日常5
チリーン、チリーン……と。
風鈴の涼し気な音色が響く。
風鈴と言えば真っ先にガラス製の丸いヤツが脳裏に浮かぶと思うが、我が家にあるのは南部鉄器の銅鐘の様な風鈴である。三角帽子みたいなヤツ。
見た目としてはガラス製の方がメジャーで風鈴といえばこれだよなって感じで、南部鉄器の風鈴にあまり馴染みは無いと思う。
しかし、響く音色でいえば俺は南部鉄器の方が好みである。
ガラス製はチンチンチンカンカンカン。
南部鉄器はチーン……チーン……チーン……。
と言った具合。一応チンチン言ってるけど下ネタでは無いからね?
是非、1度聴き比べて見て欲しいところ。
普通のモノと普通では無いモノ。
その違い。その好みは人それぞれあるだろね。
我が家の縁側に座り、風に吹かれる風鈴の音を聞きながらボケっとしていた。ジジイかな?
ふと気がつくと俺の隣に見知らぬ少女が座っていた。何処か儚げな印象の鶯色の髪の長い少女だ。
「調子はどう?」
「一命は取り留めたのじゃ」
「それはよかった」
「じゃが、まだまだ足りん」
「そう」
「贄が必要じゃ」
「邪神の類かな?」
「我は土地神じゃ」
「封印されるタイプの土地神ね。悪い神様じゃん」
「活きの良い贄を捧げよ」
「それした結果どうなったんだっけ?」
「………………」
「学習しなよ」
「…………仕方あるまい」
「そうだね」
「こうせねば生きられぬ」
「難儀だなぁ」
気がつくと少女は消えていた。まるで初めからそこに誰も居なかったかのように。
庭に植えた木を眺める。
植えた当初のほぼ枯れていた状況とは違い、今は少しだけ葉っぱが生えて元気を取り戻していた。
シンプルに呪われている。
どうしたもんか。
「ぽぽぽ」
気がつくと今度は隣にデカイ女が座っていた。白いワンピースと大きな帽子と耳まで裂けた大きなお口。ぽーちゃん様である。
「どうしたらいいと思う?」
「ぽぽぽぽぽ」
「えっ、そんなこと出来るの?」
「ぽ」
「そんなことして大丈夫?」
「ぽぽ」
「それならやってみようか」
「ぽ」
隣からぽーちゃん様の姿が消えたと思えば、ぽーちゃん様は庭の木のすぐ傍に立っていた。
ずるり、と。ぽーちゃん様の腕が木の中に入っていく。
「な、何をするのじゃ」
ぽーちゃん様が腕を木の中から引き抜くと、その手にはジタバタと暴れる鶯色髪の少女が握られている。木の中から引きずり出したようだ。
「ぽぽぽぽぽ」
「うっ、な、なにするーーや、やめッーー!」
そして、
ムシャムシャと。
あろうことかぽーちゃん様はその大きな口で少女のことを頭から喰い始めた。こいつはまたショッキングな映像だぜ!
そのままペロリとぽーちゃん様は少女のことをまるっと残さず食べ尽くす。
「それじゃ寝室に行こっか」
「ぽぽぽ」
少女を食べてしまったぽーちゃん様を伴って寝室へと向かう。
この後、めちゃくちゃセックスした。
翌日。
ぽーちゃん様のお腹はまるで妊娠したかのように、というか妊娠してポッコリポテ腹になっていた。
翌々日。
前日ポテ腹だったぽーちゃん様のお腹は見事に凹んでいつも通りになっており、その代わりその腕の中に1人の赤ん坊を抱き抱えていた。
鶯色の髪の赤ん坊だった。
どうやらぽーちゃん様は妊娠出産を3日で済ませたようである。くっ!たった3日でパパにされてしまうとは!恐るべしぽーちゃん様!
「その子があの子?」
「ぽ」
「何がどうなっとるんじゃ」
「あっ、もう喋れるんだ」
「これはどういことじゃ」
「キミは文字通り生まれ変わったのだよ」
「そうなのか?」
「ぽぽぽ」
「……なんと言っとるのだ?」
「これでもう贄を必要とすることも無いだろうって」
「……確かに。そうみたいじゃな」
「ぽぽぽ」
「これからは俺らの娘として生きていくがよい」
「ヌシら我の母と父か」
「パパと呼べ!」
「ぽぽ」
「パパ上とぽぽ上か……まあ、よかろう」
パパはともかくぽぽってなんやねん!なんてどうでもいいことを思った。
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