とんでも姫の冒険者育成記
菊武
第0話 幼少期
「ねえ、イクト。あなたは大きくなったら何になりたいの?」
幼い少女は同じく幼い少年に疑問を投げかけた。
「それはもちろん冒険者さ。冒険者になって活躍して、いつかはドラゴンすら倒せるような冒険者になってやる!」
「ふーん、ドラゴンを倒せたら英雄だね。」
「そうだな。そう言うユイナは?」
「私?私は……。」
私の将来は決まっている。
きっとどこかの有力な王公貴族と政略結婚をする事になる。
それがこの国ユータランティアの姫として生まれた私の運命。
けれどイクトはそんな事は知らない。
だって彼は私が城から抜け出した姫だと知らないんだから。
「そっか、まだ決まってないんだね。」
私の無言をまだ将来の夢が決まってないと解釈したのだろう。
「だったら何にでもなれるよ!まだ決まってないって事はその可能性は無限大だから!」
両手を広げて明るくそう言うイクトの笑顔の眩しさと、彼の自由な未来への妬ましさから顔を背けてしまう。
けれどイクトはそんな事はお構い無しだ。
「ねえ、大人になって、もし良かったら……僕と結婚してくれる?冒険者になっていっぱい頑張るから、その時にユイナが僕と結婚して隣に居てくれたら嬉しいな。それが僕の夢。」
真っ直ぐに私を見つめそう言うイクトの顔からさっきとは別の理由で顔を背けてしまう。私の顔は今真っ赤だろう。
イクトがそう思っていてくれて嬉しいと思う反面、自分の姫としての立場からそれは適わないという現実で悲しくなる。
私はイクトの事を好きだったんだ……
「まだ先の事だし無理にとは言わないよ。けどユイナ。君に僕を好きになって貰う。その努力だけはずっと続けるよ。それだけは覚えていて。」
その真っ直ぐな言葉に耳まで真っ赤になるのを自覚しながらも彼の顔をそっと見ると
「好きだよ。」
そう言うイクトの顔も真っ赤だった。
駄目だ。私は完全にイクトの事が好きだ
声に出しては言う事は出来ない。けれどもこの時に私の夢は決まった。それは
"イクトのお嫁さん"
それを実現する為にはどうすれば良いのか?そう可能性は無限大なんだ。
まだ時間はある。どうにかして実現してみせる!
心の中でそう誓うユイナであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます