「我慢しないで、いっぱい甘えて」男女比ちょいバグな転生先で、みんな私と番になりたいらしい。
雪 牡丹
第一章 15歳、学術学園魅惑のイッチ年生時代
ep.1 夢…? いいえ、これが現実です。
『
私の希望はなかなか叶わないけれど、野心は未だ捨ててない』
いい子でいてくれたら、「信じられないもの」を見せてあげる、と歌いながら。新しいお金に、制服を着て、ネクタイを締め。
パスポートと私の手をつかんで、悪い奴であろうと、私の前ではみんな「
……………。
「いかないで」
「……………」
「やっぱり、行かないで」
「……………」
「フィーちゃんがいない生活なんて、考えたくもない……」
「……………」
「学園なんて経験上、行った所でどうせ意味ないよ。有名どこほど教師生徒ともどもロクなヤツいないんだから」
「そうだ」
「もう、お父様まで……」
根も葉もない噂ばかり飛び交っている外の世界、雑誌を読むように
本来ならば百花繚乱の春、華々しい記念日であるはずなのに……繰り返される愁嘆場。
「この通り、少し? いや、だいぶメンドクサ…いえ、過保護な父兄を持ってしまった娘ですが……」
「……………」
まるで今から死線にでも赴く風体で、周りが、特に兄と父がどんより、ぐだぐだ。後は、
「
「……………」
と、悲壮感たっぷりに続け。
「ただそれでも、それだけ、この子は我が家にとって、私たちにとって、とっても大事な末の子。だからどうか、どうか向こうで、くれぐれもよろしくお願いしますね。特に学園内では、お恥ずかしいこと、貴方だけが頼りなんです……」
それが、例の
よくある話。一つ上の幼馴染の男の子……ではなく、少なくとも我が家の中で。気付けば、いつの間にか友人( )枠から婚約者枠に出世していた、三つも上のイケメン、レオくんの手を両手でとって、祈るように言葉を連ねるママ上にも。
……それは、もう! 色んな意味で目頭が熱くなり、今すぐ……今すぐ!
この場から消えたくなった私こと、オフィーリア。
「もちろんです、お義母様。彼女…オフィーリアのことは、例え何に代えても、例えこの先何を犠牲にしようとも、僕が必ず幸せにします」
と、ね?
いくら今生においては成人ほやほやであろうと、少なくともこちらからの内在からすれば、いい歳こいて、マジで、これはもう泣いていいのではなかろうか……??
前世の基準から言うなれば、絶世と呼ぶにふさわしい
そんで心なしか、今この時、同じ空間のあっちこっちから涙腺の決壊する音が芋ずる式に聞こえて来る気がする……。
「お嬢様」
「オフィーリアお嬢様、お元気でっ」
「都や学園の方が嫌になりましたら、何時でも帰ってきてくださいね」
「掃除を、その、またお会いできる日まで日々欠かさず、部屋のお手入れをしておきますから!」
「ぐすん。サヨウナラ、俺たちの生命線よ……」
んだが。
「……それじゃあ、お母様、お父様、お兄様もお体に気をつけて。みんな、行ってきます……」
そんな、ある晴れた春の日。こうして、私は複雑すぎる思いと(先日の話によれば恐らく)未来の旦那となるであろう男と共に15年間ちょい住み慣れた屋敷、親元を飛びたった。
無論、向かう先は墓地のような雰囲気や、もはや
普通に学校である。
……いや、まぁ、ある意味、こういった社会の世界観からすれば、普通の戦場より戦場しているであろう、貴族子女から始め豪商、平民特待生集う場所ではあるのだけれども。
言うなれば結局、勉学に励むというよりかは、一定年齢の未婚の男女を各領から一同まとめて、最もコスパよく、最も手軽に、白日と大義名分の元で
愛憎、策略、イジメ、就活蠢く魔境。
地雷とフラグの極致、集合体みたいな場所に今から……。
「……………」
主だった人目が無くなったのをいい事に、オフィーリアはとうとう令嬢あるまじき、この世の絶望を象ったかのような顔をした。
……それも、何と、一昨日までは何のしがらみもなかった(はず)。でも、今となっては公式となってしまった(らしい)婚約者の膝上で。
……………????
「なるほど、これが。例えどれだけ
「?」
女は、混乱……どころか、怒涛にも程がある展開に錯乱していた。
こう口に出し、
そして、先ほどの兄からまろび出た「経験上、有名どこほど教師生徒ともどもロクなヤツいないんだから」発言を思い出して、更に絶望。
……だって、それだけ。
だって、何せ、それだけ、今のオフィーリア、今の彼女にとってこの世界と言うのは……確かに魔法等のワクてか要素多々あれど、それらを打ち消すほどの圧倒的脅威。
何かにつれ、アレはアレで、ナニがナニなので、隙あればRに凸ろうとする……ここは、正しく、そういう系統の世界だから———。
ピタ。
グリッ!
と、ほら実際。今日も今日とて油断の隙もないし、前世ならば決して考えられないであろう、現実的に隙のない異性とのこの体勢。
は兎も角……………、
「レオくん…ってる……」
あくまで、この世界に来て、ここまでの経験上。確実に藪蛇だと分かりつつも、元関西出身だからなのか、突っ込まずにはいられない。
オフィーリアは一寸した勇気を出した。
「うん?」
こうして、新たな生でこの世界に落とされて早十数年経ち、先日を以てこの身はこの国において(一応)成人扱いではあれど……それでも、未だ15な私。
いくら、郷に入っては郷に従え、と言うが。
これでも元の世界の常識・良識・年頃ごとにおける性への考えは抜け切れていないし……例えこれまでやむを得ず、背に腹は代えれぬまま、女として色々捨てても、人としてのアレコレ……だからと言って、「嘗ての自分」という自我を未だ捨て去っていないのだ。
……だというのに。
「あの、ですね。レオさん…当たってる、硬いの……」
過去も、今も切り離して、片方だけと捨てることも出来ず。
だた、こうしてどちらの常識も持っている状態では、たまに辟易としてしまうのも……現実。
……後は、リアムタイムの問題。
今の私のお尻に、殿方のアレが……ね?
「うん♡ 可愛い僕の婚約者、オフィーリアも
「変態ですね」
「んっ、」
刮目せよ。
この恥じらいを微塵にも感じれない、堂々たる開き直りぷり。
思わず身の危険をダイレクトに感じ、反射的に逃げ腰になるも。
然し、こうも身動きが取れない場所と体勢。少しでも、動こうとするだけで
「ん。んっ、こら、逃げないで」
と腰に腕を回され。
甘えた仔犬のような声を出す男にため息が零れ落ちる。
(どうして今日も、こうなった……)
「今更となってはお互い様で、良識なんて語れる自分ではないけれど……」極上の
二日酔い時のような顔をする、オフィーリアは、こめかみを抑えた。
……だって、それだけ今のこの状態が、これから訪れる
本イベ前のプロローグと言わんばかり……生暖かい舌が自身の首に触れるのと同時に、仮にも密室空間。「もはや、新婚か……?」と言いたくなる甘ったるい空気であろうと、その分、何とも
私、知ってる。
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