エロゲの悪役公爵令嬢にTS転生したのでロボットに乗って国家と紛争しながらヒロイン全員とお友達(意味深)になりますわ!

内妙 凪

第0話 魔王と呼ばれた少女の戦利品

 私の名前はシャノン=オーティス。フォトゥネス寮では聖女……などと呼ばれて持ち上げられてはいます。しかし無力で何もできないということを思い知らされた女です。


 うちの寮には存在しないような豪奢な内装の部屋。調度品は落ち着いていて少なく、本が多いように見えます。彼女の趣味なのでしょうか?


「まぁまぁ、シャノン。そうかしこまらずに。無礼講というやつですわよ?」


「ぶ、無礼講……?」


 彼女の言っていることにはわからない単語が多いです。これが教養の差というものなのでしょうか? 私は彼女がこの世のすべてを持っているのではないかと考えずにはいられませんでした。


「ああ……身分や礼儀作法なんて忘れてしまいましょう、ということですわ。私たちはこれからになるんですもの。当然でしょう?」


 薄い絹の黒の下着姿を惜しげもなく晒した彼女……。ヴィアリスさんは高価そうな革張りのソファーの上で足を組んで座っていました。とても15歳には見えません。まるで高名な彫刻家が生涯をかけて執拗に彫り続けた大理石像のようです……。


 ……正面に座った私にはが見えているのですけれど……。それとも見せつけているのでしょうか?


 膝まである長い銀髪に、黒いレースの目隠し。感応器官が強すぎるために、ヴィアリスさんは目隠しをめったに外さないそうです。彼女の瞳を見た者は生きて帰れない、なんて言われていますが……。


 今はそれよりも、私よりも高い身長。細い腰。大きな胸……。何もかも敵わないと思い知らされるようで胸が痛くなります。


 スポット最強。魔王。皆殺し姫。ウィングリーの悪魔。数々の異名を持つ彼女ですけれど、今の私の前ではきっと彼女は「手折り屋」なのでしょう。


「ヴィアリスさん、お友達になるにはこの衣装が必要なのでしょうか?」


「他人行儀ですわ、シャノン。……でもわたくしの思った通りでしたわ。とってもその似合ってますわよ!」


 私にはバニースーツなるものが何かはよくわかりませんが、これがとてもいかがわしいもので、とてもいやらしいものだということがなんとなくわかってしまいました。


 その……着ていて食い込んできますし、何より脚も胸元もまったく隠せていません。……こ、股間もなんだかこころもとないですし……。


「ねぇ、サラ?」


「あっ、はひ! にあっ似合っております……ぐうっ……ひうっ……」


「ね?」


 彼女の後ろに立っていたサラと呼ばれた美しいメイドさんがビクビクと痙攣しています。……何が「ね?」なんでしょうか? まったく理解できません。私の中でどんどんと不安が増していきます……。


「それで聖女について詳しくお聞きしたいのですけれど……。聖女の条件とは何でしょうか?」


 ヴィアリスさんが急に真面目な顔で私に問いかけました。なんだか急に真面目な話をされてしまって、私は面食らってしまいました。


 バニースーツの食い込みを直しながら、私は一つ深呼吸をしてから答えます。


「聖女とは人々の心の……」


「ああ、違いますわ! そういう話ではなくて。その……にこんなこと聞くのって気が咎めるのですけれど……。聖女の条件はと聞いておりますの。それってどこまでが本当なんですか?」


「じゅ、純潔……?」


 食い気味に否定され、私は思わず鸚鵡おうむ返しに呟いてしまいました。


「ええ。肉体的な純潔ってどこから純潔でどこからが純潔じゃないんでしょうか? 例えばキスしたら純潔じゃなくなりますの? それとも性行為をしたら? 異性だけですの? それでは同性は? 誰かが聖女様の体を調べて決めるんですの?」


「ち、違います! そういう話ではありません! 人としての心構えの話です!」


「まぁまぁ……そうですのね。では肉体的な純潔は関係ありませんのね? それは重畳ですわ。 ……サラ」


 後ろで痙攣していたメイドさんがゆっくりとヴィアリスさんの後ろに回り込むと、黒いレースの目隠しを外し始めました。


「見苦しいところをお見せしてごめんなさいね。わたくし、こういうの苦手で……」


 何が苦手なのかわかりませんが、ヴィアリスさんの目隠しが取られます。その下には長い睫毛と白い肌。目隠ししていても美しい人でしたが、目隠しを取ることでさらに輝きが増したように感じられました。


 しかし彼女の瞳を見ると、生きて帰れないという噂もあります。少し怖いです……。


「ご安心なさって。私の瞳を見ただけで死ぬのなら、わたくしの両親はすでにこの世に居りませんもの。今も元気ですわよ?」


 まるで私の心を読んだかのように答えるヴィアリスさん。


 閉じていた目が見開かれると、エメラルドのように輝く瞳が現れました。 


「シャノン。本当にあなた美しいわ……」


 そうヴィアリスさんが呟かれると、ぼうっとヴィアリスさんの長い銀の髪が瞳と同じエメラルド色に淡く輝きました。私は思わずその幻想的な光景に見惚れてしまいました。


「私なんかとても……」


「そんなことないですのに……。さぁ、楽しみましょう、シャノン」

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