第12話

 レベル:267

 名前:無し

 種族:スライム

 スキル:超音波Lv10、嗅覚強化Lv10、暗視Lv10、不意打ちLv10、打撃攻撃耐性(小)Lv10、聴覚強化Lv8、聖魔法耐性(極小)、毒生成Lv10、毒耐性Lv10、糸生成Lv10、噛みつきLv10、打撃攻撃Lv10、ファイヤーボールLv7、ウォーターボールLv8、隠密、俊敏Lv2、威圧、痛み耐性、農家Lv3、農具扱いLv2

 ユニークスキル:強奪

 称号:転生者


 心の中で思った通り、期待せずにゴブリン達に殺された人間たちの死体のスキルを奪っていった結果、期待してなくて正解だったと言うべきか、多少スキルは増えたけど、スライムの俺の役に立つとは思えないスキルばかりだった。

 村の人達に殺されたゴブリン達の方のスキルも余すことなく奪っていったのだが、全部持っているスキルで、レア? なのも無かったみたいでいくら強奪スキルを発動させても【強奪できるスキルを確認出来ませんでした】と頭の中で声が響くだけだった。

 ……この村の人たちには悪いけど、俺にとっては人殺しのチュートリアルの為だけに存在した村だな、ここは。

 実質得られたものは本当にそれだけだし。


 そろそろ生きているゴブリン達も始末するか。

 ……いや、本当にそれでいいのか? よく考えたら、さっき村から逃がされた子供……はともかくとして、女性の人たちは村にゴブリンが襲いに来たことを報告するんじゃないのか? 肉親だっていただろうし、自分たちに無理なら金を払ってでも誰かに報復して欲しい、と考えると思う。


 ……これ、俺がここにいるゴブリン達を殺したら、この数のゴブリン達を殺せるような存在がこの森には潜んでいると思われて、討伐隊でも組まれて面倒なことになるんじゃないのか?

 たかがゴブリンだし、仮に俺がここにいるゴブリン達を全員始末したとしても、誰かが一人で全員を始末したとは考えられないかもしれないが、この世界のことなんて少し知ったような気になっているだけで、俺はまだ全然何も知らないんだ。

 なにかそういうのを特定する魔法だったりスキルだったりがあるかもしれないし、安全に行くのなら、ここのゴブリン達は無視した方がいい、よな。

 ……正直、人間たちにとって今の俺の力がどんなものかなんて全然分からないし、このままゴブリン達は放置してこの場を去るか。


 ……本当にここは俺にとっての人殺しチュートリアル村だったな。経験値まで手に入れられないなんてな。


(はぁ)


 内心で溜息をつきながら、俺は念の為、さっきの女、子供が逃げた方向とは違う方向に歩き出した。

 歩くと言っても、俺はスライムだからか、素早く移動できる訳では無い。

 一応、ぴょんぴょん飛び跳ねながら動けば当然速度は早くなるし、少し前、スケルトンに殺されそうになった時だってそんな感じで避けたしな。

 なんでこんなことを今思ったのかと言うと、後ろの方からゴブリン達の悲鳴が聞こえてきたからだ。

 ……生き残っている村人がいて、覚醒した。……なんてことがあるわけが無い。

 ここからじゃ村の様子が見えないから確かなことは分からないが、俺は俺の予想が当たったんだと思う。

 逃げたのは女、子供だったのに随分早いな、とは思うけど、それだけ近くに街があるってことなんだろう。

 魔物である俺がそっちに向かってたりなんかしてたら、いきなり敵対してたかもしれないし、やっぱり村から逃がされた女、子供が向かった方には行かなくてよかったな。


 正直、一体誰がどんな感じにゴブリンを倒しているのかは気になるが、今はこの好奇心を押えて、さっさと村から離れよう。

 何人いるかも分からないし、もしも見つかりでもしたら、その人間の強さ次第では俺は一気にピンチに陥ってしまう。

 一応隠密や俊敏といったスキルはあるが、どっちもレベルが低いし、そうなってしまったら逃げられるか分からないからな。

 俺の根元にある気持ちは死にたくない、って気持ちなんだ。慎重に行くべきだろう。魔物として生きていくと覚悟を決められたのもこの気持ちのおかげだしな。

 ……まぁ、そんな気持ちが根元にあっても、あの洞窟の奥にいた存在の魅力には何故か叶わなかったんだけどな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る