ep.8 じっくり、ことこと。美味なる湯気の向こう側、


『例えクチ合わずであろうと、何故か好ましく。でも「やはり」と思う、どこか可笑おかしなアメの味。

 ソレの訪れは、全ての「嘗て」を奪い去り、人知れぬ新たな情をみのらせた』


愛する才能、唯一の恋。

浪漫チックな花言葉に「開け実」と書いて、アケビと読み。4月に鮮やかな桃色ピンクの花を咲き誇らせては、9月から旬を鳴らせる。

……そんなさまの、木通アケビの実。



『———ぶむっ♡ ~~~ぷはっ、や……っ』


濡れそぼり、熟れたソレを出来うる限りに買い占めた。

思い赴くまま喉を鳴らし、「今か、未だか」と場所や時すらも問わず、今にも頬張らんとする捕食者の口へと一直線。

そうやって人々の手で、眼で、口ででられてきた果実は、めばむほどみつきに。


『んっ、ふ』


……まるで劇的な薬物さそりざのような、味がする。


『あ。今、わらっ…………!!』

『って、ないよ。ただ君が、俺のコイビト愛らしいイヤラシイなぁ…ってだけ』

『へっ、へん! ん!? んん、はっん…ン、ちゅっ…んぅ♡ んん~~~~~~~ッ♡♡!!!!』


卑猥でありながらも、ここまでれば。

どれほど「意地の悪いイヤラシイ」手の突き方であろうと、コレほどまで堂々とされると、逆に清々しくすら思う。


『ぅんん、ぐぅ、うぅ…♡ だめ、もうらめぇぇっ……♡♡ らめて、もうぐちゅぐちゅやぁ、もうぐちゅぐじゅ、かき混ぜないでぇ……ッ♡! こえが、もうっ♡♡!?』


そんな「今日」と呼ぶ日の、今しがたから及ぶ、この行為。

……で。


『ん、ふふ、いいよ? 甘いかぁいい声、すごい締め付け…ほんと堪らない。ほら上も一緒に、君の好きなトコもっと「よしよし」してあげるから……俺の指「もぐもぐ」して、■って?』


『や! そんなに激し、だし入れ……!!?!』


『うん。うんうん♡ ■■■■じゅぼじゅぼ、女の子■■■■■よしよしの、ぐりぐりって、激しいの……気持ちいね?』


『■った! もう、いいかげん、■った傍からぁ~~~……っ♡!?』


『…すき。嬉しい、好き、キスも、「キスkiss」したい……ッ!』


『んんんっ…♡♡ また、■く、また■ッ……あ""ぁ"ああああ、もう■■ッ……♡! ■ッひゃ、あっ』


『うん♡ んっ、いい子いい子。いい子だから俺の指咥えて、もっと…もっと、■ってよ』


———ほら、■け。

何も分からなくなるくらい、もっと■けってばぁ……。


『んッ、かわいい』


『ああっ、ん…! にぇお、ま……っ、あああああああ♡♡♡♡ やだ。もうやだぁ! やぁ、ヤあああ……ッ♡♡!!』


『……あ""ー…好き。その声、キくなぁ…ほんと好きすぎて……ンっ…だけで、俺も、気持ちくなる。俺の■■■■■…俺のコレが、ね。今にも……』


爆発しそう。


謎のデジャブ感。

腰の裏辺りに何か、途轍もなく硬いナニかが ごりっ♡ と!

押し当てられ、押し付けられた……。


『~~~~~っ、んぁっ♡』

『んぁ、ははっ。かわい』

『はっ、はエ…? は、ぅううう……』

『んンっ……ちゅっ、』


そんな現実に訳が分からなくなっていると。

「ンジュ……ッ♡!」っという感じ……自身の首筋が攻撃を喰らった感覚がした。


(なので、心の傷を含め追々慰謝料を請求しようと思います……)


怒涛過ぎる展開からの現実逃避。

遊び心弾ませ、あの日の童心へと戻り、今の恰好に嵌めて格好よく言えば「†漆黒の堕天使†」ならぬ、銀髪の美男子による堕落の烙印キスマークの嵐。

……言うところ、旦那キセイジジツからの"マーキング"真っ最中である。


ただ、聞えがいくらロマンティックであろうと、現実はそんな甘いものではない。


「………ん"”ん"熱い。シ、痛い…」


寒さには強いが、前世よりのは苦手。

まるで焼き後手ごての様に、押し付けられる度、変な声が出てしまう。

その都度、なんだこれ、なんだこの状況……?


(痛いような、痒いような……それでも)


ブチュッとされた場所が蚊に噛まれたように熱を帯び、しかも風呂場、相手も含め熱くなっているのだけよく分かる。


昨日昨晩に引き続き頭はぼんやりするのに……内心のどこか、これでも未だ一寸ばかし冷めている部分が静かに囁く。


嫌というよりか、何だか変な感じ。

愛の証明にしては軽く、然し恋と表するには、中々に重い歯型マーキングだ。

それも普段、いつもとは逆転した立ち位置に居座る相手からの……。


なので、


「………『お仕置き』する? Subであろうと、こんな好き勝手。Domである君に、こんなことしてる俺に」

「オシオキ…ん、んん、もう…なんで一寸うれしそうなの……」


一度でも冷静になって俯瞰的に見れば、中々に可笑しな話。


(拙者、始まってた……?)


というよりかは。


(いや、寧ろ終わった……??)


オフィーリアは困惑した。

純粋な力以外の立場関係こそこちらが上のはずだのに正直、コイツに勝てる未来が見えない…。

どうしよう……。

未知との遭遇、なのである。


だから、


「男の人にこんな破廉恥なことされて…私モブなのに……もうお嫁にいけない……」


責任取って、と言えば、物凄く喜ばれた。

前世の観点や傍から見ると贅沢な話ではあるが……なぜ私はこんな変態ヤンデレイケメソ野郎に懐かれてしまったのか……。


表では平穏を保つも、オフィーリアは内心、ちょっと泣いた。

自分は確かに面食いなオタクという病を患っているが、やはり可愛い我が身、ここまで望んでいないので。

それも相手が相手だけに、まるでこの歳まで大事にせっせと育てて来た息子に明智られ、長らく愛でていた雌に雄られ、成長を喜ぶ間もなくおいたされる。


この感じ……。


(……美少女こちらが下手にでてりゃあ、調子ビッグウェーブに乗りやがって……)


もう思い出したくもない。

ソレはまるで吉原の言い分、いつの世であろうと、男の天国は女のイキ地獄だった。


(もう、クライマックスでいいよ)


後で花を飛ばしている旦那を背に、思わずそう思ってしまう……。

こんな展開、同人誌で百万回くらい履修した。

だから後ろの奴含め、これまでの経験上"この手の行為"は深く考えるだけ無駄だと、分かってはいるものの。

……でもやはり慣れない部分も多々。


思い出す歳の分だけ、罪悪感やら羞恥やら賢者やらに囚われる、今日この頃。


(……くっ、殺せ!)


とならざる負えない、彼女は未だ自分がモブ枠であることを願っている。

そして、何より。


『あっ…だめっ……!』


そう何度訴えても、聞き入れてもらえなかった怒りが、今となって湧き上がる。

正直襲われてからあまり覚えていない馬車でのヤリ取りから始まり、これだからイケメンは嫌いなんだ……との、八つ当たり。


ただそれでも、


(もしかして、いや、もしかしなくても前世の私は大人気AV女優だった……??)


自ずと未だそんな余裕を保てる、オフィーリアは実にマイペースな性格をしてる大人? 子供? だった、という話だ。

無論、錯覚である。


ただの(錯覚)では…。


あるが……。


あったが。


『あっはは、かあいい。ふわふわ■■■■をイジメられながら、きゅ、って…摘ままれるの気持ちいね? つまんで……それで下の突起もぐちゅぐちゅ、しこしこ、しこしこー…って……されると、堪らないでしょ……??』


気持ちくて脚ぎゅううするの。


『可愛い。口では嫌がっても、気持ちよさそうな声、出ちゃったね……』


———でも、あんまり大きな声出すと「外の人」にも聞かれちゃうかも…?


『……それとも番である俺に妬いてイジメて欲しくて、態と聞かせてるの? でも……ダメだよ、俺以外にそんなかぁいい声、聞かせちゃあ……』


と、男はそういうが。


『だめ!! いやぁっ、で、でもがまん…中といっしょに■■■■までいじにゃれ、いっしょにされると、こっ声がまん……っ、できにゃ、いィ…………ッ♡♡!!?!』


辛うじて残る情事中の記憶を辿り、思い返せば、私何も悪くなくないか……?

寧ろこいつ、このドスケベの権化が全面的に悪いのえっちなのではなかろうか……。


今生の遺伝子に圧倒的感謝、多少鍛えているし……見られて困る体ではないが、恥ずかしいものは恥ずかしい、前世の歳が歳、何より今現在における歳も未だ15、言わば中学3年くらい。

いくら今生の世界観がひと昔の「女は~」世代であろうと、何度も言うが時期尚早、少なくともオフィーリアはそう考えている。


然し……。


「…………ちっ。こんなに濡れて、馴らしてるアイシテルのに、未だ狭いか」


雌が雌なら、もう雌を孕ませることしか考えてない雄に、そんな至極健全な良識は通じない。

時代が時代、そして前世のギネスでも、確かに一桁で妊娠出産した女の子はいるけれど、母子の安全、女方の負担を少しでもおもんばかれば……なのにだ。


……ので(前世、伊達にその類の話を読んでいないため)雄側の主張、気持ちもある程度分かるが、真面目に自重して欲しいと彼女は思う。


———だってそれだけ、それ以前に普通に、どう見ても。


『む。むむむ、む、むり……!』


当時の私。


「無理。何度も言うけどむり、ぜったいムリ、こんなの……無理、絶っ対、入らないから……」

「………………」

「れおくんのが大きのは…まぁ、知ってたけど…………」


そして、これが今のオフィーリア。


彼女は言った。


取りあえずこんなデカくてグロいの、絶対入らない。

物理法則、質量的に。


「絶対、ムリ」


じゃないと、きっと、ここが。

無理やりだなんて、そんなこと……レオくんはしませんよね?


軽く脅しながら。

おふぃーりあのお腹、裂けちゃう……。


本人意図せずも、それはまるで在りし日のエロ漫画の様に訴え初めて。


「……………………………………はぁ」


ようやく、受け入れられた女房側こちらの主張。

これまで読んできた同人誌、男性向けであろうと女性向けであろうと、全年齢……それこそマイナー層向けであろうと、人生何時ナニが起きるか分からない。


過去の糧が今の力となる、やはり私は人気AV女優になれ得る才があるな。危機一発の後、彼女は微笑を浮かべ、口を開いた。


「確かに例えどんな世の中であれど、大は小を兼ねる……と言いますが。でも、だからと言って無い袖を振れないように、入らないモノは入らない、無理なものはムリですよ?」

「…………………」


嘗てないほど素直に、ふふんと得意げに胸を張る。


今の怒り、後はこれ以上ここに居たら絶対ヤバいという危機感も込めて、乙女の地雷はらまわりを物欲しげに撫でるレオの腕をぺしぺし。

……それでも離してくれないので、オフィーリアがナケナシの力加減でカリカリ引っ搔いてみたところ……。


「また、減らず口を……あんなに鳴いても、未だそれだけ余裕あるなら、もう少し遊ぼうか?」


ただの暴漢と化しつつある旦那に、逆ギレされた。

この理不尽にも程がある世界について。


「ん""、え""ぇ!?」


至極当然な理由を並べ、ここまで冷めそうな話をしてるとういうのに。

未だ萎えていない男の怒張を尾骨あたりに擦り付けられながら、又もやアソコに指を入れられ、まるで見せつけるように激しくなる、抽出が再開される。


ぐちゅ、ぐちゅ♡


とした音は、風呂場なのもあって、実に耳にも心臓にも毒だった。


ちゅぱ…、じゅ……っ♡


背後から何度も首や肩を吸われ、よもや、ここまで……何度も思ったよね……。

自分の耳や口を塞ごうにも、オフィーリアは目の前のきんにくに縋るのに一杯いっぱいだった。


「あっ、ア。だめっ…」


そして「コイツ、なんでこんなに上手いの? 変態だから??」とも思う。

……いくらお互い歳若くして新婚夫婦(の様なナニカ)になったとは言え、何もここまで……微塵もの隙が無い裸の付きあい、水入らず。


止めどなく迫りくる快感とイイ声した男のASMRシチュボに、とうとう自分の頭の中で何か、とても大事なナニカが「ボンッ!!」と爆ぜたのを、オフィーリアは感じた。


「あ、ぁああん♡ ゆび、やぁ。きゅうにゆび、ぬいちゃあ……、ンっ」

「…はっ、」


急にぽっかり空いた穴が虚しくて、背筋がぞわり泡立つ。

自分のではない液体が腹部に逆流するのは、決して気持ちの良いモノではない…。

———そんな下腹部の不快感が湧き上がるのと同時に。


「あ、たいむ」


あれだけ好き勝手したくせに。


こうもあっさり離れゆく男の指が何だか恨めしくて、喉が甘えた声を出す。

ナカまでも、まるで「もっと、もっとぉ……♡」と強請るように締まるのを……確かに感じた。


溺れている最中なら例え元凶であろうと、目の前の物に縋ってしまう人の性。

ほぼ無意識ではあれ、オフィーリアは、普段自身の兄と剣を振り回している、旦那の腕にぎゅっと抱き付き、男の浪漫、■■■■を押し付けた。


……大抵の雄はこれで思考停止することを、彼女の深層心理はよく理解していた。

なので案の定、先ほどまであれだけ激情と欲情を燃やしていたのに、息を呑み、ピタリと停止する、そんな相手に。


「腰。こし、が……抜けた………」


告げた。

その途端、背後から声を震わせる振動と共に———プツリ…ナニカが切れる音がした。


「…っ。ふふ、ハハッ、もう、本当に……君は。たかがこの程度の愛撫、たかが・・・こんなんで、こうも一杯いっぱいになっちゃって……」


お嬢サマ以前に、君は支配者、Domなのに。


「俺だから、こんなに無防備な姿見せてくれるの? 可愛い」


もしそうなら、嬉しいなぁ……。

これだから、俺のおふぃーりあは。


「……誰かをこんなにも愛おしく思える日が来るなんて、ホント、可愛い」

「ッ!?」


んだから~。

———ガブッ♡ としちゃう!


「ん"!! ぁあっ♡!?」


ちゅっ、

じゅぅううううーっ♡♡


各々が各々で綺麗な面をしているのに反し、まるで例の"吸うやつ"が喰らい付くようなえげつないリップ音と、女の悲鳴が浴室に木霊す。


「はっ、ン、れ! お~~~~~ッ!!」


古今東西、いつの世も、脱げば獣。

例え普段どんなスパダリであろうと男である限り、肝心なところで男のヒトが女心オトメイトが分からぬ様に、女と言うのも基本おちんちんのアレコレも、男の琴線はよく分からん。といったとこだ。


ので、一しきりされたのち。


「……うん、これで大丈夫。今日一番、綺麗にいた。…これで明日、少しはマシに……」


一体ナニが……??

大丈夫だというの……??


その口で。


「ぅううう……あづいし、ひりひりする…」


嘆くオフィーリアに、レオは嫁に逃げられないようにと、ぎゅっと抱きすくめる。

傍から見れば、完全に熱湯最中の馬鹿ップル。その行為から非常に強いSubの執着心が出ていたし、その強い意思の分、彼が今までしてきた苦労も垣間見できた。


然し、「人」という字がある以上、方や幸せなら、誰かが犠牲になる。ヤられまくった女方はそれどころではない。


……本当にげに表現しがたい心地、甘噛みされ吸われたその場所を起点にと、ぞわり、ゾワゾワした感覚が、全身を貫く。


(これだから上流階級の男は、すぐ帝るから嫌なんだ。この野郎…イケメンだからって何でも許されると思うなよ……!)


乙女の柔肌を何だとお思いで?


「っ、やっ、だから、あなた、犬じゃないんだから、もう噛まないで……!」


このままではお嫁どころか、明日の入学式にすら行けない気がして、それは流石にと本気でちょっと焦る。

件の『式典服』と言えば、お分かりだろう。

いくら合算年齢がオバサンの域でも、乙女心は不滅。それだけ異世界の制服って、その字面だけで燃えるし、在りし日の女学生みたいな浪漫エモさを感じる。


明日から通う学園は、普段が私服でも可な分、めんどうと思う反面、それ以上に魔法学園へのワクテカが強い。

絶対このチャンスを逃したくないのだ。


自分にとっては2度目で、大人の事情で父母兄不参加な入学式ではあれど、寧ろこれはこれで……ぶっちゃけ、映画。

それだけ、楽しみにしてた。


だから、オフィーリアは……。


「さっきから心臓が馬鹿みたいに、壊れそうなほど早まる……お■■■■痛い」


オメェのぱおん事情なんて、知るかよ。

「入れさせてくれない」のなら、自分で適当にシコって処理しろよ……。


心では反射的にそう思う。

然し、だからと言って口に出さない。


ぴちぴちな身体でも、彼女は大人だった。


「でも、君は噛むなって言うけど、例え犬じゃなくても目の前、ソコに柔らかそうおいしそうな肉があれば噛みつくはむはむするのが普通でしょ?」

「普通。ふつう……………??」


が。

大人でも、大人だからこそ人生に流される時もあるし、迷うことがある。


我氏(※ぴちぴちな15歳、しかも自画自賛できるほどの美少女※)だのに。

だと、言うのに……。

だからこそ、と。


「コレが、外の世界の"普通"……??」


いくら異世界に落っこちたからとは言え、向こうの言い分をやまびこの様に繰り返すも、それはそれでこれはこれ。

これまで実家の領での生活しか過ごしたことのないオフィーリアは、「そうなんだ」と納得してしまった。


その考えがこの世界に生きる人間のデフォーなのだと、変なところですぐ信じてしまうオタクの性、何だかんだ疲れの取れない長風呂で頭が限界に近いのも相まって、そのままインプットしてしまったのである。


(困惑)顔でのなるほど、理解……。


「あとね、いつもそうだけど……いくら番同士の相性性あいしょうせいがあるとは言え、君はどうしてこんなに甘いうまそうな匂いがするの?」

「アッ、」


———だって、現に「コレ」だしな…。


見方によっては熱帯雨林に初めて遊びに行った人がするような虫刺され跡残る、オフィーリアは考えることを考えるのを、やめた。

考えるのが面倒、難しい、理解不能の壁にブチ当たると、魔法の言葉「異世界ゆえに」、彼女はいつもそう思うようにしている。


「だからついつい、噛みつきたくもなる」

「なるほど……??」


……そんな番のことを可愛く思うも、雌であり雄でもあるレオくんはとても心配して、そして、不安でもあった。

あの・・ミアが「ああなる」ほど凄まじいことになってる女の白く、ほっそりとした綺麗な首筋を前に、いくら赤華を強制開花させたところで、特定の物や者に対しメンブレし易いSubの性が警鐘を鳴らす、やはり不安なのである。


ので。


「       」


何かをぼそっと零したのち、男は———これは俺のものだ。

と、


「んっ、じゅッ」

「ア」


優しくメ! ってされようと、関係ない。

それすらご褒美の内なので、イケるとこまでいこうと、嫁が嫁で思考放棄したのならこれ幸い、旦那側は雄丸出しの心を決めたようだった。


赤子より赤くなりやすく、日に焼けても黒くならず赤くなる嫁の敏感肌の質を、彼はよく知っている。


「すき、大好き……愛してる」


溜息に混じって艶っぽい音で、「嗚呼、やはり不安だ」と。


そんなレオに……今もぴりぴり熱帯びて、ひりつくソコに背後からぬっと歯を立て、甘噛みされる。

……かと思いきや……。


「いや」


でも、と。


「でも、例えとしても、俺が……」


どうせこの先、君が君、『オフィーリア』である限り、きっと。


でも、だからって。


嫌だ。そんなの絶対にイヤだ。


「それだけ、俺は……もう他の」


いくら「こんな世界」であろうと、俺の番を。

俺の妖精ツガイアストライヤを、俺以外の男にさわらせる……??


「なんて」


そんな気……いや、そんなの絶対。

いくら、これから……でも。

例え…であろうと。これぽっちも。


「ないけど、でも……」


———と。

思わず「いきなりどうした」と聞きたくなる、新婚(ハネムーンは概念)真っ最中とは到底思えない支離滅裂加減、重さ。

どんな場面でも、時でも、いつも突然病みだす。

この……!


(この意思疎通できているようで、実際の場で会話がまるで成り立たない)


この野郎。


「あー、舐めたい。それで、可愛い俺の番オフィーリアに、思いっきり『ぶっかけられたいマーキングされたい』……」


この感じ……!!


に感動を覚える自分が本当に嫌になる……ここ最近。


➀前世より受け継がれた自分の癖が歪んでいるのか。

➁それともただの本能寺的なアレなのか。

➂将又、噂に聞く「つり橋効果」。


からのドキドキ、余所に自身の生命を脅かされる恐怖。


自分のことなのに。

いや多分、自分の事だからこそ、オフィーリアは分からなくなった。

……理解「は」できるが、やはり結局のとこで分からぬのである。


「……………っ」

「…? ん、なぁに……??」

「………………………………………………………………」


そして、この世の世界観を創り上げたカミサマの野郎の性欲加減も分からない。

相手の話が長いので、途中からそんなどうでもいいことを考えていると……。


(オイ、その気持ちはよく分かる。そこにあったら、私もそうなると思う)


———が。

何度も言うが、世の中それはそれで、コレはコレ、今は今、未来は未来。

病むか揉むかのどっちかにしろよ。


(何時もの事ながら、ホントに器用なヤツだなぁ……)


さっきまでの空気どうした?


……何所とは言わぬが、素直な男の子。上げて、揉んで、寄せて、また揉んで、をまるでマッサージのように繰り返される。

その正直さ正直、嫌いじゃない……。


(……でも、だからと言って何だかな)


いくらこんな世界でも強姦は犯罪だし、憧れも痺れもしないけれど。

その人としての本能、欲に忠実なトコロは普通に好いな~と思いました。


「…………………………」


が。

今回ばかりは可愛い我が身なので、いくら相手がイケていようと、無言のままのオフィーリア。

……アレから何時間経ったのだろう……もう嫌がる気力もないし、話すのも面倒なほど、くたくたのくらくらなのである。


先ほどから腰に当たる男のブツに意識が向かぬようにしつつ、とどのつまり某アニメ漫画の「おはだけ」状態となってる自身の胸部を見て……彼女は眉をきゅっと吊り上げた。


それは、

もう、

本当に。


……やはりと思うのは。


(この度におけるリアルも、相手役がアタイでさえなければ、もっと素直に楽しめるのに、遺憾が過ぐる……)


この構図、私でさえなければ……ッ!

それどころか、相手のデザとCVからして、寧ろ金を払わせろ。


「って、なりましょうに……」

「??」


チ―ン。


「ッ!? ………ア、」


現実はいつも無情で非情。

ああ、無念……と、その記憶を最後に。少なくとも内心の中で改めてこの日の最高潮、クライマックスを迎えたオフィーリアは、とうとう婚約者ツガイの腕中、胡坐上にて事切れた。


油断した時の餅と同じく、歳若くしても長風呂は危険。


これでも頑張って耐えた方、長く続いた怒涛からの強制ぷつんであり、キャパオーバーからのセルフログアウトだった。

突然の裏切りから始まり、雌から雄化する旦那、それから酔えや、病めやのオンパレードで、馬車から寝室までだけでは飽き足らず、いよいよ風呂場でもオーバーヒート。


……散々鳴かされた、そんな女がイきつく先、末路なんて言わぬが花。初めからはなっから一つしかなかったのだ。



「…お嬢様? ……お…嬢様…ッ!?」


とどのつまりお嬢様、湯あたりである。


ただの湯あたり。


である。


のだけれども……傍から見れば———


「お、おのれ、レオ・カイラル・ド・クリシス……! 貴様ぁ、おおよそ三日前までは、たかがお嬢様の『患者』の一人だったクセに……ッ!! 婚約が決まるや否や雪国の華、私たちのエンジェルにこんなご無体を………」


今更お互い恥ずかしがる間柄でもない。

ので、互いのすっぽんぽんを見たところで、旦那の方は兎も角、もう方や「イイ体してんな」くらいしか思わないが、流石のレオくんでも事切れたチ―ンした相手に襲い掛かるほど………………………………非常識ではなかった。


然し双方の衣を引っ掛け、風呂場から出るも「いくら同じ北部の上位貴族であろうと、獣の分際で。なんと汚らしい男……」とゲテモノを見るかのような眼差し、赤くなりすぎて逆に青白くなり始めたメイドが待ち構えており。

……その目は見るから正気を失い、鬼の形相で血走らせていた。


———ただ、それでも。


いくら生ごみを見る眼で男を見ようと、生気のないオフィーリアには愛おし気、見てるこっちが砂糖を吐きそうになるような新緑で見詰めている。

その二面性丸出しの姿に自分の事も棚に上げ、レオはゲンナリした。


恋歌のろいでも歌うかの様に、ミアは……。


「…あ……」

「あ?」

「離婚です! アナタとは今すぐ離婚!! いや、婚約破棄です!! さぁ、この離縁届けに今すぐサインを!!」

「は? ………は??」


殺意マシマシ、忌々しい気配にすっ飛んできた、執事や数名の騎士のお兄さんに抑えられながら、ミアは叫ぶ。


「おのれ、こんのゲテモノのケダモノが…!!」


生まれがお宜しくて。

地位が高くて。

金があって。

身長もあって。


「……ちょっと顔がいいからって……くっ、でも、これも全部、大事なお嬢様のため! 例え相打ちになろうと、こんなの正当防衛の範疇よ!!」


ので。


「———そら決闘だ決闘、クリシスの狂犬いぬっころ! 手袋を拾いたまえ……!!」


余りの剣幕に着いて行けてない周囲の目も憚ることなく、豊満な胸元に片手を突っ込み予備の手袋を引っ張り出す。

然しその次の瞬間、怒り迸る満面の顔は笑顔となって、彼女は目の前の仇を威嚇した。


喧嘩を売られたら、売り返す、倍返しの法則。


個々の性を大事にし、男であろうと女であろうと、アストライヤの住人である限り、誰だって只では転ばない老若男女。

……木通が、どう足搔いても果実アケビなように。


私たち星の民、末裔はそうやって北部ゆきのくにに育てられ、環境と呼ぶ親の元で造られたのだから。

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