カワイイモノ

みっちゃん

プロローグ

蓮(れん)は16歳の高校生。毎日同じように学校へ行き、授業を受け、家に帰る。ただ、それだけの生活。特別な夢も目標もなく、誰かと深く関わることも避けてきた。内気で、周囲の喧騒が苦手な蓮にとって、静かな時間が何よりも大切だった。


ある日の放課後、ふと立ち寄った学校の文化祭。友人に誘われるまま、何気なく歩いていた蓮の目に、一つのブースが飛び込んできた。色とりどりの可愛いマスコットやキャラクターグッズが並べられているその場所は、他のブースとは一線を画していた。


「これ、かわいい…」


思わず手に取った小さなマスコット。その瞬間、心の奥底に温かいものが広がった。何かに心を動かされる感覚は久しぶりだった。ブースの奥から現れたクラスメイトの女の子が、笑顔で話しかけてくる。


「それ、私が作ったの。気に入ってくれた?」


蓮は驚きと共に頷いた。彼女の話を聞くうちに、可愛いものに対する彼女の情熱が伝わってきた。蓮の心の中で、何かが静かに動き出した瞬間だった。


その日から、蓮の中で「カワイイモノ」に対する興味が芽生え始めた。毎日の生活が少しずつ色づき始める。自分もいつか、こんな可愛いものを作りたい。そんな小さな願いが、彼の新たな目標となる。


そして、蓮の物語が静かに、しかし確実に動き出した。

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