魔法ってあったんだ。(ありました!)

1時間経つ頃に、待合室に宰相達が入ってきた。

リオンはすぐに立ち上がると頭を下げた。


「お待たせいたしました。それと紹介致します。ゼノン皇帝陛下が信用の置く近衛騎士カノンです。この者が同行致します」


「カノンです。皇帝陛下の名代として同行致します。よろしくお願い致します」


「初めまして。リオンです。こちらこそよろしく」


カノンと呼ばれた近衛騎士は、黒髪に赤い瞳と言う珍しい出で立ちだった。リオンは監視役なんだろうなぁと思った。


「こちらのカノンは、皇帝陛下と同じ乳母で育った兄弟の様な間柄でして、信用に置けます。近衛騎士にも、実力で入った腕利きですよ」


宰相の説明に納得したリオンは、道すがら詳しい説明をすると言って握手を交わすと、すぐに旅立った。


「やれやれ、皇室に伝わる『変装魔術』は流石ですな。久々に見ましたが、アレを陛下と思う者はいないでしょう」


宰相の独り言を呟くと執務室へ戻るのだった。


一方その頃───


シオンは、ハルとアキに伯爵家の調査と、護衛騎士には街の調査を行わせていた。


「あの、シオン様はどうして危険を犯してまで、他国の領民の為にするのですか?」


アメリアは不思議に思い尋ねた。


「まぁ、最初は打算があったわ。でも、今は統治するヤツがムカツクからやっているのよ」


「打算……ですか?」


これまでのシオンの行動に、驚きはしたものの、やっていることは聖人様と同じ善行だ。


なんの見返りも求めずやっている。いや、何か見返りはもらっていたっけ?


「何か見返りを求めていたのですか?」

「それは当然よ。タダで仲間を危険に晒せないもの」


逆にいえば、自分1人なら見返りを求めず、危険に飛び込むと言うことでは?


アメリアは黙って聞いた。


「前に少し話したけど、私は今度、皇帝に嫁ぐ妃なの。でも、それは先の戦で大敗して、人質の様な意味で嫁ぐのよ。しかも、うちのオリオン辺境伯家は、代々帝国の侵攻を防いでいた家系。帝国の兵士をたくさん殺してきたわ。そんな私が皇帝に嫁ぐとなると………わかるでしょ?」


多くの人々から反感を買い、王宮内での嫌がらせは当然として、外に出れば石を投げられる。

そんな状況なのよ。


シオンの立場を知って青ざめるアメリアに続けた。


「だから、民衆に恩を売って私の印象を良くしておきたいのよ」


シオンの言いたい事はわかるが、アメリアはそれだけではないと感じていた。


「でも、シオン様は単純に困っている人を放おっておけないだけみたいですけどね♪」


「さぁ、どうかしらね?」


プイッっと横を向くシオンの顔が赤ったのをみて微笑みながら、商品の検分を進めるアメリアだった。







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