第6話 品川宿の悲劇
川光一警部はデスクに座り、これまで集めた資料を見つめていた。日本橋で佐々木佑紀が殺害されて以来、捜査は進展しているようで進展しない。この一件は、氷川にとって大きな挑戦だった。デスクの上には膨大な書類と写真が並んでいる。
その時、電話がなった、「はい、氷川。」
受話器を急いで取ると中原の緊迫とした声が響く。
「氷川警部、品川宿でまた事件です。宮川隼人が殺されました。」
氷川の顔色が変わった。「すぐに現場に向かう。」
氷川警部は駐車場に停めておいたパトカーに飛び乗り車を走らせた。
氷川警部、中原淳一警部、田宮晶子、そして鑑識の芝岡雄三は品川宿のアパートに到着した。アパートの一室には、宮川隼人の刺殺体が横たわっており、その近くには「俺の悲しみが分かるか」という紙が置かれていた。
「芝岡、現場の写真を撮って、遺留品の確認を頼む。インクの鑑定も急いでほしい。」氷川は鋭い眼差しで指示を出す。
芝岡は黙々と仕事を始め、カメラを手に現場の詳細を撮影し始める。田宮はアパートの管理人に話を聞くため、外に出た。
「管理人さん、ここで最近変わったことはありませんでしたか?新しい入居者とか、妙な騒音とか。」
管理人は困惑した表情で答えた。「いや、特に変わったことはなかったが…。ただ、昨夜遅くに宮川さんの部屋から争うような音が聞こえた気がする。」
「何時ごろのことですか?」田宮はメモを取りながら尋ねる。
「だいたい、深夜の1時ごろだったと思います。」
田宮はメモを取り終えると、氷川に報告し、聞き込みを開始するために周辺住民の家を回る。中原も一緒に行動する。
「中原、まず隣の部屋の住人から話を聞こう。何か手がかりがあるかもしれない。」
二人は隣の部屋の住人、中村雅也の家を訪れる。中村はドアを開け、二人を迎える。
「警察です。昨夜のことについてお伺いしたいのですが、何か不審なことはありませんでしたか?」
中村は一瞬考え込み、答える。「実は、夜中にドアの向こうで激しい声が聞こえたんです。何か大声で叫んでいるようでした。」
中原がメモを取りながら質問を続ける。「具体的にどんな声でしたか?何か聞き取れましたか?」
「うーん、はっきりとは覚えていませんが、確か『お前のせいだ』とか『許さない』とか、そんな感じの言葉が聞こえました。」
氷川はそれを聞いて深く考え込む。「それは重要な手がかりだ。ありがとう。」
氷川は現場に戻り、芝岡に最新の情報を伝える。「隣人の証言によれば、深夜1時ごろに争う声が聞こえたそうだ。『お前のせいだ』『許さない』という言葉が聞こえたらしい。」
芝岡は首を振りながら答える。「インクの鑑定結果が出るまでにもう少し時間がかかるが、現場の状況からすると、被害者は突然襲われた可能性が高い。」
「他に何か手がかりは?」氷川が尋ねる。
「まだ詳しくはわからないが、足跡や指紋も検出された。ただ、どれが犯人のものかはまだ確定できていない。」芝岡は慎重に答えた。
氷川は眉をひそめ、現場の全体を再度見渡す。「時間がない。次の手がかりを見つけるために、さらに聞き込みを続けよう。」
氷川は宮川隼人の妻、宮川雪菜を訪ねた。彼女は悲しみに暮れていたが、捜査に協力する意思を見せた。
「宮川雪菜さん、ご主人のことでお話を伺いたいのですが。」氷川は穏やかに話しかけた。
「はい…何でもお話しします。」雪菜は涙を拭いながら答えた。
「最近、隼人さんに何か変わったことはありませんでしたか?不審な人物と接触していたとか。」
雪菜は少し考え込んで答えた。「実は、最近何度か変な電話がかかってきたと言っていました。内容は詳しくは教えてくれませんでしたが、彼はとても悩んでいるようでした。」
「その電話の相手について、何か心当たりはありますか?」氷川はさらに問い詰める。
「わかりません。ただ、彼は過去に同級生と何か問題があったようです。特に、中学生時代のことを話すとき、いつも暗い表情をしていました。」
氷川は深く頷いた。「わかりました、宮川さん。ご協力ありがとうございます。この情報は非常に重要です。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます