プラモデル

天川裕司

プラモデル

タイトル:プラモデル


俺は子供の時からプラモデルが大好きだった。

模型、ひと言で言えば模型だけど、俺の中でそれは動くのだ。


「ハハ♪飛んでる飛んでる、動いてる動いてる」


これまで作り上げてきた車や飛行機のプラモデルは、

俺の部屋にたくさん置かれている。

俺の夢は模型店・プラモデル店を開くことだった。


両親が早くに他界してしまい、それから俺はガムシャラに働き、

それなりの学士も取り、店を開けるだけの資格も取り、

本当に開店しようと思っていた。


でもやはり資金が足りず、自宅を改装したここ1階で

プラモデルを並べるだけに終わってしまった。


誰も来ないプラモデル店。

俺は少し、人生にあきらめを感じていた。

この世での成功、これを諦めていた。


「…でも、これでもいいんだ。俺は満足だ。だってこれまで俺が作ってきたプラモデルがまるで命を持って動いてくれて、俺だけでも十分に楽しませてくれるんだから」


このプラモデルは誰かに見せても

普通のプラモデルに見えてしまう。

動いているようには見えないのだ。


だから誰も来てくれない。

近所の子供たちもやがて成長し、働き始め、

みんな散り散りに遠くへ行ってしまった。

昔は、そんな子供たちでもちらほら来てくれていたんだが。


「…ふあ、あ、寝てたのか…」


プラモデルを眺めながら在宅ワークをし、

眺めるのに少し飽きたり疲れてきたら

その場で寝てしまう。

そんな毎日の繰り返し。


でもある時、不思議なことが起きたんだ。

同じように眠ってしまい、ふと起きたとき…


謎の老人「よー寝てたなぁ。イイ夢見たか?」

「うわっ!?あんた誰!?」


もはや誰も来ないはずの俺の家に、

1人の老人が立っていた。


謎の老人「誰って初めからここにいたよ。まぁ姿を見せんかったから気づかれないのも無理は無いかなw」


心底、驚いた。驚いたと言うより恐怖した。


「あ、あんた、何しにここへ…?」

謎の老人「もう分かっとるじゃろ。お前に夢を見せるためにさ」


俺はふと思い出す。

そう言えば眠気が来た頃に、俺はあの現象を見ていた。

車のプラモデルが動き出したり、飛行機の模型が空中を飛んだり。


「もしかしてあんたが…」


それから数年が過ぎた。

俺の家、兼プラモデル店には、

ちょくちょくお客さんが来るようになっていた。

感謝なこと。

たとえ模型を買ってくれなくても、見てくれるだけで嬉しい。

でも来てくれる彼らに、俺の姿は見えなかったようだ。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=4HES_AhfRyA

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プラモデル 天川裕司 @tenkawayuji

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