第117話 殻をやぶる
コーギーは月曜日から並々ならぬ決意を持っていた。創作世界でやれることは全てやろう。それだけやったら道は開けるはずだ。たとえ友人を失うことになろうとも……。
コーギーが部室に入ると、天川書記とさっこがすでにいた。それなりに話はしていたようだ。だが、そんな表面的なご挨拶などこの部室には不要。
コーギーは、よいしょ、といった感じで椅子に座り、短くまるまるとした手をちょこんと机に乗せて話し始めた。
コーギー「わふぅ……わん、わん」
(二人ともご苦労。今日二人を呼び出したのは、そこのさっこについて話があるからだ)
天川「さっこさんについて? もしかして入部するんですか?✨✨」
さっこ「いやいや! 私なんて皆さんの足元にも及びませんから! 入部なんてとんでもない!」
コーギー「わうぅ……わん、わん……」
(この部に入ることが人としてどうかという懸念については理解する。だが、これから創作をしていくにあたり、自分の殻を破ることは大切だ。特に「先生に怒られないようにプロットを作る」なんて百害あって一利なし。残り2回しかない講座で後悔しないように、利用できるチャンスは全て使うべきだ。
ぬりや君だって部員ではない。ここが彼の何の役にたっているかは全くわからないし、誰も責任をとるつもりもないが、少なからず仲間がいる楽しさはある。さっこもそれくらいの気軽さでここで揉まれるといいと思っている。揉まれるのが経験なのか、作品なのか、乳なのかの選択権はないが)
天川「ぶちょーの気持ちはわかりましたし、部室が異世界なのもわかりますが、さっこさんみたいな真人間が部室に来たら、揉みくちゃにされて身ぐるみ全部はがされちゃうと思いますよ!」
コーギー「会計と顧問はなんだかんだでオトナだから、さっこが心を開かなければやらないだろう。だから天川、お前を呼んだのだ」
コーギーはうっかり人間を話した。
天川「あたしが?!」
コーギー「一度、さっこにロックオンしていたではないか。カクヨムに登録してカク側の人間が真人間なわけなかろう。さっこは、その欲望の自覚と才能を自分で磨こうとする覚悟が足りん。身ぐるみはがされてからがスタートだ」
天川「あたしは楽しいですけどぉ……さっこさんが嫌がったら元も子もないというか……」
コーギー「さっこは、”見てほしくないけど見てほしい”という、着ぐるみを被った露出狂が自宅に引きこもっているという状況なのだ。荒療治だよ荒療治」
天川「隙有らば自分の作品をねじ込む私とは大違いですね」
コーギー「ふ……大違いなのか、実は本質は一緒なのかは殻を割ればわかるだろう。まあ、この部室で死ぬことはないから、いっかと思ってる」
コーギーは最後、妙に軽い言葉で締めた。
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