武器鍛冶師のはずが騎士団に入っていました。

紅葉ひいらぎ

第1話~浮遊大国~

「くぁ〜、よく寝たな。」


僕は宿屋"エドラ"の二階で目を覚ました。


此処は浮遊王国『エルネス』。


約85万人の人口と13の騎士団を持つ大国だ。


その大地ははるか昔、神の怒りに触れ地上600mに浮遊している。


しかし、魔法や魔道具の発達により、下の世界とも行き来できるようになった。


その国で僕は鍛冶を営んでいる。


鍛冶を始めてまだ4年、顧客こきゃくは全くいない。


そのため、鍛冶の稼ぎで生きていくことはできず、クエスターとしてモンスターを討伐し、生活費を立てている。


「・・・よし。」


準備はバッチリ。


愛用の直剣『ジークン』を装備し、宿屋を出る。


とはギルドや、国からの依頼でモンスターを倒し、日銭を稼ぐ者たちの総称である。


依頼に関わらずモンスターを倒す放浪の者たちは、その命知らずな性格故に『冒険者』と揶揄やゆされることも多い。


僕はそんなクエスターの一人、ウェラ・エスタディオ。


よわい15の人族だ。


腰まである黒い髪。細い体の線から、一見すると女性に見える。


が男であり、一応ギルドランクS相当のクエスターでもある。


ギルドのクエストボードの前に行き、クエストを確認する。


その中から2つの依頼を取り出した。


魔剣の作成依頼と、騎士団長の武器作成だ。


魔剣はともかく、騎士団長に献上する剣は生半可な者では作れない。


厳密な審査や選考を通して、騎士団長の下に届く。


つまり騎士団長に自分の剣が渡されるというのは、鍛冶師にとってこの上ない名誉。


自分の鍛冶の腕を認められることなのだ。


「いっちょやりますか!」


僕は鍛冶屋に行くと、材料を取り出した。

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