかるて。まぁまぁ、だいやめチビチビいきながら話そか。あっ、タバコは吸わせてもらうわな。

　ふぃー。

　そうそう。賞の名前決めてもええよって言われたから「惣山性癖賞」にしたわけやねんけど、元々の「性癖」の指す意味合いがとっくに離れてることはまぁ置いといて……つまりはあたしの「好き」で今回選ばせてもらお、というわけで決めたんよ。

　せっかくやったら、さいかわさんとは違う基準で選んでみよかなぁと思ってなぁ。アレやで。卯月賞の時は、さいかわさんが最終選考にどれ残すか知らんとやっとってん。今回もそう。ほんまに独断やねん。この店好きに回させてもろとんと同じ。

　今回は「雨」をテーマにした旨いお酒飲ませてもらいましょか、というわけで色んなん飲ませてもろたわ。その中でも一番旨いな！　って思ったんを選ぶ、いう形にさせてもらいました。

　あたしが好きなお酒なぁ……幅は広いで。ビールもウイスキーも洒落たカクテルも。飲み方も色々。ほんまに色んなん飲ませてもろたよ。

　ただ、「沙樹ちゃんこれは飲まないで」ってさいかわさんに言われて、口つけてへんやつもなんぼかあってん。レギュレーションの厳守。これだけは頼むで。これは他の自主企画に参加する時も絶対やで。

　さてさて。今回のレギュレーションな。文字数、三千字から六千字。いやぁ、絶妙やなぁ。小さくまとめすぎても広げすぎてもあかん。おのずと登場人物の人数も限られてくるわな。

　おそらくは「二人の関係性」を描く作品が多いんとちゃうかな？　って思ってたんやけど、予想は合ってたなぁ。

　あたしなぁ、やっぱり「人間」っちゅーもんが好きやねん。限られた文字数の中でその人間の生き様がどう描かれているか。人物たちの関係性はどのようなものか。それを中心に読ませてもろたなぁ。

　お兄さんはどんなん書いたん？　んっ？　見せてぇな。恥ずかしがらんと。そのためにここに来たんやろ？

　……ふんふんふんふん。ええやん。うん。ええと思うよ。けど内臓えぐってくるまではいかへんかな。あっ、落ち込まんといてぇな。言うたやろ。あたしの「好き」で選ばせてもらうて。

　テーマ、ぶっちゃけ難しかったやろ。挑戦してもろただけでもめっちゃ嬉しいんよ。そんでな、どうしても選者の「好み」っちゅーもんはあるんよ。こっちも「人間」やからなぁ。

　アレやね。カクヨムではこういうタイプの自主企画が行われるようになって、だいぶ経つみたいやね。今回の水無月賞で選ばれんくても、作品や作者さん自体を否定してることやないってことは強く言っておきたいかなぁ。

　お兄さん、もう一杯飲むかぁ？　まだまだ雨もやみそうにないしなぁ。今晩はゆっくりしぃ。次はそうやなぁ、何にしよか……。