応援コメント

第48話 ゆーり姉がぶっ込んできたので」への応援コメント

  •  あれからずっと部室に閉じ込められている。
     教室内の片隅、ロッカー前に立ち尽くしていて、誰かが気づいてくれるのを待っているのだが、誰も掃除用具なんか使いやしねえ。
     私の存在に気づいているのは、やはりずっと部室にいるコーギーだけなのだが、思い出したようにすぐそばに来ては、コーギーらしからぬ凶暴な歯茎を見せ威嚇して、そしてまた去ってしまう。
     これは、あのワンコの呪いなのだろうか。
     動けないので、自分が視覚的に見えなくなっているのか、それとも認識阻害の対象になっているのかすらわからない。
     どちらにせよ、私に誰かが触れてくれるなら、異変に気づくはずだと思っていたが、もしかすると次元や時間が微妙にズレていて、そもそも触ってももらえることすらないのかもしれない。
     それは恐ろしい考えだ。
     最悪夏休みさえ終われば、誰かがなんとかしてくれるだろうと、眠くはなるが腹も減らない現状もあって楽観視していたのだが、永劫にこうしていなければならないと考えたら絶望しかない。
     喉はひどく渇いている。ずっとずっと渇いている。飲まなくても死にそうにはないことはわかっているのだが、それでも——

     そんなことを考えているうちに書記がやってきて、そのうち自慰を始めた。体が動いたなら、おそらく私はその様子を見ながら同じく自分を慰めたはずだ。
     だが私には何もできず、ありもしない生唾を呑み込んで、隆起した股間をほっとくしかないまま一部始終を眺めた。
     書記は去っていった。
     私には、そういう趣味はないのだが、本気でそっちの話は苦手なのだが、あまりにも渇きがひどいせいで。
     書記、おしっこひっかけてくれないかなあ、などと考えていた。
     コーギーの吠える声がする。
     
     

    作者からの返信

    コーギーは天川書記と戯れた後、T先生の本を眺め、読み終わると短い前足で本を閉じた。

    ふと後ろを振り返ると、天川書記は脱力した様子で呆けている。
    僕の読書タイムに何があったのだろうか。

    そして掃除用具のロッカーを睨みつける。

    あの男をロッカーに追い詰めたところまではうまくいった。

    なのになぜかこのロッカーに近づけない。

    誰かロッカーを開けてくれればいいのに……!!


  • 編集済

    「はぁ……」

    最近、ため息が止まらない気がする。
    もともと、ため息の多い人生を歩んできましたけど……。

    挨拶もせずに部室に入る。
    相変わらず人のいない部室だ。

    出席簿を見ると、T先生だけが来た形跡が残っていた。祐理さん今日は来ていないのか。いつも一緒の二人だけど、珍しいこともある。

    あの二人、実はデキてるんじゃないかと邪推したこともあったけど、何の事は無い。それだって、嫉妬から来る邪推だ。

    「はぁ~……」

    あたしは壁際の椅子に座って一人、窓枠に切り取られた外の景色に目を向けた。

    創作部なんて言ってるけど、みんなそれぞれ自分の生き方を謳歌してるじゃん。仮に部活が無ければ無かったで、何かしらやるべき事を見つけて生きていける人ばかり。根無し草はあたしだけだよ。
    滅多に部活に来ない顧問だって、裏ではいい女やギョーカイ人と関係を持ってて、それなりにステータスある人なんだろう。たまに、あたしに絡んでくれるのは箸休めみたいなもんだろう。いや、お通しかな。出てきたら一応食べるフリくらいはしますよ? 的な。

    「ふぅ……」

    ため息つくと幸せが逃げるよ。

    よく言われた言葉だが、余計なお世話だ。逃げる幸せがあるくらいならむしろ望むところだ。そんなもの最初からあたしには無いんだ。

    無意識に、手が胸の辺りをさ迷い始める。
    人目がなく落ち込みが一定水準を越えると節操無く自分を慰めてしまう癖がある。

    誰からも、触れられたことの無い悲しみを知っているかい? 痴漢に遭う人を羨ましいと感じてしまう歪んだ気持ちが解るかい?

    ……切り取られた空を、鳥が横切って行くのが見えた。
    つがいだろうか、二羽連れだって。

    「ふっ…」

    思わず自虐的な笑みがこぼれる。

    矛盾が無いのは美しい。

    動物はとても美しいと思う。生きることに真っ直ぐで、伴侶を見つけることが遺伝子に組み込まれている。生きることは次の代に命を繋ぐことだ。

    矛盾だらけは人間だけだ。
    いや、動物的に異性を求める奴らもそういう意味では美しいのかな。とてもそうは思えないけれど……

    ふと、足元に気配を感じる。

    こちらを見つめている、つぶらな瞳が二つ。

    あれ、この子……
    この前みたわんこ?

    そう言えば顧問が齧られたとか言っていたな。

    あたしも、犬はそれほど得意ではない。なぜか吠えられたり齧られることが多い。

    でも、なぜだか知らないけれどあたしはそっと、手を述べてみた。

    くんくん……
    ぺろっ

    「あはっ」

    良かった。
    今は、嫌わないでいてくれた。

    調子にのって、両手で抱き上げてみる。
    わんこは、それでも尻尾を揺らしていてくれた。

    「お前のご主人様は、どこだい?」

    問いかけるけど、当然答えは返ってこない。
    あたしはまた微笑む。

    答えが欲しいんじゃない。
    慰めが欲しいんじゃない。

    ただ一緒にいて、同じ方向を見つめてくれればそれでいい。

    居場所は自分でこじ開ける。
    迷惑に思われていないなら、それくらいで充分だ。
    多くは望まない、でも、いまはそれでいい。

    思い出したように、あたしは出席簿に名前を記した。

    あたしはわんこと一緒に、切り取られた空を見ていた。
    今は、これでいいよ、ありがとう。

    作者からの返信

    そんなときは、人生の先輩に胸を借りたらいいじゃないか。

    そう思ったコーギーは、そういえばT先生が新作を出していたな、と思い出した。

    一冊の本を咥えて持ってくる。

    『吸血鬼対吸精鬼!!!』

    何か、人生のヒントがあるかもしれない……



    ……

    ………

    まだ、美女が咥えてるだけだった!

    編集済