第4話 初めての展示会

文化祭の準備が本格的に始まり、蓮の心は期待と緊張でいっぱいだった。美術部の仲間たちと一緒に作品を作り上げる日々は、彼にとって新たな刺激と学びの連続だった。翔や薫のサポートもあり、蓮の技術は確実に向上していた。


文化祭前夜、部室は熱気に包まれていた。みんなが最後の仕上げに取り組み、展示ブースの準備を進めていた。蓮も自分の新しいぬいぐるみを手に取り、最後の仕上げをしていた。


「蓮君、それ本当にかわいいね!」薫が近づいてきて言った。「みんなもすごく楽しみにしてるよ。」


「ありがとう。でも、まだ不安だよ。みんなの作品と比べると…」


「そんなことないさ。君の作品には君の個性が出てる。それが一番大事なんだ。」


薫の言葉に励まされ、蓮は自信を取り戻した。翌朝、文化祭の当日がやってきた。美術部のブースには、様々な作品が並び、多くの生徒や来場者が足を止めていた。蓮のぬいぐるみもその中にしっかりと展示されていた。


「蓮、見て!たくさんの人が見てるよ。」翔が笑顔で言った。


蓮は少し緊張しながらも、自分の作品を見つめる人々の表情に安心感を覚えた。彼の作品に対する反応は上々だった。多くの人が「かわいい!」と口にし、子供たちは特に興味津々で触れていた。


その中で、蓮にとって特に印象的な出来事があった。小さな女の子が、彼のぬいぐるみをじっと見つめ、母親にねだったのだ。


「お母さん、このぬいぐるみ欲しい!」


「本当に?それなら買ってあげようか。」


蓮は驚きと喜びで胸がいっぱいになった。自分の作品が誰かに愛され、欲しいと思ってもらえることがこんなに嬉しいとは思わなかった。


「すみません、このぬいぐるみ、いくらですか?」母親が尋ねてきた。


蓮は少し戸惑いながらも、「あの、これは展示用なので…でも、もしよければプレゼントします。」と答えた。


「本当に?ありがとう!とっても嬉しいわ。」母親と女の子は感謝の言葉を述べ、ぬいぐるみを大事に抱えて去っていった。


その光景を見た蓮は、自分の作品が誰かを喜ばせることができるという実感を深く感じた。この経験は彼の中で大きな自信となり、次の作品作りへのモチベーションをさらに高めた。


文化祭が終わり、蓮は美術部の仲間たちと共に達成感を共有した。彼の心には新たな夢が芽生えていた。もっと多くの人に自分の作品を見てもらいたい、喜んでもらいたい。そのためにもっと努力しようと決意した。


蓮の「カワイイモノ」への情熱は、彼をさらに高みへと導いていく。彼の心はますます開かれ、新たな仲間たちとの絆も深まっていく。蓮はまだ知らない。この文化祭での経験が、彼の人生にどんな大きな変化をもたらすのかを。しかし、彼の未来は確実に輝きを増していた。

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