第84話 せっかく異世界に来たのだから

「そういえば、まだ皆様の異世界での力が何かを確認していませんでしたね」


 少年僧侶がひょっこり現れて言った。


「誰? この子」


 ユーリが言った。


「あたしの付き人です」


 アマカワが言った。


「みなさん、ポケットに万年筆が入っていませんか?」


 二人はゴソゴソと探って万年筆を見つけた。


「その万年筆で書いたことが異世界では現実になります」


「え?! ホント? じゃあ旅なんかしなくてもいいじゃない。ベリーを食べたコーギーが爆発した、とか書けば」


 ユーリが言った。


「はい、書いて大丈夫です。それを感知した魔王がきっと返事を書いてきます。あとはそのカオスにより世界がどうなるかですね」


「ふーん。随分ヒマなのね、魔王」


 ユーリはそう言いながら万年筆をまじまじと見た。


「魔王が思いつきで仕掛けてくることもあると思うので、頑張ってください」


「やっぱりヒマなのね、魔王」


 じゃあ巨乳くらい簡単に手に入るじゃないか……とアマカワは思った。乳が手に入ったあかつきには、あの下着をつけて、ああしてこうして……。


「アマカワさま? 禁欲してないと巨乳にはなれませんよ」


「その条件は生きてるのか!!」


「F70の条件は処女ですから」


「それは知らんかった……。この世界がそんな清らかさで溢れていたとは……」


 スロが妙に感慨深く言った。


「BL奨励、GLわかんない、NLは成就しない、が魔王の呪いですから」


「……じゃあ、顧問ではないと否定してるこのスロさんには、この世界ではBL経験値が……」


 ユーリとアマカワは、スロのステータスを開いてBLレベルを調べた。


「いやほら、私も単純に清らかな存在なのだよ。深読みしなくていいから」


 スロはステータス画面を無理矢理閉じた。

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