第1章:暗闇の中の少年

名門私立小学校、000。この学校は古風な建築物と美しい庭園に囲まれている。レンガ造りの建物は時が経ってもその品格を失わず、校庭には数百年の歴史を持つ桜の木が春になると薄紅色の花びらを舞い散らし、静かな美しさを誇っている。




教室の窓から見える青い空と暖かい日差しが学校全体を明るく照らしている。運動場で遊ぶ子供たちの笑い声は平和で明るい。




しかし、ヨウタの心はその明るい風景とは対照的だった。




ヨウタは暗い廊下を一人で歩いていた。彼の足取りは重く、顔には深い悲しみと疲れが漂っていた。冷たい壁を手探りで歩く彼の姿は、まるで牢獄に閉じ込められた罪人のようだった。彼の瞳は生気を失い、陰気な顔には絶望の影が濃く映っていた。




ヨウタの内面は終わりのない絶望の闇に沈んでいた。




廊下の古い木の床は歩くたびにきしみ、壁には古い絵が掛かっていた。その絵は華やかな過去を誇示していたが、ヨウタにとってはただの遠い過去の遺物に過ぎなかった。廊下の照明は薄暗い光を放ち、闇をかろうじて追い払っていた。




他の子供たちはヨウタを見ながら囁いた。




「あそこを通るのがヨウタだよね? 本当に雰囲気が変だ…」


「あの子、またいじめられたんだって?」


「どうしてあんな子がこの学校に通えるのかしら?」


「はは…そんなこと言わないで、かわいそうじゃない?」




ヨウタはその囁きが胸を刺す刃のように感じた。彼の内面深くでは、孤独と苦痛が渦巻いていた。彼は頭を垂れて、さらに速い足取りでトイレに向かった。彼の心の中にはもう希望は残っていなかった。




トイレのドアを開けて中に入ったヨウタは、ドアをロックした。清潔に保たれたタイルの床は光り輝き、鏡は透明に映っていた。トイレの内部は一片の汚れもなく、爽やかな香りが漂っていた。




ヨウタは便器に座り、ポケットから取り出した小さな本を広げた。それは大学生が読むような経済、経営、数学、考古学の本だった。彼は深いため息をついて本を読み始めたが、文字は彼の目に入らなかった。心の中で響く孤独と苦痛が彼を押しつぶしていた。




ヨウタは音もなく涙を流した。涙が頬を伝って本の上に落ちた。彼の手は震え、体は冷たい床の冷気を感じてさらに縮こまった。彼の涙はゆっくりと、そして絶え間なく流れ落ちた。どれほど泣いただろうか、やがて心が落ち着き始めた。このような状況にも慣れてきたようだった。しかし、その慣れはヨウタをさらに深い絶望へと追い込んでいた。




突然、彼は狂ったように笑い出した。その笑い声はトイレの壁にぶつかってこだました。




「もう少し耐えれば…必ず僕が成長して、あいつらを僕の足元で好きなように転がしてやる…ハハハ!!!」




その笑いの中で、ヨウタの目にはまだ涙があふれていた。彼の笑いは絶望と怒りの混合物だった。彼の声は震え、目は鋭く光っていた。




「僕には夢がある。いつか必ず僕の綿密な経営計画で成功して、権力を握って、あいつらを僕の足元で好きなように転がしてやる!!! もう少し耐えればいいんだ…もう少し…どんなに辛くても…そしたら両親も僕を見に来てくれるはずだ…」




ヨウタの真剣で悲しい表情が現れた。彼の手は震え、涙は止まらなかった。彼は本を閉じ、顔を上げた。涙が頬を伝って流れていた。彼の内面深くから湧き上がる孤独と悲しみがもう抑えられなかった。




突然、ヨウタの頭上から冷たい水が降り注いだ。彼の服はびしょ濡れになり、本も同様だった。外からは子供たちの嘲笑混じりの声が聞こえてきた。




「おい、ちょっとやり過ぎじゃないか?」


「ハハ…これくらいはしないと…ハハ」




ヨウタは体を震わせながら立ち上がった。濡れた服と本を持ってトイレを出た。廊下に出ると、水滴を拭く暇もなく歩き続けた。彼の服から水がぽたぽたと落ちた。その姿を見て廊下にいた子供たちは様々な反応を示した。ヨウタの目には、皆が彼を嘲笑したり、視線を避けているように見えた。彼の顔は青ざめ、唇は震えていた。




教室に戻ったヨウタは、持っていた予備の服に着替えた。濡れた本を慎重に乾かしながら、彼の心はさらに重くなった。教室の中は静かで、闇が徐々に忍び寄っていた。終礼の時間になると、他の子供たちは皆家に帰った。ヨウタも遅れて帰る準備をしていた。しかし、不思議なことに彼は家に帰りたくなかった。




「どうせ家に帰っても…誰もいないのに…ほとんど生まれてからずっと一人だったから…ずっと…一人だから…でももう悲しくない…なのになぜ…涙は止まらないんだろう…?」




ヨウタの悲しい表情が浮かんだ。彼の声は震え、目にはまだ涙が溜まっていた。彼は家に直帰せず、本を読むことにした。ヨウタは席に座り、本を開いた。彼の年齢には似つかわしくない高レベルの経営、経済、数学など大学生向けの本だった。ヨウタは熱心に読み進めた。まるで簡単に思えるかのようだった。彼の手はページをめくりながらも少し震えていた。




しばらくして、「ああ…全部読んだ…次は考古学の本か?」ヨウタは考古学の本を読み始めた。ヨウタは特に考古学の本に集中しているようだった。考古学の勉強が趣味のようだった。彼は時間を忘れて本に没頭した。




考古学の本の最後のページが移った。ヨウタは最後の部分に集中していた。考古学の本には古書(古代文学作品)の最後の部分が載っていた。その部分は現在の翻訳本ではなく、過去のオリジナル原本の写真がそのまま本に貼り付けられて印刷されていた。




「この部分は理解できない…生まれて初めて本を読んで理解できない部分が出てきたよ…古書が古くて破れて、後ろの部分がないからかな?」ヨウタは同じ部分を何度も繰り返し読んだ。「どうしても…理解できない…それなのになぜ…涙がこんなに出るのかな…?」彼の心には疑問が渦巻いていた。




ヨウタの顔から涙がこぼれ落ちた。彼の内面深くから湧き上がる孤独と悲しみがもう抑えられなかった。彼は顔を上げ、窓の外を見つめた。暗闇が降り始めた空の下、月の光が薄暗く輝いていた。




古書の最後の部分が拡大された。最後の部分にはこう書かれていた。






「私は結局一人……(破れ)」

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