第25話
ライリーは食事をしながら旅の間の事を話した。
シャロンは目を輝かしながらそれを聞く。
私は面白くない。
彼が話した場所はどこも私も行った事のある場所だった。
シャロンがこんなに楽しそうに聞いてくれるのなら私が話せば良かった、何故話さなかったんだ、と己を忌々しく思った。
「でな、土産があるんだが………」
そう言って、ライリーは私に目をやった。
「なに?今度はどんなものなの?」
シャロンは彼の目に気付かなかったようだ。
ライリーに尋ねた後、私を見る。
「レムス、ライリーはね、旅に出たらお土産を買ってきてくれるの。きれいなリボンとか、宝石とか。ね、ライリー」
「そう……良いお兄さんだね」
私ははしゃいだ様子のシャロンに笑顔を見せた。
心の中のイライラを押し隠して。
「えぇ、そうなの。で?ライリー?」
「あ~~家にあるんだが……今回はシャロンにじゃないんだ」
「え?」
シャロンが目を丸くした。
ライリーがまた私に目を向ける。
「あんたになんだ、レムス。それで、俺と俺の家に来てくれないか?そこで渡すから」
私はその言葉を聞いて目を丸くした。
「なんで?どうして?今ここに呼び寄せれば良いじゃない。ライリー、呼び寄せ呪文忘れたの?」
「呼び寄せ呪文?」
「あぁ、離れた場所にある物を自分の手元に呼ぶ魔法よ。魔法使いなら誰でもできるわ」
私の問いに、シャロンが答えた。
あぁ、と私は頷き、ライリーは顔を顰めた。
「忘れた訳じゃない。ただ、お前の兄貴としては、そいつと……妹の恋人になった男と二人で話したいって、そういう事だ」
「そういう事ね」
シャロンは頷いた。
だが。
私は納得していない。
「ぁの、一体どういう話を?」
幸せにしろ、とか、泣かせたら承知しない、とか、そんな事を言うつもりなら、お門違いだ。
私はシャロンを幸せにする自信があるし、シャロンを泣かせたら自身を許さない。
「あ~~ぃや、シャロンの子どもの頃の話だよ。聞きたくないか?」
「伺います」
私はシャロンを見て、即答した。
「ちょ、レムスにヘンな事教えないでよね」
シャロンがライリーに文句を言うのを、私はその手を握って止めた。
「シャロン、私が君のヘンな所を聞いて嫌いになると思ったら大間違いだ。きっとますます好きになると思うよ」
「レムス………でもこれだけは覚えておいて。ライリーは口が上手いの。だから、ただの石ころを見せて、この世に一つしかない宝石だと言いくるめてしまうわ。気を付けて」
シャロンの真剣な表情に微笑みながら頷いた。
「大げさだな。俺、嘘吐きじゃないぞ」
ライリーの言葉にシャロンは肩を竦めた。
月夜に吠える @Soumen50
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