相手を間違えた幽霊

天川裕司

相手を間違えた幽霊

タイトル:相手を間違えた幽霊


私は地方から上京してきたOL。

お金がなかったから安いアパートを探しまわり、

やっとこのアパートを見つけた。


私が上京した時、グッドタイミングで

前のオーナーが引っ越してくれたんだ。

「よかったぁ〜」と思い、早速、私はそのアパートへ。


でもここへ来てから不思議なことが起きたのだ。

不思議というか恐怖。


寝ていたら、急に棚がガタガタ震え出したり、

誰もいないのにベランダの戸がガタガタなったり、

風呂場のほうからコーン、コーンと音が聞こえた

と思って行ってみたら誰もいなかったり。

何やら心霊現象のようなものが起き始めていた。


「もしかして前のオーナーが引っ越したのもこんなことがあったから…?」

とすぐに思った。

「もしかしてここ、事故物件…?」

こんな事もなにげに思う。


それからある日の夜。

ついにそれまで私を悩ませ続けたその不安と恐怖が

形となって現れた。


「きゃあアァ!!」


女の幽霊「…お前ぇ、よくも私を捨ててくれたなぁ…復讐をするためにここにやってきたぁ…又こうして姿を現したからには覚悟し…………」


おどろおどろしい声がそこで止まった。

それからじーっと、

私のほうを確認するように見てきた女の幽霊。


「な、な、な、なに…?なんなの…?」

私は恐怖におののく。


でも途中から目をぱちくりさせながらその幽霊は、

フッと凄んでいたその姿勢を緩めた。


女の幽霊「お前じゃない。なんでお前になってるんだ?ここにいた住人はお前じゃなかったはず…」


「え…?え??」


それから落ち着いて話を聞くと、

どうも前のオーナーに恨みがあったらしい。

前のオーナーは男性で、

その男性にひどい形で捨てられたとか。


思えば、私が引っ越してきた時はグッドタイミング過ぎた。

上京してきたその日にその男性が引っ越したらしく、

向こうの不動産屋も急いでたからか、

私がその部屋に住みたいと言ったらすぐに住まわせてくれた。

敷金礼金もなしで。


そして幽霊曰く、

部屋の中の家具を動かしたり戸をガタガタ揺らしたりする時、

それに集中するあまり、

部屋の住人を目で確認することはできないらしい。


だから前のオーナーである男性が

引っ越したことを彼女は知らなかった。

引っ越しがあったことも知らなかったらしく、

昨夜と同じように今夜も出てきて、

今度は私を怯えさせようとしたようだ。相手を間違えたまま。


でも恐怖は恐怖。


「わ、わ、私をどうするの!?」

女の幽霊「だからお前じゃない。あっちいけ」


このとき言った「あっちいけ」とは「どっか行け」、

すなわち、引っ越してまた別の場所へ行けと言う事。


私はそれからも変わらずこのアパートに住んでるが、

あの女の幽霊が二度と現れる事はなかった。

彼をちゃんと追って行けたんだろうか?

初めて幽霊に対し、そんな事を心配してしまった私。


それに、

「幽霊にどっか行けなんて言われたの初めてだ…」

幽霊もとりあえず相手をちゃんと選ぶものなのか。

この辺りの神秘を目の当たりにしたその時の私だ。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=14N-PrfWBWg

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相手を間違えた幽霊 天川裕司 @tenkawayuji

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