第16話 りふれっしゅ



キーンコーンカーンコーン…


「…辞め。解答を後ろから集めて」


先生の辞めの号令で英語のテストが終わる。


やっと長い長いテスト週間が終わった。


先生が号令をかけると、クラスはみんなの色んな声で騒がしくなった。


すると隣の席の涼が結仁に真っ先に話しかけてきた。


「お疲れ!最後の英語、どうだった?」


涼はどこか満足気に話している。

上手くいったのだろう。


「んー。まあよく出来た方かも」


結仁も少し自慢気に話す。


茉白との勉強がかなり効果があったからだ。


「まじ?俺も今回はいけそうな気がしてる!」


嬉しそうに話す涼。

すると出題問題を見せてきた。


「ほら!ここの問題とかさ…」


結仁に問題の答えを確認する。

テスト直後あるあるだ。


すると結仁は思い出したように言った。


「…って、志穏は?」


涼の奥側を見ると、そこには机に突っ伏して意気消沈とした志穏がいた。


かなり出来なかったらしい。


いくら中学の範囲が混ざってると言えど、今回のテストは応用が利き過ぎていたため難しかった。


さすがに仕方がない。


先生が教室を出ると、結仁と涼は立ち上がり志穏のところへ向かった。


「…おい、志穏。大丈夫か?」


「ん〜。今回ばかりはしんだ…大丈夫じゃない〜」


結仁の呼び掛けに志穏はかなり落ち込んだ声で言った。


すると涼が茶化す。


「まっ、勉強中にゲームしたりするからじゃない?(笑)」


「うるさ〜い!励ましに来たのかからかいに来たのかどっちなの(笑)」


すると志穏は次第に明るくなり、やがていつも通り元気になった。


「ん〜まあもう終わっちゃった事だし仕方がないよね〜」


どうやら開き直ったようだ。


すると涼が思い付いたように言った。


「…そうだ!せっかくテストも終わったし、どっかでお疲れ会しよーぜ」


「え!いいねいいね!結仁も行くよね?」


志穏は即答で涼の提案に賛成すると、結仁の方を見た。


「俺も行く。さすがに今回は疲れたしな」


「じゃあ、もう放課後だし早く支度して行こうぜ!」


三人はすぐ支度を済ませ昇降口へ向かった。


「…で、涼。どこに行こうとか決まってるのか?」


結仁が聞くと涼は笑顔で答えた。


「全く決まってないよ。二人はどうしたい?」


結仁と志穏に問いかけた。


「俺はゆっくりしたいかな」


「私も今日はゆっくりしたい〜」


二人は涼にそう言うと、


「確かに俺もゆっくりしたいかも、じゃあいつものところじゃなくて、この前行ったカフェ行かね?」


涼は考えて言うと提案した。


「賛成〜!そこだとゆっくり出来そうだし〜」


「いいな。そこにしないか?」


二人は賛成すると、


「二人とも気に入ってくれたみたいで良かった!じゃあそこにしよう!」


涼が歩き出す。

二人は涼を追いかけながら、正門を出た。


「外、もう冬になってきたな…」


涼が手を擦り合わせながら言った。


「ほんと、1年終わっちゃうよ。早いよね〜」


11月半ば。

秋が過ぎ、冬がやってきている。

外は、冬の寒さで三人の体温を奪う。


「あっという間に12月入るもんな」


結仁は少し白い息を吐きながら言う。


「あっ、結仁息白い〜!」


「えっ、もうそんな寒かったっけ…」


涼と志穏が結仁の方を見て笑っている。


そんな他愛の無い話を続けているとあっという間にカフェに着いた。


カフェの雰囲気は前と何も変わらない。


カフェの入り口には、一足先にクリスマスリースが飾られ、また静かな雰囲気が漂っていた。

涼がドアを開けると、中から心地よい香りと共に暖かさを結仁達の身体を包んだ。


前と同じ席に掛ける。


「ドアにクリスマスリース…早いな」


結仁は意外そうに言うと、志穏が言い出した。


「…クリスマスと言えば、三人で何かしない?」


「いいねいいね!パーティしようよ!」


涼も志穏の提案に食いつく。


「また結仁の家でやろーよ!私の家親いるし…」


「俺の家も親と兄妹いるし…」


二人はそう言うと笑った。


「「ってことでクリパは結仁の家でっ!!」」


二人の声がハモる。

何かとやることが被る二人に結仁は笑った。


「本当に涼と志穏は仲良しだな」


「そりゃ仲良しだし、結仁も例外じゃないからな?」


「そうだそうだ〜!例外じゃないぞ〜!」


そう言うと三人は笑った。


話が一段落付いたところで店員を呼ぶ。


三人はいつも通り、


涼はアイスコーヒー

志穏はココア

結仁はカフェラテ


を頼む。


しばらくすると頼んだ飲み物が来た。


結仁は静かにカフェラテを飲む。


昼下がり、太陽は冬の空気を切り裂くように燦々と輝いている。


窓の外では木枯らしが吹き、木々の火照った葉を落としている。


秋もあっという間に終わる。


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