第19話

 まだ完全に傷が癒えていない状態の俺は自身に向けられる負の感情に俺の本来の精神は動揺するが、それ以上に外付けの闘争心の方が割合が多いためすぐに冷静になれる。


 俺は息を整えて【超強化再生】に意識を向けることで【超強化再生】を意識的に使用する。そうすることで自然に発動するよりも【超強化再生】の効果が強く早く発動して一気に身体の傷や武装の破損部位が完全修復していった。


 「結構エネルギーを使うんだな。」


 意識して使用した【超強化再生】に消費した進化エネルギーの量は思ったよりも多く、先ほどの吸血鬼戦の時に体内に溢れていた進化エネルギーの半分以上を消費していた。


 それでも強化されて再生された肉体と武装は吸血鬼戦の前と比べれば2回りは強靭な肉体と武装になっているだろう。


 現に進化エネルギーの消費で進化エネルギーで自然に強化されていた身体能力は落ちているが、身体は今までの身体とは比べられないくらいに軽くキレの良い動きが出来そうな状態だ。


 吸血鬼を倒した俺に向かってくる侵略者はまだ居ない今の内に手を握り締め開き、身体を軽く動かすことで今の身体の調子を確かめていると上空から降り注ぐように俺に向かってくる者たちが居た。


 それを足元を照らしていた月の影から気が付いた俺は上空を見上げる。そこには大量のメロンやスイカ、カボチャが空を飛んで俺に向かっているところだった。


 その数はパッと見ただけでも20は超えているだろうと、そんな数の人の顔と同じくらいかそれ以上のウリ科の野菜が俺に向かってくる。


 まだ空中戦力の侵略者たちとは戦ったことがない。そんな俺はどれくらいの力で攻撃すれば良いのか分からない。だからこそ、全力では無いがそれでも動きながら攻撃が可能なくらいの力で勢いよく突っ込んで来ている1体の空飛ぶスイカを殴り付けた。


 真っ直ぐに突っ込んで来るだけの単調な動きで突撃した空飛ぶスイカを捉えて繰り出した拳は簡単に空飛ぶスイカを砕いてしまう。


 「弱っ……ッ!?」


 思った以上に簡単に砕けた空飛ぶスイカに思わず呟いてしまうほどに空飛ぶスイカは弱かった。


 そんな弱い空飛ぶウリ科の眷属が空飛ぶスイカを倒したすぐの俺に接近した結果、同じように砕かれるか、それとも手刀で両断されるかされて倒されていく。


 それでも次々と俺に向かって降り注いで来る空飛ぶウリ科の眷属の数は減らないどころか増えており、空飛ぶウリ科以外にも蝙蝠も向かって来ている。


 空から急降下して突撃する空飛ぶウリ科の眷属や蝙蝠の眷属の対応は繰り返される毎にどれくらいの力を込めて攻撃すれば良いのか分かって来て楽になっているが、空飛ぶウリ科の眷属の攻撃方法がまだあり、それが少しだけ面倒に感じた。


 「チッ、本当に鬱陶しいなッ!!」


 一部の空飛ぶウリ科の眷属は俺に対して生やした蔓を使って拘束や鞭打ち攻撃を行なってくるのだ。


 攻撃に使われる蔓の速度は俺でも対処は可能な程度の速さだが、それでも蔓の量が多いうえにその間にも突撃してくる空中戦力の数が厄介だった。


 1体だけでは倒せないからこそ、自分の命を顧みない特攻を次々に行なう侵略者の空中戦力に吸血鬼戦とは違う精神的な疲労を感じ始めた頃に俺の元に増援の選ばれし者たちが合流する。


 「俺たちも参戦する!」


 「助かる。だけど、俺に連携は期待しないでくれ。」


 「分かった。みんな、聞いたな。俺たちは俺たちに出来ることをやるぞ!!」


 増援に来た選ばれし者のリーダーを務めている者に伝えることを伝えると、俺は迫ってくる侵略者の空中戦力を倒すのに集中する。


 少し楽になったな。そんなことを内心で思いながら、俺1人だけに降り注いでいた侵略者の空中戦力の数が少し減り、空飛ぶウリ科の眷属からの攻撃の回数も減ったことで余裕が出来始めていた。


 これならミスをして何かしらの攻撃を侵略者の空中戦力から受けることはないだろうと安堵した。


 だが、問題が1つ減れば、また問題が1つ増えてしまっていた。

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