天誅!

皆が平伏す中で、シオンはアクダイカーン男爵の罪を、罪状を読み上げた。


「ダイカーン男爵!貴殿は自分の領内で帝国法以上の税を取り、さらに、水税なるものや、その他でも不当な税を取り立てていた!さらに、ゴロツキ達を使って、いたいけな女性達を罠にハメて借金を作らせ、奉公に出させる名目で奴隷として売払う!断じて許しがたい!この事は皇帝陛下に報告し、厳罰を処して貰うのでそのつもりでいるように!」


!?


「い、いや!私はヴァイス侯爵様の為に動いていただけだ!貴様が何をしたって侯爵様が助けてくれる!」


そんな男爵をシオンは冷めた目で睨みつけた。


「黙りなさい!証拠は全てこちらが抑えています!疑いない証拠がある以上、侯爵も貴様を庇うより切り捨てるでしょうね。皇帝陛下に恩を売る機会でもありますから。男爵の方こそヴァイス侯爵の性格をよく知っているでしょう?」


「そ、そんなバカな………」


両膝から崩れ落ちた男爵は真っ青な顔で呆然としていた。


ワアァァァァッ!!!!!!!!


大歓声が起こった。


「これで税が元に戻るぞっ!」

「助かるわ!」

「シオン王妃様!万歳!!!!」


領民達は抱き合って喜びあった。

確かにすぐに税を下げなければね。

明日の1番に早馬で手紙届けて貰わないと。


「さて、アクダイカーン男爵、すでに売られた女性達はどこに連れていったの?」


ハッとなって顔を上げるが、すぐに顔を背けた。


「ワシは知らん!郊外まで連れて行った後は『あの方』が用意した引取り役がきて、金と一緒に交換する手はずになっていた」


あの方ねぇ?

ヴァイス侯爵でしょうけど、口には出せないわよね。なら──


「そうなのね。それは仕方ないわね」


にこやかに微笑むシオンに、男爵は背筋が凍った。

シオンは両手をゴキゴキッと鳴らしながら近付いた。


「王妃としての罰は言い渡したけど、私個人の御礼がまだだったわね」


「な、何をする!?待てっ!ワシは本当に知らないのだ!!!?」


「それはもういいわ。情報なんて関係ないの。これはただの憂さばらしだから」


ヒィィィイ!!!!

男爵は殺されると思い後ろへ下がるが、腰が抜けて引きずるように下がるしか出来なかった。


「貴様にわかるかしら?税が高くお金が無くなって、一食のご飯を食べる為に身売りする女性の気持ちが!口減らしで泣く泣く家族を手放さなければならない家族の気持ちがっ!そんな女の子達を売り捌いて、どこに売ったかもわからないですって!本当にわかっているのかっ!!!!!」


シオンは馬乗りになり、アクダイカーン男爵の顔をタコ殴りにした。鼻血が吹き出てシオンの顔に掛かろうとも殴って殴って殴りまくった。


しばらく経って、パシッとシオンの両腕をハルとアキが掴んで止めた。


「お嬢様、もうその辺で」

「そろそろ死んでしまいます。気持ちを落ち着かせて下さい」


そう言われてシオンは立ち上がった。

上半身が血だらけであった。


「あ、あの、本当にありがとうございました!」


「「ありがとうございました!」」


1人の助けた女性が御礼を言うとその場にいた街の人々全員が頭を下げて御礼をいった。まだ土下座状態である。


「皆さん、もう面を上げて、立ち上がって下さって大丈夫ですよ?」


人々は立ち上がるとシオンに再度深い感謝を示した。


「我々の心を代弁してくださって本当にありがとうございました!」


「いいえ、これは地方にまで目の届かなかった王宮の落ち度です。長い間、大変申し訳ございませんでした。皇帝陛下に文(フミ)をだし、売られた女性達は必ず見つけ出します!」


シオンの方が頭を下げて人々は戸惑いを隠せなかった。普通は貴族、更には王族となる方が下々に頭など下げないのが常識だからだ。


「それと、皆さんにお願いがあります。この伸びている者達を縛ってどこかに閉じ込めておいて下さい。あ、男爵は殺されないよう別の部屋で。明日、早馬で皇帝陛下に手紙を出します。すぐに王宮騎士団が駆け付けてくれます。それまで見張っていて下さい」


「「かしこまりました!」」


「今後は、少しでも皆さんの声が皇帝陛下に届けれるように、日曜の位に着けるよう頑張りますね」


そう言った所でアキがタオルを渡してきた。


「お嬢様、顔をお拭き下さい、今のお嬢様は鮮血姫(ブラッディープリンセス)の状態ですよ」


「その呼び名は止めてよ。私はもう違うのですから」


シオンが苦笑いしなら顔を拭いているとアキは訂正した。


「そうでした!すみません。鮮血王妃(ブラッディークイーン)でしたね」


ドッと笑いが広がった。

そんなお茶目なメイドのアキは、シオンに頭をグリグリされる刑になったのは御愛嬌である。











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