調査です!

事情がわかり、シオン達は外に出た。護衛の騎士が同行しているので万が一、クズドラ息子に出会っても大丈夫だろうと判断したのだ。


街の市場は帝国から街道が伸びている街なだけあって、品物が豊富にあった。


「交通の便は良いようね?」

「そうですね。憲兵も配備されている街なだけあって賑わいはあります」


女性達がフードさえ被っていなければ、至って普通だった。シオン達はいつも通りに市場調査をしていると、偶然に思いがけない人物に出会った。


「あれ?お嬢?」


そう前に皇帝に手紙を持っていった護衛騎士の1人だった。丁度、帝都からの通り道だったようで、無事に再開したのである。


「確かゼファー子爵領で合流するはずじゃありませんでしたか?」


「丁度会えて良かったわ。別の問題が出てね。ここの調査が終わればまた子爵家の領地に戻ることになってるの」


和やかに話していると、同僚の騎士が肩に手を置いた。


1「待っていたぞ!」

2「本当に!」

3「俺達だけでは止められないんだ!?」

4「これで負担が減る!」


涙目で語り掛ける仲間の騎士達に、戻ってきた護衛騎士の目が遠い彼方を見つめた。


ああ、戻って来たんだなぁ~と、黄昏れていた。


「お前達!本当に失礼だな!?」

(これで何度目だろうか?)


コホンッ

「それより御報告したい事があるのですが?」


フッと我に返り真面目な顔で伝えると、シオンは途中だった市場調査を止めて宿屋に戻った。


「それで、報告を聞きましょう。騎士リオン」


何と!ようやく護衛騎士の1人の名前が明らかになりました!?


いや、そこ驚くことか?まぁいいけどね!

騎士リオンは二十代の若い騎士であり、なかなかの優良物件である。ただし、まだまだ若いのでプレッシャーに弱いのを除けばだが。


そして、そんなリオンが話し出すと───


「お嬢~~!!!聞いて無いですよ!?どうして直接、皇帝陛下の執務室に通されて、宰相とかいる前で説明させられるんですか~~本当に勘弁してくださいよ~~~メッチャ近くで説明する事になって、胃が痛くて死にそうでしたよ~~」


さっきの騎士の顔つきから、急に泣きべそを掻く騎士に、仲間の騎士達は同情した。


1「うわぁ………」

2「オレ、リオンのヤツの事が羨ましいと思っていたのに、行かなくて良かったよ」

3「マジで胃が痛くなる案件だったな」

4「どっちがマシだったという違いしかない………」



シオンはカラカラと笑いながら答えた。


「あら、すぐに通されたの?前に送った手紙が効いたわね。少し皇帝の評価が上がったわ」


「グスッ、男爵の件を伝えた所、すぐに王宮騎士団の派遣と、お嬢の言う通り他の東部の抜き打ち調査をすると言っていました」


「予想通りね。これでこの街の現状も伝える事ができればいいのだけど………」


婦女暴行事件は現行犯でなければ逮捕は難しい。

どうにかして子爵令嬢の為にも、証拠を見つけたいわね。


そこで騎士リオンは思い出したかの様に言った。


「皇帝陛下からこれを預かってきました」


手紙と小さな箱を取り出した。箱は手の平サイズの小さな大きさであった。


手紙を読んだシオンは頬を緩めて微笑んだ。


「フフフッ、中々やるじゃない。ゼノン皇帝の好感度がまた上がったわ」


箱をパカッと開けるとまたシオンは口元を釣り上げて嗤った。


ガタガタッ


コソッ

1『またお嬢が悪い顔を!?』

2『今度は何をさせられるんだよぉ~』

3『危険手当はでるのかな~?』

4『自重って言葉どこいった!?』

5『それより胃薬が欲しい。経費で落ちるかな?』


それぞれが、今度は何をやらせられるのかと身構えた。


「そんなに身構えないでよ。取り敢えずはハルとアキはワルヨノー伯爵を調べてちょうだい」


「いいですけど、また勝手に動かないで下さいね?」


「わかってるから。宿屋で大人しくしているから許してね」


両手を合わせてお願いするシオンにハルとアキは頷くとシュッと消えたのだった。


「騎士リオンもお疲れ様でした。今日は飲んでもいいわよ~」


ピンッと金貨を指で弾いて渡した。


「さっすがはお嬢っ!労り方を良くご存知で!」


ヤッホイ!と嬉しがるリオンにシオンは聞いた。


「ああ、それと所感でいいわ。皇帝と会って話してみてどうだった?」


リオンは感じた事を伝えた。


「なるほど。男爵の犯した罪に悪態を付いたのね。ちゃんとまともな感性の持ち主で安心したわ」


「あれで怒らない訳ありませんよ。売られた女性達の足取りも探してくれると言ってくれましたからね」


取り敢えずシオンは安心してホッとため息を付くのだった。








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