リースリット・マルズ・クラスリー

第4話


 警報を聞いて跳んできた衛兵に、事の次第を説明するのには骨が折れた。

 特に、『解除した障壁は元に戻した』と言っても、魔法に精通していない衛兵には、確認できないことが面倒な点だった。


 結局、取得したばかりの講師免許証と、クラスリー当主の手紙が効果を発揮し。

 なんとか解放してもらえたけど。


 

「はぁ」


 というわけで、今、私は既に疲れている。

 


 しかしながら。

 廊下の絨毯のふかふかぶりに感動し。

 2階のガラス越しに見下ろす、広い庭園の美しさに魅了され。

 随所にみられる超高価そうな調度品の数々におののいているうちに。

 どうやら着いたらしい。


 眼の前を歩いていた案内役のメイドが立ち止まる。


「こちらでお嬢様がお待ちです、アダストラ様」


 示されたのは、装飾の施された立派な扉だった。

 つまりその扉1枚向こうには、私の生徒第一号、リースリット嬢が待っているというわけだ。



「ありがとう」

  

 メイドに礼を言い、私は自分の魔術服のタイを締め直し、気を引き締める。


 そうして、その扉の取っ手に手をかけた。

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