彼が知らない《本当》の私

@toripuru310

彼との邂逅《序》

私は平凡な女の子だった。

中学生の時は毎日仲の良い女の子達と、下らないおしゃべりや可愛い物とかオシャレな事に、夢を見る普通の女の子だったのに。


高校に進学する時に、私が選んだ基準は《可愛い制服》だった。

ティーンエイジャー向けのファッション情報誌の特集で、可愛い制服の特集があって、高校生になったら可愛い制服を着て、お化粧やピアスとかでオシャレをして、原宿や渋谷に行くのが夢だったんだけど。


だから、仲の良かった友達(本当のお嬢)と、私達が行ける学力で制服が可愛いくて、ソコソコ名の通った私立の女子校へ進学した。

そして、それが間違いだったと気付くまでに、そんなに時間は掛からなかったんだ。


お嬢様学校で、ソコソコ知られている学校の校則が厳しいなんて、当たり前の事に入学するまで気が付かないなんて、、、

制服はスカートの丈から靴下まで統一されていて、変形なんてさせたら買い直し。

化粧なんてもっての外で、付けても良いのは、せいぜい発色の無いリップ位。

ピアスなんて開けようものなら、親の呼び出しと反省文が待っていた。


勿論、バイトの許可なんて降りる訳も無く、口紅さえ刺せないサツマイモやタマネギ、ピーマン達が可愛い制服を着てるだけのヤツらと一緒に、暗黒時代を過ごしたわ。

そういう私も、その中の1人だったのだけれど。

そして、こんな環境でしかも女しか居ないのに、彼氏を作るなんて奇跡の所業だった。


そんな、鬱屈した高校生活を終えて美術系の短大へ進学した私は、やっとお化粧をしたりピアスを開けたり彼氏を作ったりと、充実した毎日を送っていた《気が》していたんだけれど、、、

短大を卒業して、ソコソコ名の通った会社に就職して、お茶くみと雑用の日々に疑問を感じ始めていたの。

そんな中で、自問自答を繰り返していたんだけれど、やっぱり今の生活には自分自身が納得出来ていないことが分かったから、会社を辞めてこの専門学校へ通い始めた頃に、様々な偶然が重なり合って彼と出会うことが出来たんだ。


その学校は美術科と言っても、立て看板やポップ広告、果ては映画の看板や銭湯のペンキ絵にまで実務に特化した学校で、生徒は高卒が5割に社会人5割位だったかな。


私は、会社員時代は控えめなお化粧をしていたんだけれど、学生に戻った(それも専門学校生)ことから、短大時代の様に、周りに気を使わず自分の好きな自分を作っていったの。

髪は襟足を刈り上げたボブに、元々天然パーマだった頭髪だけれど、もっと細く巻いてウェーブを効かせてピアスも付けて、勿論それに合わせた服を着て学校へ行くと、高卒の女の子達からお化粧の仕方や、コーディネートについて、絡まれる様になってしまって、、、

そして、女子が集まると男子が集まって来るのは、必然的な摂理だったのです。


その中に、高卒の男の子達に混じって「アニキ」と呼ばれる年上のツッパリ君が居て。

頭髪はサイドバックにしたリーゼントに、サングラス見たいなメガネを掛けていて、所謂不良っぽい男子で、第一印象は「コイツには関わらないでおこう」だったっけ。

ツッパリ君は、改造したオートバイでブォンブォン言わせながら通学していて、同じグループに居た私は「今度、乗せて下さいね」なんて、社交辞令を言ったりしてたんだよね。


そんな中、私は高卒のある男の子に絡まれる様になっていたの、彼はいつの間にか、周りの男子達を牽制する様に私に纏わり付いて来る様になってしまっていて、、、

そんな私は、歳下には全く興味は持て無くて、どちらかと言えば、私を引っ張ってくれる年上の男性が好みだったんだけれど、、、

歳下君とは同じグループなので、険悪な空気は作りたく無かったから曖昧な返事をしていたら、いつの間にか登下校時には隣に居る様になってしまっていて、その上週末には映画とかに誘われるまでになっちゃって、、、

それも、皆が居る時に誘われるのと、周りに根回しされていたみたいで、断る雰囲気では無くなってしまっていたから、その場では了承してしまったのだけれど、、、


学校の行き帰りに使う駅は歳下君と同じだったので、無下に断ることも出来ず一緒に帰っていると、、、

ある時、ツッパリ君が自転車置き場から自転車を漕ぎ出すところに遭遇したんだ。


私は、今の歳下君と2人で居る状況を変えたいために、ツッパリ君に声を掛けることにしたの。

「あれ、今日はバイクじゃないんですか?」


彼は、私と歳下君とを交互に視線を巡らせると、面倒臭そうに呟いた、、、

「あぁ、バイクは免停なんで乗れないんだ」

そう言う彼に、それなら丁度良いじゃんとばかりに、

「じゃあ、一緒に帰りませんか?」

と、お願いをしたんだけれど、何かを勘違いしているのかなぁ?

自転車に跨って漕ぎ出そうとするのよ。

だから彼に【ちょっと待ってよ私を見捨てるつもりなの!!!】って感じを込めて詰め寄ると、シブシブながらも自転車を降りて、一緒に歩いてくれたので、ちょっとだけホッとした。


学校から駅までの道すがら、彼と歳下君と私の3人で、てくてくと歩いて行く。

歳下君も彼には一目置いている様で、「アニキ、アニキ」と持ち上げている。

そんな中、私は歳下君から週末に映画に誘われたことと、一緒に行きませんか?(行って下さい)と誘ったんだけれど、、、

その返事に、彼は面倒臭そうな顏をして、

「俺、罰金も払って金無いんだよね」

と、取り付く島もなかった。


それでも、彼に縋り付いたわ。

何でだろう?自分でも良く分からなかったけど?気が付くと歳下君のことは眼中に無かったのよね。

見た目、《危ないヤツ》なんだけど、話をしていると分かった。

彼は優しい。

社会を経験しているからか、歳下や年上とか年齢を気すること無く、自分を引くことが出来るのだというのが分かった。

だから、押したの。

押せば、彼は断らないって。

この時、私は彼が年上だって思ったし、それを疑うことも無かったんだよね、、、


そして私の押しの結果、ツッパリ君も週末の映画に来てくれることになったんだ。


私は当日、朝早くから起きて学校に行く以上に身嗜みに力を入れていた。

「う〜ん、完璧」

思わず、独りごちる。

鏡の中の私は、自分で見ても可愛いいと思う、けれど何でこんなに気合を入れてるのか?私にも分からなかったけれど。


そして、待ち合わせの新宿の映画館前に着くと、歳下君が既に居て挨拶を交わしていたら、程なくしてツッパリ君もやって来た。

いつものサイドバックのリーゼントに、スカジャンと履き潰されたジーパンにウエスタンブーツ。

それが、何だか妙に絵になって居て。


美術系の学生なので、私も歳下君もオシャレ系、そこにツッパリ君が、、、

きっと、周りの目からすると彼の方が異質だっんだろうけれど、私は彼に興味が湧いてきていたんだ。


3人で見た映画、はっきり言って内容は何が何だか、まるで覚えて無かったんだけどね。


映画館を出てこれからどうしようか?

歳下君はカラオケとかファミレスとか言ってたけれど、ツッパリ君は早々に、

「じゃあ、俺は帰るから」と、

そう言って、帰ろうとしてしまったの。

彼は、私と歳下君の関係を勘違いしてるみたい。

なので私も、「私も今日は用事があるから帰りますね」とツッパリ君に聞こえる様に返事をしたわ。

その言葉を言い終える前に彼は踵を返して歩き始めちゃったんだけどね。

そして、私も駅へ向かって歩き始める。

ツッパリ君の後10m程を、何人かの通行人を間に置いて付いて行った。

歳下君は映画館の前で黄昏れていたけれど、その後どうしたのかは知らないし興味も無かったし。


映画館が見えなくなって、彼が地下鉄の入口を降りて行く、私は前に居る人を躱して彼との距離を詰めると、

「一緒に帰りましょう」

そう言って、私は彼の隣に寄り添う様に並ぶのだった。


彼は一瞬ドキリとした顏をした後で、

「アイツはどうしたの?」

と聞いて来たわ。


だから、

「映画館の前で別れました」

と、彼の隣でにこやかに答える私に、怪訝な目を向けた彼の口から、

「用事は?」


と、聞かれたから、素直に、

「用事なんて無いですよ(貴方以外にはね)」

って、答えると凄い変な顏で睨まれたわ。


ん、、、どうしてそんな目で見るの???


私から、ファミレスに誘ったんだけれど、てっきり断られると思っていたのに、すんなりOKを貰えるとは、、、


ファミレスに入って、席に着いて早々に私は頭を下げた。

「ゴメンナサイ」

「私、歳下とか興味無いんだけど、彼に皆の前で誘われて、断るのも何だし2人で行くのは嫌だし、と、思ってたら貴方が居たので巻き込みました」

と、素直に謝ることにした。

そして、無理に誘ったお返しに、この場は奢らせて欲しいと言うと、それを受けた上で私を立てる様にドリバだけを頼むカレ。


何でか、彼との会話はスルスルと言葉が出て来るのよね???

学校の話や彼のオートバイの話、私の方から言葉が紡がれて、それに優しく答えてくれる彼。

何とも心地よい空間に、彼との相性の良さ?見たいなものが感じられたの。

尤も、彼がどう感じているかは分からないけれど、、、

そんな会話の中で、私から例の歳下君には、何の感情も持っていないことだけは伝えることが出来たわ。


翌日、学校の最寄り駅に着くと、いつもの場所に歳下君が居るのが見えた。

ちょっと、ため息が漏れる。

2人で学校まで歩いていると、自転車に乗ったツッパリ君が信号待ちをしているので、私から近寄って話し掛けてみた。

「あっ、まだ自転車なんですか?」

そう言って、私は彼の横に並ぶと彼と一緒に歩き始める。

年下君のことはもう頭に無かった。

「いつ、オートバイに乗せてくれますか?」

そう問いかける私に、テンプレで返す彼。

「免停が明けたらね」

むぅ、完全に躱されてる。

でも、逃さない。

なので、追撃です!

「免停って、いつ終わるんですか?」

眉間に皺を寄せながらまじまじと見つめ返されてしまった。



それから暫くたったある日、私は自宅から近い駅で彼を待っていました。

遠くで、改造車特有のブゥォンブゥォンと言う音が聞こえ始めると、その音が段々と近付いてくるんだけど、まさかね???

でも、そのまさかでした。

そして、一台の五月蝿いオートバイが私の前で止まったの。

彼がヘルメットを脱いでエンジンを切ると、途端に辺りに静寂が戻っていった。


そして、私達がお互いに挨拶を交わした後で、彼は私にヘルメットを着けてくれたんだけれど、髪の毛が視界に入らない様にとか、髪が金具に絡まないかとかを気にしなから、丁寧に被せてくれたわ。

ちょっとだけ心がキュンとしてしまった。

そして、彼もヘルメットを被ると私を後のシートに乗せてくれた。

「走り出したら、荷物になっててね、カーブで俺と一緒に動かなくていいから、それとオレの肩と腰をしっかり掴んでてな」

そう言うと、彼はエンジンを掛けて走り出したの。


《オートバイ》それは安全装置が付いて無いジェットコースターだった。

私も自転車に乗るから、曲がる時には傾けなきゃ曲がらないことは知ってるけど、オートバイは全くの別もの。

先ずはスピードが桁外れで、カーブでは転倒するかと思う位倒れるのに、カーブの終わりではスッと戻るのよね。

何か分からないけど感動。


すると彼が、

「まだ、遠いけど白バイが後に居るから離れるよ。しっかり捕まってて」

そう言うと、速度をドンドンと上げて行く。

カーブの途中の凸凹でバイクが跳ねた時は冷やっとしたけれど、、、


その時、後の方でサイレンが無ったの。

そうしたら、彼は更にスピードを上げて、サイレンが少し遠ざかったんだけれど、その先で信号待ちの車の列があって、その間をすり抜けてる間に、白バイは反対車線から追い越して行ったわ。

その時に、「そこのオートバイ止まりなさい」と言って。


信号機の下で待ち構えていた白バイのお巡りさん。

彼はヘルメットを取ると免許証を渡し、威嚇するような目つきでお巡りさんを睨んでいる。

これじゃあ、お巡りさんだって厳しい態度になっちゃうよね。

だから、私が間に入ったの。

「ごめんなさい」

私が素直に謝ると、お巡りさんの貌に笑顔が見えたわ。


「オレがスピードを計れ無い様に走ってたろ、だから計れて無い。サイレンを鳴らして止めたのは、後の女の子が落ちそうになってたからだ」

そう言ったお巡りさんに、あからさまにホッとした顔をする彼。

「でもな、このバイク違法改造だらけじゃないのか?いくらでもキップを切れそうだな」

そう言われて下を向く彼。

「まぁ、今回は彼女に免じて勘弁してやる。お前も彼女みたいに素直に謝れれば良いこともあると思うぞ」

そう言って免許証を彼に返した後、颯爽と走り去って行くお巡りさん。

ここで、私もヘルメットを脱いで一休み。

すると彼が、

「ありがとう。助かったよ」

って、にこやかな笑顔。

その貌を初めにしてたら良いんじゃないの?

なんて思ったりした。


その後は順調に過ぎて行ったわ。

箱根を回って、芦ノ湖でブラックバス定食なる物を、食べる食べ無いで大騒ぎをしたり、ソフトクリームを2ッ買ったら、1ッの方がクリームだけ落ちちゃって、しょうがないから1ッを分けあって食べたり。

楽しい時間はあっと言う間に過ぎ去って行って、気が付くと家の近くまで来ていたの。


名残惜しくて、近くのファミレスに入ったけど、私ったら舞い上がっちゃって、ずっと話続けてたわ。

それを、優しい目をしながらじっと聞いていてくれる彼、心地良い時間が流れて行く。

そして、別れの時。

ファミレスの外で見送る私と、遠ざかっつて行くエンジンの音。

ふと、彼の隣に居たいな。

そう思った。

彼の隣はとても居心地が良かったから。


そして翌日以降、私から彼に絡む様に近付いて行った。

この時の私は、例の年下君のことなどもう眼中に無くなっていたわ。

科目の合間の短い休憩時間さえも、当然お昼休みも彼の隣に行くようになってた。

そして、彼もそんな私を受け入れてくれたようだった。

そんなある日、昼食を終えて一服しようとした時、彼のタバコが切れてしまったみたい。

タバコを買いに行こうとする彼に、

「私ので良い?」

と声を掛けてみた。

すると

「あぁ、時間も無いから助かる」

そう言って彼は一度立ち上がったベンチへ再び腰を掛けたの。

私の持っているタバコは、彼の吸っているタバコよりも数段軽いタバコだったけれど、私はそれをおもむろに口に咥えて火を着けると、彼にそのタバコを手渡した。

すると、彼は吸口に口紅の付いたタバコを無造作に咥えて、美味しそうに吸い出したの。

彼は全然気にして無いのに、渡した私の方がドキドキして、バカ見たいだったっけ。


そんな日々が続いたある日、例の年下君から学校の帰りに時間を作って欲しいと頼まれた。

何の事かは大体想像は付いたので、その日は彼に絡まず年下君と2人で帰って行ったんだ。

途中、公園へ寄り道をしようと言った年下君に付いて行く私。

人気の無いとこで告白をされたけれど、私はこの年下君を何とも思って無い。

その場で断っても良かったんだけれど、それじゃあ余りにも、、、

だったので返事は保留にしたの。


私達はその公園で別れて、別々の出口へ向かって歩き出す。

すると、私の前方に同じグループでジャニ系の年下イケメン君が待って居た。

「アイツが今日告るって事前に牽制して来たけど、どうしたの?」

そう聞いて来たんで、

「保留にして、返事は待ってもらったよ」

と返事をしたら、

「それじゃあ、オレと付き合ってよ」

と言われたの、、、

ちょっと訳が解らない。

なので、ジャニ男も保留した。


翌日、彼に2人から告白されたことを告げたわ。

「私、あの歳下男君ともう1人別の歳下男君(ジャニーズ系イケメン)から、付き合ってって言われたんだけど、何て答えたら良いと思う?」


彼等には悪い事かも知れないけれど、どの道お断りするのだから、有意義に使わせて貰うことにした。

そしたら、彼ってば少し慌ててる。

ちょっと、もしかして、脈ありかも???


そうしたら、

「断われば良いじゃん、、、」

って、、、


私が少し黙っていると、

「そんでさ、俺とつき合うか?」

って、、、

なんて、なんて、なんてこと。


私は、間髪を入れずに答えたわ。

「うん!」って、


そして、その足で年下の2人には《お断り》をしてきたの。


その日の帰り、彼はオートバイを学校に置いて、2人で歩いて帰った。

途中、散歩が出来る大きな公園で話ながら歩いでいると、彼が背中に手を回してきたので、彼を見上げる様な格好になってしまって、、、

彼も私も、目と目が合うものだから、私は目をつぶったの。


そうしたら、彼と私の唇が重なった。

案の定、彼は手の早い男だった。


この日の夜、私は久しぶりに自分で自分を慰めた。

女にだって性欲はある。

もちろん、それは例え処女だったとしてもね。


でも私の性欲は、そんなに強くない方だ。と思う?

だって、何ヶ月もしなくても平気なんだから。

そして彼とのキス、久しぶりな異性とのスキンシップに身体が疼いた。


彼に抱かれる妄想を描きながら、左手で乳房を覆い乳首を弄ると、桜色の蕾はしこりの様に硬くなってゆく。

右手は自然と女の部分に分け入り慰め始めた。

処女だった頃は、その入口辺りをおっかなびっくり弄るだけだったけれど、今はその感覚に導かれるまま奥へ々々と分け入って行く。


そして私は、彼に抱かれる妄想に包まれて、彼との始めてを夢想しながら眠りに堕ちて行くのだった。










































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