次の街へ!(またしても………)
シオンはあれから数日滞在し、色々と引き継ぎをしてから王宮の騎士団がくる前に旅立った。
ここで、前の街で知り合ったアメリアが同行する事になった。
現地の人の意見が大事だと知ったからだ。
そして、アメリアも商人として各地を見て廻りたかったと言うのもあり、二人の思惑が重なった結果だ。
王宮へ行った護衛騎士には、次の落ち合う場所をあらかじめ決めてあるので、ゆっくり戻って来るよう伝えてある。
「さて、次はどんな所かしらね」
「しかし、現皇帝は有能だと聞いていましたが噂などあてになりませんね」
ハルは辛辣だった。
「まだ皇帝に着いてから1年ですもの。前にも言ったけど、地盤固めがようやく落ち着いたばかりで、地方にまで目が届いていないのよ」
「はぁ、それにしても次は7人もの妃を娶るなんて、本当に強欲ですよね~」
「まぁね。でも、昔からの通例ですから、王族は王家の血を絶やさない事が第一ですもの」
「あんな欲に塗れた王家など絶えてしまえば良いのに」
次は自国の王族をディスリだした。
「それは同意するわ。今の時代の王家ってどこもまともな人はいないのかしらね~」
馬車でゆっくり移動しているシオンの会話に護衛の騎士達は胃が痛い思いをしていた。聞く人が聞けば、侮辱罪で連行されるレベルの会話だからだ。
「お嬢、周りに誰もいないからと言って、余り王族批判の会話は控えて下さい」
「あら?私だって気を付けているわよ。あなた達だから話しているんじゃない」
いや、王族批判の会話を聞かされて俺達にどうしろと?シオンの暇つぶしに付き合わされる可哀想な護衛達だった。
そして、なんだかんやでようやく次の街が見えてきた。
「前の男爵の領地よりは大きな街ね」
「確かに、活気もありそうです。聞いた話しだと、ここには大きなワイン工場もあるとか」
「あら良いわね。さっそく街に着いたらいくつか買って飲んでみましょう。あなた達、今日は特別に飲んで良いわよ」
オオッ!!!
護衛の騎士達は歓喜の声を上げた。
「流石はお嬢!労り方を知っておられる!」
「役得ですね。どんな味か楽しみだ!」
いや、たかだかワインを奢るだけでこのテンションはどうなのよ?シオンは苦笑いをしながら街に入った。
「へぇ、流石にまともな商品が並んでいるわね」
「流石に前の町は酷かったですからね~」
市場には新鮮な作物が多く並んでいた。
「僅かな数日の距離の町でこれだけ違うなんて………」
アメリアは少しショックを受けていた。
「そこを治める領主によって、善政を敷くのか悪政を敷くのかで大きく変わるわ。だから治める者は慎重に選ばなくてならないの。後継ぎの教育をしっかりとね。そう、この私のような超絶美しくて可憐で聖女な心を持つこの私こそが───」
パシンッとアキが頭を叩いた。
「アイタッ!ちょっと何するのよ!?」
「すみません!お嬢様の頭が沸いて……頭に虫がいたので」
「ちょっと!頭に虫が沸いたって酷くない!?」
「アキ、お嬢様に暴力はいけないわ」
慈愛のハルが擁護した。
そうよ!もっと言ってやって!?
「殺るときは見つからないようにしないとね?」
慈愛のハルはどこいった!?
鋭いアキのツッコミとハルの裏切りにブーブーと子供の様に文句を言うシオンを無視してアキは目的の場所へたどり着いた。
「さぁ着きましたよ」
そこはワインの販売店だった。
「よし!野郎ども!好きな自分が飲みたいワインを一本選びなさい!どんな高いワインでも買ってあげるわよ♪」
「「うおぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!お嬢!一生憑いていきます!!!」」
ハイテンションな護衛騎士達と一緒に店に入った。
「ああ、ハルとアキは自腹ね?」
ガーーーーン!!!!!
この世の終わりのような顔をする二人は潔く頭を下げた。
「「申し訳ありませんでした!」」
「うむ、わかればよろしい!さぁ、みてきなさい」
「はーい♪」
実に上下関係がハッキリしている酒好きの連中であった。
店の中をよく見てみると、中々良い品揃えの店だった。シオンは高過ぎず、そこそこの値段の領地で良く飲んでいたワインをチョイスした。
ちゃんと味の比較をする為だからだ。
他のメンバーは遠慮して、シオンと似たようなワインを選ぶ者の入れば、遠慮と言う言葉を知らない、1番高いワインを選ぶ猛者もいた。
まぁ、街の商店街にある店なので高い酒にも限度はあるのだが。
こうして初日の街の探索は皆さんウキウキ気分で宿屋に戻った。
「では!新しい街と出会いにカンパーイ!」
「「カンパーイ!!!」」
あれから買い物をして周り、夕方に宿屋に戻って早速宴会が始まった。
「さてさて、ワインの名産地のお味はどうかな?」
香りを楽しんでから──
ピクッ
はっ?
シオンの目が鋭くなった。
そして一口…………
「ふ、ふざけんなっーーーー!!!!!!」
ビクリッ
仲間達が驚きシオンを見るとシオンはワナワナッと震えていた。
「シオンお嬢様!?ど、どうなさいました?」
ハルが恐る恐る尋ねた。護衛の騎士達もテンションが下がり何事かとシオンを見つめた。
「これ、ボトルの中味とラベルがすり替えられているわ」
!?
他のメンバーも味見した。
ハイテンションの時は気付かなかったかも知れないが、酒好きの連中だ、シオンに言われて飲んでみると───
「げっ!?お嬢の言う通りだ!中身が安酒にすり替えられてやがる!」
「いや、オレのは正式なワインだぞ?」
各自のワインを回し飲みしてみると、中から上のワインがすり替えられている事がわかった。中から下の物は通常のワインで間違いなかった。
「これは酷いわね………」
「お嬢様!これは文句を言いに行きましょう!」
「そうですよ!これは立派な詐欺です!こんな店、潰しましょう!」
酒好きのみんなは激怒した。
「そうね。私も楽しみにしていたのにムカッときたわ。まぁ、予想はしていたけどね~」
!?
なんですとーーーー!!!!?
シオンの言葉に驚く仲間達であった。
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