異世界を滅ぼした魔王は転生先の現代でダンジョン攻略を楽しむはずだった~最大難易度のダンジョンに見覚えしかない…アッ!これ私が前世で作った奴だ~
蒼本栗谷
第1話 前世
パソコンを起動する、次にツクミル動画を立ち上げる。
画面一杯に現れる動画・配信。
その中で私は人気急上昇1位の配信をクリックする。
コメントが右から左へ流れていく。画面には2人の男女。いわゆる、カップル配信者というもの。
薄暗い通路を歩く彼らは人ならざるもの――モンスターを倒していく。
それを視聴しつつ私はコメントを打ち込む。
[こんばんはりっちゃん、りんちゃん、今日は何処の何層を攻略中ですか?]
『こんばんはです。ワタシ達は今難易度★4のフレイムダンジョンの5層を攻略中です』
『リン、強化お願い』
『はい! 任せてください。彼に力を!』
『さっさと終わらせる!』
[さくさく倒してくのやっぱ爽快感すげぇわ。流石リツリン!]
[りっちゃんに踏まれたい……]
[変態がいますねぇ]
流れていくコメントの中、彼らは変わらずモンスターを倒していく。女性、リンは魔法杖を使い男性、リツに補助や回復を施していく。リツは短剣でモンスターを倒していく。
その光景が綺麗で、眩しいと感じました。
私は、
正確には、
私は
私の前世はイージャという至って普通な人間でした。否、人間
何故人間の私が魔王に? となるでしょう。正確な記憶はなく曖昧な記憶しかありませんが、人間だった時の私には家族がいました。普通の家庭だったのでしょう。
私の家族はモンスターに殺されました。なんとなくそこにいたから、意味すらない理由で殺されたようです。
私はその場にいませんでした。私もその場にいたのならば殺されて、イージャの人生は平穏に終わっていたのでしょう。ですが私はその場にいなかった。これが悪夢の始まりだったのかもしれません。
帰宅した私はモンスターに見つかり捕まりました。彼らは言いました。『魔王を作ろう』と。過去に存在していた魔王の代わりとして私はその役目に選ばれてしまったようでした。魔王にする為の贄。彼らは私に沢山の呪いを授けました。
『魔王に人間の感情は必要ない』
『王様は無慈悲で、残虐なお方なのだ! そのお方になれることを名誉に思うがいい!』
『魔王に相応しい存在にしてやろう』
『王様は強いんだ。そうだ、改造してやろう、あぁ、王様、王様!』
あの時の私は10歳になったばかりでした。10歳に味合わせる経験ではないのでは? と私は今になり思いました。
イージャという僕の心を、人間として当たり前の感情を呪いによって消されました。肉体も改造されました。改造されモンスターに成り果てた私に人間の原型を残されたのは温情なのか、意味があってなのか。
呪いによって僕が消え私になりました。無慈悲で残虐な魔物の王。その理想を押し付けられた人間から魔王である私へと。
そして魔王になった後も呪いは授けられました。僕という人間が抵抗できない様に相手の意思でしか動けない呪いを。
それを授けられた存在は魔王と呼べるのでしょうか? 彼らは特に気にしている様子はありませんでしたが。魔王という肩書さえあれば彼らは満足していましたので。
そうして私が魔王になった結末は、人間がモンスターを討伐するという有利だった時代から、モンスターと奴隷として生かされる人間だけが存在する世界に変貌しました――。
「思い返せば思い返す程、私でなくとも良いのでは? となる前世でしたね。それにしてもリツとリンの能力はとても良い。攻撃と補助、回復により2人で攻略が可能というのは前世では見ない光景でしたね」
画面では変わらずコメントが流れ、それを時折答えながらダンジョンを進んでいく2人。
楽しそうで綺麗で眩しい光景。皆から愛される輝かしい
「いつか私も――僕も
喉にある傷を触りました。最期の最後に僕の意思が通せた自由。
恨まれるより、愛されたい。憎まれるより、頼られたい。――自由になりたい。
魔王がこのような思考を持ってはいけない、いけないのですが……想うだけは赦してください。
私は、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます