第28話歩んだ道の違い

それで私の家庭には関係ない。

私にも私の温もりがあった。

追い続けられ、追われた時間

町へ町へ渡り、誰も知らない

場所まで引っ越しの繰り返し。

名前を知られたら別の場所へ

身を隠しながら私は生きて来た。

普通の家庭を過ごしたかっただけなのに

私のパパを知ってる人達が許せなかった

どうしても

何気ない普通の家庭に憧れてたのに。

全部あんた達のせいよ。


あなたは良いわよね。まだ。

追われてて行く所、行く所

周りから犯罪呼ばわれされて

身内の事を馬鹿にされて

生きてた。


でも俺は捨てられたんだぞ。

両親から突然連絡も取れず、

行き先も知らず。突然。

俺は幸せの家庭なんてなかったんだ。

兄さんだって、最近まで連絡が

取れてなかったんだ。

俺はずっと一人だった。


その話は前にも聞いたけど。


分からないですか?

星空さんが彼を救い手を差し伸べた

あなたには母親がいたけど、

彼には何も無かったんですよ。

握れる手が。支えになるものが。

あなたと進んできた道は違う。

同じ父親の血が流れていたとしても。

それでも必死に生きて、星空さんに

全て自分の運命を託したんです。

一度しか会わなかったとしても

その時の彼には星空さんしか

見えなかった。

希望があの瞬間にはあった。

だからこそ今でも星空さんの事を思って

守ろうとしている。


たった少しでも、ほんのわずかな

小さなカケラだったとしても、

それだけを支えにずっと生きて来た。

あなたにはそんな人生は無かったんですか


生きる希望。心の支え。


恨むなら恨むでいい。

でもその原因なった人に

自分が歩んだ事と同じにしようとしても

いつかそれは、

無限の連鎖の始まりに過ぎない。

それこそ自分が支えになった人

を傷つければまた同じような人が現れる。



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