第5話 イロイロ知らないところから始めよう。




「おはよう」


「おはよう」


昨日帰るときに、自転車に乗って道が分かれる所(ちょっと遠回りになるけどギリ許容範囲)で、待ち合わせの約束をした。


とはいえ、一緒にいられる時間が増えるのは5分くらいなんだけど。

その5分(帰りの分で×2)の為に、すでにバス通学から6kmチャリ通に切り替える決心はついている!


なにせ時間がいるのだ。

カナは3組=隣のクラス。

3組4組合同でやる芸術選択の教科も違う。

昨日まで出身中学、というか住んでるとこさえ知らなかった。


知ってるのって・・・


・ソフト部だけに運動

・2人だけでも健気に頑張っている。

・「下界」で一緒のバスに乗ることがある。

・実は隣の3組だった。


これだけ。

今更ながら「一目惚れ」というヤツに限りなく近い。


でもほとんど話してないのに、何故こうなった?

なんかこう、途中の過程をものすごくすっ飛ばしてる気がする。

普通はなんかの接点があってそっから話したりして徐々に・・・じゃないのかなあ?


冷静に考えても、知ってたのはOちゃんだけ・・・


いや?

ヤツがいたか。

サクラのあの反応。「面白くなりそう」とか言ってたよな?


「あのさ、もしかして、今回のコレ・・・サクラに相談した?」


「うん、そう。」


マジかー。

アイツ、過去のいらんことをどれだけ知ってるかわからんのに・・・!


流石に満員スシ詰めのバスの中では話すよりも倒れないように踏ん張ることが優先される。

・・・まあ揺れるたびに肩がくっつくんだけど。


坂道、バンザイ。

曲がり角、バンザイ。

もうちょっと激しく揺れてもいいです!







バス停を降りれば、すぐ学校。

階段を上ってそれぞれの教室に入る。

そしたらば。



「おはよう!」パシン!


「いたっ?」



「おーっす」ペシン!


「いたい!?」



「「オメデトウーーー!!」」ベシベシベシベシケリケリベシベシ・・・!


「イテーよオイコラ誰だドサクサにまぎれてケリかましたヤツ!」


「「とにかくオメデトウ!」」


「いや、ありがとう? 何事?」


「何事って、お前昨日一緒に帰ってたじゃん今朝一緒に来てたじゃん?」


「あー?」


「もうみんな知ってるぞ?」


「マジで!?」


「で、祝福&制裁というわけだ。」


「祝福はまだしも、制裁とは?」


「「ん。あちらから」」(☚)


「(☚)って・・・あ。」




腕組みしたマミが。お怒り・・・だよなあ?


「・・・ふーん。私と何が違うのかな~?どこが良かったのかな~?」


「・・・スマン。何が違うってのは多分、ない。タイミングと・・・強いて言えば健気さに目が離せなくなった。それだけ。」


「・・・・・」


「・・・・・」


「わかった。そんなに怒ってるわけじゃないよ。だけど、ちょっとムカつくのは仕方ないよね?」


「まあ、それは。」


「じゃあ。・・・野郎ども!やっておしまいっ!」


「「「うーーーーーす!!!!」」」


「ちょっと!?」


「「オラ制裁だ!オメデトウーーー!!」」ベシベシベシベシケリケリベシベシケリケリ・・・!


いたいイタイ痛い!だからケルな!あ、おいそこは、そこはダメ・・・・!










キーンコーンカーンコーン・・・・・・




「・・・ヒドイ目にあった・・・」


「大丈夫?」


「あーだいじょぶだいじょぶ。言うほどダメージはないから。」


「私も今日は4組の女子にすれ違うたびに睨まれたよ」


「ありゃマジで?」


「うん。私、ドロボー猫みたいな感じで見られてるのかな?」


「んー・・・一時のことだと思うけどなあ。マミはそこまで陰湿なヤツじゃないよ」


「そう?それならいいけど・・・」





「ところでさ。なんで・・・俺?」


「・・・最初に意識したのはね、文化祭の時に二人乗りしてたとこ。」


げ。よりによってあの時かい。


「なんか、良いな~って。それから、部活でグラウンドにいる姿を目で追うようになって、だんだんと、ね。」


「で、それをサクラに相談した、と。」


「そう。サクラが『あの人のことは良く知ってるよ!』って言ってたから」


・・・マジでアイツいらんこと言ってないよな?知ってるっていうのがまたコワイ。だってそれ、中学の時にトモ経由で知ってる情報じゃん!何がどれだけ伝わってるかわからん!


「・・・そしたら昨日、『大丈夫だから言っちゃおう!』って」


何が大丈夫なのか問い正したい。まあ大丈夫だったけど。


「・・・めいわく、だった?」


「いや、ちっとも。ただ、あんまり話もしてなかったのにこうなってるから驚いてるけど」


「ホントだね。だって名前も知らなかったんでしょ?」


「・・・ゴメンナサイ」


「大丈夫だよ。今からお互いの事、いっぱい知ることができるんでしょ?楽しみ!そうでしょ?」


「そうだなあ。今から、だね。」


「だから、ね。ハイ、これ。」


「何?手紙?」


「うん。お返事、書いてね?」


「わかった。」





帰り道、家に帰りつくまで我慢できるはずもなく、自転車を停めて手紙を開く。

中には、カナ自身の事と、こちらへの質問が。



「なんで、私を見てくれたの?」


・・・それはさっきも言ったけど・・・




本当は、それは「きっかけ」にすぎない。

本当は、「好き」になるって、あんまり理由がないのかもしれない。




気づいたらそうなってた。

理由なんて、ない。



・・・って書いたら、なんて言うかな?

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