第88話 文体を真似たことでわかったこと
チオリは会議室で、数人のHARUKI MODOKI(略称HM)のメンバーと打ち合わせをしていた。
ぬりや先生は、コーギー魔王の嫉妬の炎から免れることを条件にこのプロジェクトに参加。
猫部ゆうり先生は、公募投稿後に息抜きで書いたハルキズムを感じさせる比喩祭り作品に目をつけられて拉致られた。
▼世界の果てとアメリカン・ダイナー▼
https://kakuyomu.jp/works/16818093084920601618
もう一人、「ハルキってこんな感じ」と、軽くコメントにらくだを書いたスロオが呼ばれていた。
「皆さんお疲れ様です。僕は今までハルキ作品は馴染みがなくて――いや、実際は二作品読んでたんだけど記憶が無くて――慌ててノルウェイの森を100ページまで読んだんです。僕がまだ全然ハルキ味足りてないのはわかってます! でも皆さんの作品を読んで、思ったんです。ハルキ文体にすると逆に自分の強みがわかるなって……! ハルキを意識しても、なお消えない個性! 僕の場合は批評的口調! 猫部先生は文字で殴ってくる迫力! スロオ先生は少年の詩のような可愛さ! ぬりや先生は隠しきれないお笑いのサービス精神! それらをもっと自作に生かしたらどうなるんだろうって!」
僕は何が言いたいのかまとまらないまま、ただ唾を飛ばしながら叫んだ。きっとあちらはドン引きしてるだろう。
『まあ、実際、延々と書けそうで怖かったけどな』
スロオが言った。
『二時間半かけて書いて、楽しすぎてまだ書けそうだったわね』
猫部が言った。
『私だけ文体じゃなくて精神について言及されたんですが、どう受け止めたらいいですかね?』
ぬりやがなんとも言えないトーンで言った。
「みんなハルキ文体にチャレンジしたらいいのに……。うづーき様とか、豆は様とか、さっこ様とかぁ……!!」
チオリは自分がハマると他人を巻き込みたくて仕方がない体質だった。
「お三人とも丁寧な文章を書くじゃないですか。絶対ハルキ文体でもそんな雰囲気あると思うんですよ! 検証したくてたまらない!」
チオリはただただそう嘆いて悶えるだけで、打ち合わせは一向に進まなかった。
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