これからについて☆(ついに初公開)
伯爵の屋敷にいた女性達の遺体は街の人々の手を借りることができず、カノンが魔法で氷漬けにして、王宮騎士団がやってくるまで、そのままにする事になった。
そして一夜明けて──
「まさかカノンさんが魔力持ちとは驚きました」
「私の魔法の事は御内密にお願い致します」
秘密を私に明かすほど、信頼関係が築けたようで少し嬉しい。
「しかしお嬢、前回の男爵の様にクズドラ息子をボコらなかったのはどうしてだい?」
護衛騎士の1人でこのメンバー最年長である36歳の『ゼータ』が軽口を叩いてきた。
(遂に二人目の名前が明らかに!?)
「ゼータ、それはね?1度手をあげたら、殺すまで止まらなくなりそうだったからよ」
ビクッ!?
シオンの言葉に冷や汗が止まらなかった。
「なるほどなぁ。あの光景を見たらオレですら殺意が湧きますからな。納得でさぁ」
「それでお嬢、ゼファー子爵の所に戻るのですかい?」
「そうね。もうここでやるべき事はないので、皇帝陛下を信じて、後の自己処理をお願い致しましょう」
「責任重大だな。シオンの信用に応えてみせるとしよう」
「あれ?カノンさん、私は皇帝陛下にお願いしたつもりなんですが?」
「えっ?ああ、そうでしたね。私がしっかりと、皇帝陛下に見たままの事をお伝えして、必ず協力してもらいますので、ご安心下さい!」
「そういう事でしたか。カノンさんはこのまま王宮へ戻られますか?」
カノンは悩む仕草をしながら答えた。
「ええ、もっとシオン令嬢に付いて行きたい気持ちがあるのですが、思った以上に大事件になったので、報告しに戻ります。ただ、機会があればまた同行させて頂いてもよろしいでしょうか?私も貴族の腐敗が許せないので」
「はい!それは無論、大丈夫です。カノンさんが居てくれれば心強いですわ。ただ気を付けて下さい。貴方は奴等に顔を見られています。命を狙われる可能性がありますのでご注意を」
「わかりました。肝に銘じます」
カノンことゼノン皇帝はそれについては心配していなかった。変装魔術で姿を変えているので見つかる以前の問題だからだ。
逆に常闇の蜘蛛に見つける事の出来ない人物として、切り札になるんじゃないか?
ゼノンは、これからの立ち回りについて考えを巡らせるのだった。
「シオン令嬢、最後に教えて下さい。ゼファー子爵の領地に行った後はどうなされますか?すぐに王宮へ上がられますか?」
「いえ、まだ3月になったばかりです。もう少し北東の領地まで足を伸ばそうと思っています。無論、4月までには王宮へ顔を出しますが」
カノンは顎に手をやり考えるように伝えた。
「北東に行けば、ヴァイス侯爵の直轄領に入ります。そろそろ自分の派閥の寄り子達が、どんどんいなくなっている事を知る頃です。何かしてくる可能性があります。敵は常闇の蜘蛛だけではないと、覚えておいて下さい」
「わかりました。こちらも気を付けますね」
ガシッと握手をして別れを惜しんだ。
「しかし、この東部の貴族達の腐敗は酷いですな。よく今まで暴動が起こらなかったものです」
「皇帝の憲兵まで腐ってたからね。トップが腐ると末端も腐ってしまう典型的なパターンです」
「まったくですな。腐るのはワインの発酵だけで十分ですぜ?」
クスリッとゼータの言葉に笑った。
「上手いこと言うじゃない?そう言えばヴァイス侯爵の領地では、新しいワインを開発して北の国々に受け入れられたそうね。是非とも飲んでみたいわ」
「東部の良いところは、ワインの旨いところですな。こりゃ楽しみだ」
年長者であるゼータは年若いシオンやメイド達を自分の子供のように思っていた。だから、その笑顔が曇らないよう、気を使ったのだ。
「さて、子爵の所へ向かいますか!」
シオン達はカノンと別れて、不安と後悔を顔に出さずに出発した。
そして子爵家に到着し、事の顛末を詳しく説明した。
「そうですか。まさかそんな犯罪組織が関与していたとは」
「クリフト子爵、この事は内密に」
「ええ、私も命は惜しいですからね。誰にも言わずに、墓場まで持って行きますよ。それと紹介させて下さい。私の娘を」
前回はお話だけで、実際の娘さんには会っていなかったわね。
呼び鈴を鳴らすと、子爵の娘さんが入ってきた。
あら?思ったより小柄で、華奢な身体の娘さんですわね。
「お初にお目に掛かります。ゼファー子爵家が長女ルナーリア・ゼファーです」
「こちらこそ。さっ、お掛けになって」
椅子に座るとより小さく見えますわね。
「この度はワルノヨー伯爵との婚約を無効にして頂き本当にありがとうございました」
「いいのよ。私は伯爵家の悪事を暴いただけなんだから、結果的に伯爵家はお取り潰しで、婚約も無くなった訳よね」
悪事を暴く事が凄いのだけれど……
ルナーリアは苦笑いをして誤魔化した。
「それより、ここを発つ前にお願いした事はやってくれましたか?」
「はい!土芋と赤芋の大規模栽培を始める為に、子爵領と元男爵領の間に、畑を作り始めました。人手の多くは困窮している男爵領から。うちの領からも孤児や貧困層を中心に働き手を募っています。とても素晴らしい計画書を頂き感謝しております」
スラムの様なものが出来ると治安が悪くなる。貧困層から仕事を募れば、すぐにではないが、生活に困る事はなくなり、治安も良くなる。
問題は最初の投資の資金が必要な事である。
「資金は足りたかしら?」
「ええ、十分過ぎます。二年は働き手に給料を支払っても足りるほどの援助をありがとうございました。私もヴァイス侯爵に渡すはずだった、無駄な献金を領民の為に使えて嬉しく思います」
それなりの金額だったからね。
「でも、いくらヴァイス侯爵でも、派閥の貴族に大金を寄越せなんて、よく命令できたわね。私なら断るわよ?」
「無論、私も断りました。誰が日曜の王妃になっても私達には関係ありませんでしたから。でも、その後に娘との縁談を無理矢理押し込んできたのです」
ああ、それでか。
子爵ほどの人格者なら断るわよね。娘の支度金代わりに献金せよと言う意味もあったのか。
「そうですか………」
「でも、私の考えは少し変わりました」
???
「ええ、私もぜひシオンお姉様に日曜の王妃様になって欲しいと思っていますわ!」
「今まで誰が7人の王妃になっても、恩恵を受けられるのは王妃の実家と、一部の親族のみでしたから。でも、今はシオン様に日曜の王妃になって頂きたいと本気で思っております」
親子で私をヨイショッと持ち上げてくるので、何やらむず痒い気持ちだった。
「まぁ、私は自分の為に日曜の王妃を目指すけどね!」
「協力は惜しみません。期待しております!」
「私もシオンお姉様の事をお茶会でしっかりアピールしておきます!それと、気になる情報があれば必ずお知らせ致します」
「それは助かるわ!こちらの令嬢達には疎まれているでしょうから、令嬢達の情報は願ってもないわ!」
シオンとルナーリアは握手をして励ましあった。
そんな様子をハルとアキが目に涙を浮かべて喜んでいた。
「ああ、ついにお嬢様にも初めてのお友達が!?」
(アメリアは平民なので、貴族の令嬢で初めてと言う意味で)
『ハル』は微笑ましい様子で見守っていた。
「お嬢、大切にしてくださいね!」
いたずらっ子の『アキ』は、からかいながら言った。
「あなた達ね~~!もっと主人を敬いなさいよ!」
「「きゃ~~こっわーーい!」」
むっきーーーー!!!!!
「待ちなさーい!!!!」
シオンとメイド達の追いかけっこが始まった。
「まったく、仲がよろしいことで」
「本当に。羨ましいくら仲がいいですわね♪」
護衛の騎士ゼータは、年長者として、子爵に謝った。
「本当に子供で申し訳ありません」
「いやいや、あんな姿を見てこの国の未来が明るいと確信しました」
えっ?真っ暗の間違いでは?
ゼータは思ったが、こんな無邪気にメイドとじゃれ合う方が王妃になれば、とても明るい国になると、一部共感するのだった。
※う~む、ハルがヒロインっぽくなってしまった。
これはハルを主人公にした方がいいのでは?
シオン 「ぶっ殺すわよ!」
ごめんなさい!
ハル→春なので髪色はピンク系
アキ→秋なので髪色は木の葉を思わせる赤茶色
※この二人のイラストは気合いを入れたので見に来て欲しいです♪
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