第5話 ご挨拶

 おはようございます。スッキリといい目覚めですわ!


「ねぇ、サラ? 気持ちのいい朝ね」


「お゛っ……おはようございます。お嬢様……」


 なにやらはしたない格好で起き上がれない様子のサラ。わたくし優しい主人なので咎めは致しませんが、本当に困った子ですわね。おしりぺちぺち。


 ぺちりながらも、これからのことについて考えなくてはいけません。


 この世界では適応試験に合格した者は、皐月学園さつきがくえんに通う義務が発生します。他にはメイ・カレッジと呼ばれたりもしますわね。


 なぜかというと、この世界における5大国が結んだ「第二次マギコークス掘削量削減条約」のせいです。これテストに出ますわよ。


 その条約ではスポットにてマギコークスを採取、掘削できるのは学園の生徒のみと決まっています。以前言いました、15歳以上21歳未満の許可を得た者とは、この学園の生徒のことを指しますの。


 国が運営する5つの寮に別れて生活する学生たちは、各々が祖国の利益となるように、祖国にお金玉を握られながら、まぁ簡単にいうと国家の代理戦争をすることになるのですわ。


 「カルヴォノ・マギストリア」では主人公は好きな国を選んでスタート出来ます。そこからその国のヒロインとねんごろになるもよし。裏切って成り上がるもよし。全てを征服してヒロイン全員をはべらせるもよし、と言うゲームなのですわ!


 え? わたくし? わたくしヴィアリスは……中ボスポジションでしょうか?


 序盤のやられ役として頻繁にやってくる中ボスっていませんか? で、中盤で見かけなくなったと思ったら終盤で改造されて強化されて現れるやつ! あれです、あれ!


 自分で言っててロクでもねーですわねぇ……。ちなみにウィングリー王国スタートの場合はヒロインの一人として、わたくし《ヴィアリス》の好感度を稼ぐことも出来ますけど、途中で暗殺されますのではないですわよ! 残念でしたわね!


 ちなみに強化されて出てきても、暗殺されても無事に生体ユニットになってますのでご安心くださいね。


 オタク君たちがアペンドディスクで、むふふなシーン追加しろやらルートを作れやらと署名活動してましたわね。ウケますわ~~~~~!


 話が逸れましたわ。それでわたくしはその学園に通わないといけないのですけれど、すでにゲームの時とは状況が変わってきています。


 まずグローシアが動いています。これはわたくしのせいですわね。


 そしてわたくしがスポットをうろついています。これもわたくしのせいですわね?


 新聞にもスポットに現れる白い未確認機。白い悪魔。などと見出しが躍ります。洗練された見た目の新型機……ですって。クッッッッッソ昔からうちの格納庫で仏壇と化してましたわよ? 笑えますわね。


 とにかく、わたくしが色々と状況を変えてしまったせいで、ストーリー通りに動くかどうかは不透明なのですわ。


 お父様は今のところわたくしの味方……というか放任していますけれど、いつウィングリー王家にバレてわたくしの身柄を差し出すかわかりませんし……。


 もしカルヴォノ・マギストリアの主人公が存在して、わたくしとよい仲になって……いや、この話はやめておきましょう。わたくしには男性とお付き合いするのは無理ですわ。


 ……暗殺には気を付けませんとね。ぺちぺち。ああ、あと自分の手勢が欲しいですわねぇ……。ぺちぺちぺち。



◇────────────────◇



 ご機嫌よう、皆様。


 わたくしまた夜のスポットにやってきておりますの。何やら最近このスポットでは白い悪魔が現れるとか。わたくし、とっても恐ろしいですわ……。


 ところで、スポットは歪ですが円形をしています。時計でいうところの11時~1時の部分に、「アペルピシア山脈」という人類が侵入できないと言われる領域があります。そして9時方向にウィングリー寮、7時半辺りにリュドヴィック寮。6時に本学園とフォトゥネス寮……などがあります。


 あとは割愛しますけれど、スポットの外縁部には寮や学園の施設、またスポットの魔獣が外に漏れ出ないようにする防衛施設などがありますの。防壁の中には地下鉄も通ってますのよ。


 そしてスポット内部に拠点を持つ、どこの勢力にも属しない勢力というのもあります。キャラバンと呼ばれる武器商人や、工房や研究所と呼ばれるMA及びその武装を開発している組織の拠点です。


 もちろんスポットの外にもありますわよ。というかそれが普通なのですけれど……。スポットの中でやっている人たちは頭がおかしい人たちなんでしょうね。


 わたくしの現在地は時計でいう10時半辺りです。そしてここには2周目以降限定の隠し研究所があるはずなのです。


 岩肌に偽装していると聞いて行ってみたものの、散々探し回っても見つからず、途方に暮れた辛い過去が思い出されます。隠すなら隠すでもうちょっと手心をお願いしたいですわよね!?


 そして下ごしらえが済んだものがこちらになります。


 まずはスピーカーをオンに致します。


「オラァッ! お邪魔しますわー!!!」

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