一人対話

@okomesikakatan

一人対話

その日、外は暑く、学生や老人達が汗を垂らしながら一生懸命歩いている姿が目に入る夏の日のことだった

少女が人の居ない公園のベンチに座って話している


「夏ってやっぱりいいなぁ」


「夏?汗かくだろ」


「でも海とかプールとかで遊ぶの、楽しくない?」


「楽しくない」


「そうかな〜。私はとっても好き!冬じゃできない遊びが

とっても好きなの!」


「どうせ溺れる」


少女は高校生くらいの年齢に見える

ブラウスにスカートにネクタイという夏の時期であればよく見る高校生の服装だ

帽子を被っていて表情はよく見えないが、声はとても楽しそうだ


「でも冬も大好きなの!お正月にはお餅を食べてみかんを食べて、のんびり過ごすの!」


「喉に詰まらせるぞ」


「あー、でも秋も好きだなぁ!秋刀魚がおいしくって!」


「喉に骨が刺さる」


「マイナスなことばっかり !春は花粉がどうたら言ってたし!じゃあどの季節が好きなの?楽しくないとか溺れるとか文句言って」


「好きな季節はない」


「もー…楽しいこととかあると人生変わるよ?」


「人生に希望を見出しても無駄だ」


「そんなことないって!」


そんな話をしていたとき、少女のすぐ近くにボールが転がってくる

近くで子供が遊んでいたのだろうか


「無視しとけ」


「このボール、誰のかな?持ち主探したほうがいいかな?」


「近所の小学生だろ。子供の相手は面倒だ」


「でも探さないと」


ボールを手に持つ少女の元に一人の男の子が駆け寄ってくる


「あ!そのボール!」


「もしかして君の?」


少年の容姿は如何にも野球少年という感じで、片手に持っているものも金属バット

今さっき飛んできたボールも野球に使う小さなボールだ

きっと野球でもしていたのだろうか


「うるさそうなガキだ」


「もう、そんなこと言わないの!はい、これ!もう遠くに飛ばしちゃだめだよ!この公園のすぐ近くの家、とっても怖いおじいさんが住んでるから怒られちゃうよ?」


ボールを受け取った少年は少女を見て少し不思議そうな表情をしている


「どうしたの?」


「あのさ、おねぇちゃん」


少年は首を傾げて少女にこう尋ねた


「さっきから、誰と話してるの?」


「ん?あぁ、私のお友達と話してるの!」


公園に居たただ一人の少女は少年に何かを見せるためにブラウスの袖を捲る

少年はブラウスの内側を見て怯えた表情を浮かべ、一歩、また一歩と後ろに下がる

少女はそんな少年の様子を見て怪訝そうな表情を浮かべる


「そ、それ、何?」


少女の腕には人の顔があった

人の顔のようなもの、ですらなく、人間の顔だったのだ

ギョロギョロとした目、少し短い睫毛、そして鼻と口

笑みを消した少女は答える


「私のお友達なの。とっても可愛いでしょう?」


少女とは対照的に顔はニィッと笑みを浮かべて少年を見つめていた

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