ep.22 忘れもしませぬ、あれは拙僧がまだ××だった頃…('ω')
『不吉な知らせですが、スフィンクスの忘れた知恵も、猫たちは覚えている。
死しても尚忘れず、狂気と化した今も手を伸ばす、「アナタ」の
恐怖と驚愕は別物であり、恐怖にも鮮度や
「伝承」や「噂話」も確実な証拠が出てしまったら、ただの事実だからね。
何事も後から尾ひれはひれ、そこを探り出すと悪魔の証明になり兼ねない。
「………」
だから結局ここでも、信じるか信じないかは、あなた次第!!
……という話に落ち着いてしまうのかな?
「………」
びっくりマークの標識は幽霊注意。
『カリギュラ効果』に犯された天邪鬼に、本当は開けたくないけれど、開けるなと言われると開けたくなるパンドラ。『シミュラクル現象』に改竄されている人類の認識。
無論、世の全てが100%の嘘とは限らないけれど。
……そんな脳のバグとか勘違いとか、思い込みである可能性を、今の私は縋っている。
『ごめんくださぁい』
と告げれば「 い ら っ し ゃ い 」と返ってくる。
本来ならば、当たり前であるソレを、今は怖くてしょうがない。
『フ、ふぇええええん~~~>< お邪魔しましましたぁ!!』
『?』
耳元で「おねえちゃん、あーそーぼー」と誘われるたび、グッと喉を膨らあがらせて、血が滲みそうになるほど強く、オフィーリアは唇を噛み締めた。
———どうか今いる地点が自分の知る、知っているような『
頭上から袋ごと逆さにし、食塩をぶっかける。
神酒とまで行かずとも、せめて日本酒あたりを所望したいところだが……。
(塩があるだけマシ、そんな贅沢言ってられない)
まさか何時もの常備調味料が、こんなところで役に立つとは。
この身に巣食いし迷子病に、今回ばかりは救われたのだと、二重違法滞在ネキは思うことにした。
人身御供の物語、村のしきたり、つい先刻までの自分をたこ殴りにしたくなるほどマジモンの村八分。
———その地の安寧と神の恩恵を受けるため!
と聞こえはいいが、醜悪の実態を闇に葬りながら、生きた人間を捧げる———"人柱"事情。
(結局、ニンゲンが考えることは同じと言うことか……)
その手の"儀式"はいつの時代、どんな国であろうと、大なり小なりどこにでもあるし。「私」という存在がここに居る時点でそれこそ今更、驚く
(それでも、見て気分の良いものではない)
然し、そうともくれば……ここは。
「柱は柱でも、オラそんな柱嫌だ~オラそんな柱嫌だ~家に帰りたいだ~~~最悪だよ……」
本当に怖いのはおばけではなく人間。で、人間の敵もやはり人間。
どんな次元であろうと閉鎖的なコミュニティー、村社会ってやべぇんだな。と再認識せざるおえない。
頭に浮かんでは、沈みゆく気持ち。
『 ……が し しょう … た ……』
に対し、ひっきりなし。
声なのか音なのかすら判断の付かない『ナニカ』が、さっきの今も、耳の中にこびりついている様だった。
なので、柱は柱でも、オタクの一柱であるオフィーリアは、思う。
(なぜ浪漫、冒険、ドスケベ溢れるファンタジックな世界にいるというのに、嗜む分には良いが我が身ともなれば話は別)
そんな社会の闇を垣間見させられただけでなく、恐怖が一周カラ回って
『 餓死 ガ…鬼…ヒヒ…… ヒ…… ヒッ!
……バキ ヒ…… ヒヒ……ヒヒッ! 』
辛くとも、ニューゲーム!!
(できれば、いいのにな……)
余りにも惨たらしい現実に打ちのめされる。
(一応灯篭の裏とか、調べてみたが)現実世界にセーブボタンなぞある筈もないので、彼もこれも全部こいつ等(?)と、理不尽な処分をしてきた
(と思うことでしか、自分を慰めれない……)
いくらファンタジーな世界であろうと、幼い頃から人生楽しい時、こうして忘れた頃に「現実」というものを前ぶりなく突き付けられる。
先ほどまであれだけウハウハだったのに、これでは±0の寧ろマイナス寄り。どれだけ親ガチャでコロンビアをキメようと、その幸運分の苦労を追々と払わされている気分だった。
どれ程ロマンス溢れる世界観だとしても、この世のどこにも桃源郷・アヴァロン・ユートピアなんてなかったんや、という事実を、実に改めて
「ほんと最悪だよ……」
ド畜生。
何時もなら旦那のドスケベを思うことで、多少浮上する気分も、今回ばかりは冴えない、萎れたままだ。
わたしぃ、公女だのにぃ。思わずそう悪態を付いて仕舞うほど、オフィーリアはゲンナリとした顔をした。
そして続けざま、前髪を乱雑に掻き上げ。
「クソゲーどころの騒ぎじゃねぇ」
聞く人が聞けば、マジでお里が知れちまう。
小さく毒を吐いて、違法滞在ネキは顔に飛んで来る蛾(?)を手で払い退けながら、民家の庭先にある茂みの中に身を潜め、しゃがみ込んでいた。
可能な限り気配を消し、とうとう我慢できずに、行儀悪く親指の爪を噛んでは、思考を巡らせる。
『もういーかい』
『まーだだよ』
『あのこのみぎめがほしいな』
『じゃあ、ぼくはひだりめ~』
……塩をばら撒きながら、一度逃げおうせたのは良いものの、完全にロックオンされた様子。
確実にご団体様である向こうに対し、何故私は
(いやでも劇場版はともかく、日本のホラゲってこういうモンだしな……)
結局その辺りに考察が行きついて仕舞う、違法滞在ネキ。
(と言うか)
悪い意味で心臓に宜しくない『ナニカ』と共に、さっきからやたら虫さんが寄ってくるのが、本当に鬱陶しくて、仕方がない。
意図せず感情が大きくブレたり、強めの魔法を使うと、どんな原理なのかは知らぬが、恐らくファンタジーでよくある魔力的なアレ。
「あも、邪魔!」
それに伴い眼の色が変化し、光を帯びて仕舞う。自分の体質をこれ程恨んだことはない。
こうして隠れていながら、今回は前者に違いないが。それだけ突如の和テイストにビビり散かしてる、オフィーリアの眼がキラキラ点滅しているものだから。
ただでさえ光のない廃村、茂みに隠れただけに、その僅かな光に反応して虫が寄ってきているのだろう……。
周囲が暗ければ暗いほど目立ち、何時もの事と言えば何時もの事ではあるが、ピカピカピカピカ光ってどうしようもない。
傍から見れば完全に、一人両目に過剰ハイライト状態である。
「某ランドでもないのにな、ドちくせう……」
なので。それには、流石の違法滞在ネキ、地元の姫も兼任してる奴からすると、汚い言葉の一つや二つくらい吐きたくもなる。
何より、
(……どうしたモノか……)
正直ご所望の目だけでなく、この手の奴らには髪一本、爪の一枚すら与えたくないのだが。
ここまで再現度の高い、いわば"あの頃の古き良き日本の風景"に身を置いて仕舞うと、もはやここがダンジョンの中なのか、それとも異国の【禁足地】に迷い込んだのか。
(はたまた"そういった【異界】"に飛ばされたのか……)
まるで分らなくなったのもあって……その思い、疲労感もひとしおだ。
言わば某有名な都伝駅みたいなとこ。
初見殺し+未だマップなし+見るから(多分見つかれば終わり的な)即死系逃げゲー+ルート不明状態で探索のしようがない!!
(あと、スマホ自体ない時代からの迷子? だから2chだけに繋がる~、以前の問題過ぎる……)
ので。
「これが何時もの迷子、ダンジョンの中なら、リアルさにこだわり過ぎて完全に運ゲーになってやがる……」
そは如何に。
もし私が元日産じゃなければ
だとするとやはりここは、東の方の廃村か禁足地に飛ばされた?
「嘘でしょ?」
ただ、そうでないと辻褄が合わないし、様式も合わないだろ絶対。
これさぁ……。
「……村は村でもビレッジの方ではなく、完全に『The・村』。靴を脱ぐ文化のない相手に根本からして可笑しくない? 西洋人向けダンジョンとして成立してなくない??」
後は、塩の扱い方についてのアレコレ。
塩分として取ることはできても、アイツらに『盛り塩』とか、雅な発想を思いつくとか、到底思えないんですけど。
(……はともかく、今は別のことを考えよう)
誰も見ていないのを良いことに、公女の体を解き。オフィーリアは体育座のまま、ゲンドウポーズをキメた。
もし椅子でもあったら、考える人ポーズ。又は燃え尽きた人ポーズなるものもできたが、ないものは強請ってもしょうがないので……。
『ヒ…… ヒヒ…… ギ……』
「ヌカコポォ」
『……? グググッ……!!』
(今生単体での)歳の割に、容姿こそ美女枠だが、心に幼女さえあれば、もしや……(੭ ᐕ))??
と思ったのに、どうやら逆効果だったらしい。
後、とりま山に居たらもっと恐ろしい目に遭いそう。だから、村の中に入ればある程度の攻略法が見えてくると思っていたのに。
(もはや何時もみたく『マップ』探索してる場合じゃない、ここは。地場のせいなのか、それとも「この仕様」のせいなのか)
こうして自分の気配をコントロールするので精一杯。
昔画面越しでやってたものの、正しく私、こんなの初めて状態である。
これでもわしゃあの【索敵スキル】はそこまで低くない。
(はず)
なのに、相手の気配が全く手操れないとも来れば……。
(団体様の中に"マジモン"が混じっているか、"
先ほどから強烈な"嫌ァな予感"はする癖に、
西洋の、今まで攻略してきたダンジョンというのは基本部屋分けや、階層分けがハッキリしていたものだから尚更。
(この「なんかいるはずなのに、もしかしたら気のせい?」「いないかもしれない」「いや、でも……」感が、むっちゃ怖い……!!)
然しその一方、この一切の安堵を与えない恐怖に地元を感じる、自分もいる。
(……だからあれほど決死の思いで><の顔までして、まず『マップ』をば、と思っていたのにな……)
ホントどうしよう、とオフィーリアは虚空を見つめた。
……
(何時も迷子になって仕舞うので、そして何時でも無人島に迷い込めるように)その手の調理グッズやキャンプグッズは『空間魔法』を習得するや否や、常日頃からある程度常備しているものの……。
(流石にここまで気が回らなかった今回ばかり……西洋に馴染み過ぎた我が身が悔やまれる……)
基本生前と同じく、死後すら主張の激しい西洋ゴーストに比べ、亜細亜のおばけは皆シャイだから……。
故に、下手に動くと何時どこでイベントが発生するか分からない。
この緊張感よ……。
「…クソ、だいたいさっきから攻め方が
そしたらこちらも、全力でアメリカ人みたいなリアクションしてあげるからさぁ…。
この諸刃の剣でしかない思考ある限り、自ずと親近感沸く。二重の意味で15の心臓に
「…………」
こうして一しきり、独りで盛り上がった途端、賢者になるのもオタク柱としての務めである。
もうやだ、と。少し泣きそうになりながら、ひょっこり草から顔半分を出し、オフィーリアは虚ろの目で改めて周囲を見渡した。
そこから思い浮かぶは、嘗ての思い出。
夜になると一等深くなる、日本家屋の家鳴りを始め。
鶯張りの板が軋む音。
所々破れた障子に、今や懐かしい掛け軸。
墨で描かれた花鳥風月。
……白檀の香り、畳の匂い。
ハッキリとした春夏秋冬。
そして———『家族』の面影。
「サイアク」
ただの走馬灯でしかない思考回路だった。
こんなところで嘗ての故郷を感じたくなかった。
一昔のトーキー、モロクロ映画というか、遺影染みたその一連の流れが、今の自分にとって最もキツイ。オフィーリアは軽く目を擦る。
憑依や転生系の小説はよく読んでいたが、あれらはやはり『作品』だからこそ楽しめる。言わば、他人事だ。
だから、それが我が身の現実として降りかかるならば、怖いという情念が確かなものであっても、それ以上に。
(今の
ありきたりな恐怖より、これはきっと望郷の念で……×××。
前世の某遣唐使もこんな気持ちだったのかしらと思いながら、風鈴の音が風に乗って耳に届くたび、堪えても、堪えた所で、また鼻をすんと啜ることとなった。
「『おかあさん』……」
これでもF系世界観は伊達じゃないので、様々な状態異常に対する
が、その手の異世界アイテムも結局気休め程度にしかならず、
———ならば、今。
(思わずこの口から出た情けない声は、果たして「何時の自分」が「どちらの母」を呼んだものなのか)
賢者と言うか、哲学者になりつつある違法滞在ネキ。
そして、
「おうちかえりたい……」
と続けるこの口も。
「おうち」
おうち?
一体、どっちの家に?
私は…。
「………」
先ほどまでの声に変わり、耳元で響く自問自答に聞こえないフリをして、その場でダンゴムシみたいに丸くなる。
自分の口から出た言葉であるはずなのに、『オフィーリア』はこの歳になっても、その答えは
……そんな想いを誤魔化すように、「もう塩は残ってないのに」と呟く。ネキにしては実にか細い、頼りのない声である。
「ハンドガンもないのに」
セーブもしてないのに。
残機も射影機もないのに。
保健も入ってないのに。
———そして何より、まだ童貞なのに…。
「ドドドドドドドドドドド童貞ちゃうわ……いや、童貞だけれども」
とりあえずここに長居しては心理的にも身体的にも、お宜しくない。と、理解したオフィーリア姫。
この手の相手は一箇所に居続けると居場所がバレやすくなるパターンが多いし、何もしないといよいよ本格的に泣きそうだし……体より先に心が参って仕舞いそう……。
(後は、湿度)
さっきからこのジメジメした暑さは酷いものだ。
霧が振っているみたいに湿っぽい空気が身体中に纏わり付き、食塩効果も相まって、ナメクジでなくとも前代未聞の発汗量。
「うえ、笑えるほど体がべたべたする……」
色んな意味で、汗が止まらないのである。
「これでも私、美少女だのに……」
だ。
……よもや、海に落ちたかの様なずぶ濡れ具合である。
だから「もしこの場所が誰かの意思によって
同じフラグポジであろうと今生の私は魔女ではなく公女ではあるが、今日も今日とてメメントモリを胸に、万が一のため『使い』を出したまでは良いものの……オフィーリアはようやく、ここに留まって結構時間が経っていると気が付く。
なので、警察に駆けこまれる。
(と言うか、ここの場合。首都部の騎士団
———
「じゃないと助かった所で、
そして私は一生窓のない、日の当たらない部屋で、可愛いレオきゅんの可愛くないぱおんにピーされるんだ。
……そこまで考えて、イライラがドスケベに変化され、悲しみも恐怖も怒りに変わっていくタチである公女ネキ。
そろそろ女の子の日なのもあって、オフィーリアはイライラしながらラマーズ法、何度か深呼吸を済ませ。
そろそろ逝くか。と立ち上がった。
(———
途端、ふと直感がそう告げる。
この手の村話は「贄にされた女の恨みが~」なのが一貫して多いものの、今同じ空間にいる"ガチ"は、男の性なのだと。
……何故そう感じたかは分からないが、女の第六感と言うヤツなのだろう。
そんな不思議な確信が生まれ、オフィーリアは先ほど以上に強く唇を噛む。
旦那の浮気ジャッジも無論そうだが……。
(そうなった場合、良かれと思って『お使い』に放った
不安だ。
……もしここが普通のダンジョンではなく、本当に絶対入るな!! の代名詞【禁足地】———その土地の歴史や宗教的な理由から、魔境以上に足を踏みいれることを禁じられた場所ならば。外からの救援どころか、ここからの
前世含め、こんなに善良な市民相手に。
「……神様の野郎、私に不俱戴天の仇か恨みでもあんのかな」
ここまでくると、もう私のこと嫌いとしか思えないんだけど。
神様の悪口をケッとぶちまけながら、どうかどうか思い過ごしでありますようにと神頼みする。
慎重、回避、遊走。
安全を考慮して、前後をよく見回し、ジワジワマップを
それが今までのヤリ方で……そこに『傾向と対策』、弛まない下準備があってこそ。
(———然し)
それでも万事休すとなれば
「行方不明……」
先ほどの魔石漁りの際耳にした、マブの台詞が脳裏を掠める。
周知ルールに加え恐らく
そんな場所に私は…。
相棒だけでなく。
(今も見ず知らずの
オフィーリアは、ハッと飛び上がった。
「……あぁああああああああ、いけません! 国や法が許しても、見る分には可、でも我が身ともなれば私が許せない。Domであろうと重婚、だめ、絶対!!」
一瞬「神様のお嫁さん」ワードにあら懐かしやの響き、ドキッとするも、その辺りの良識は弁えている系アストライヤは、こうしちゃいられねぇ、と風になった。
———のだが。
……。
「……?」
その頃の学園では。
今のところ平和、いや訂正しよう。いくら午前中に多少のいざこざあれど、言わば草木も眠る丑三つ時。この時間帯に北部の男子全員と一部令嬢が未だ学校にいる時点で平和じゃない。
が。
そんな所に逆に平和を感じていると、突如ぽんっと現れたニッコニコ笑顔のふわもこ白ボディに、目が一瞬「はへ」となるも。
「あれ?? サモ兄さんじゃん」
その正体にいち早く気づいた男が疲れ果てた声を上げると、談話室中の視線が一瞬にしてサモ兄さんに集中したのは言うまでもないし。
『伝令兵ナウ』の札を首からぶら下げた兄さんも、そんな世界に満更ではなさそうに尻尾を振り、耳をパタパタさせる。
「わふ!」
「サモ兄さん、いい所に……!!」
サモ兄さんである。
決して地獄に舞い降りた天使ではない。
そう、彼こそが我らのネキがお使いに出した、サモ兄さんであるからして…。
「わ。サモ兄さん!!」
「うわあああんん、兄さん……!!」
「貴方サモ兄さんというのね! んで、教えてくれよ兄さんや、俺らのお転婆姫、貴方の御主人は何処かなぁ……??」
「わふ!!」
「なるほど、分からん」
特技は全回復魔法(※然し、効果は個人差あり)。
本来ならば雪山でソリを引いたり、猟をしたり、湯たんぽとして人間を温めたりする、ふわもこ。
そんな北部の固有種であり、見てくればかりは完全にアイツらだが、この世界おける「彼ら」は、愛らしい見た目に反し、その実態は魔物と動物から爆誕する、いわば【半魔獣】。
「どうしてまだ帰って来ない、ずっと探してるのに何故まだ見つからないんだ……置手紙には『門限7時前までには帰る』と……なのに、"交感"にも応じない。どうして、俺が、こうなったら———」
「魔人様! いや副会長、まだ早まってませんよね!? クリシス副会長~ッ!!」
「わふ!!」
決して天使の使いではない。
……だけれども。
魔の道に半身くらいは浸しているであろう人族にすら態度を変えない、そのプロ意識。
どんなイカレたヤツの前でもニッコニコスマイルを保てるサモ兄さんに、世界平和と和睦、ここまで耐えてようやく帰宅の予兆を感じた少年たちの眼に熱い涙が滲む。
『アイツなら例え単騎であろうと、絶対、
気持ちは分からんでもないが、この男はなにゆえこうも心配性なのだ、と何度も疑問を持ち。でも、言いたくとも言えなかった。
その様な酸度強めの唾が降り、場に居合わせた全員が今度奮発して最高級の肉をサモ兄さんに貢ごうと心に決めた瞬間だった。
……それだけ時間が経過するにつれ下がる室温、場は正しく八寒地獄さながらでしたので……。
———だが。
「…? 『追記:門限には間に合いそうにないです。出来る限り早く帰ります。浮気の予定も予約もございません。探さないでね』……」
は……(੭ ᐕ))?? と。
「ぶっ、」
今しがた登場したサモ兄さんの首周りが何故、クリスマスナイトよろしく点滅しているかは、ちょっと目の前がチカチカするかしら?
と思うくらいで、今の少年たちにとって大した問題ではない。
それより、今にも黒煙上げて噴火しそうな目前の活火山の方が、彼らにとって命を脅かす天災に見えた。
……つまり下い話。(恐らく)場の誰よりもデカイマンモスをぶら下げながら、他のゾウさんを死に追いやる領域、高みへレオくんは到達したのである。
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