人助け☆
一通りの情報収集を終えたシオン達は日も暮れて暗くなってきたので、宿屋に戻ろうとしていた時だった。
「やめて下さい!誰か助けて!!!」
悲鳴の様な声が聞こえてきた。
「何かしら?行ってみるわよ!」
「あ、お嬢様、お待ち下さい!」
声のあった方へ駆け出した。
角を曲がった所で、ゴロツキと思われる男達が、若い女の子を拐おうとしていた。
「あなた達!何をしているの!?」
シオンの声に振り向くゴロツキ達が言った。
「ああ?なんだお前達は?言っておくがな、これは正当な権利なんだぜ?借金を返せなかったこいつが悪いんだ」
なるほど。
借金取りと言う訳なのですね。
「なんだ。そういう事でしたのね。これはお仕事の途中に申し訳ございませんでした」
シオンは深く頭を下げて謝ると踵を返して帰ろうとした。
「おおぅ、気を付けて帰れよ」
余りにも聞き分けの良いシオンにゴロツキ達も呆気に取られてしまった。
「い、いやっ!待って!?待って下さい!助けて!!!」
シオンは顔だけ振り向くと【冷酷】に言い放った。
「助ける?どうして私が?借金取りさん達にだって生活があります。借金を返せないあなたが悪いのでは?」
いや正論なんだけど!正論なんだけど!
もうちょっと言い方があるのでは!?
女の子は助けを求める人を間違えたかもしれないが、他に誰もきてくれ───
「お嬢様!勝手にイカれては困ります!」
「ちょっとハル?なんか含みのある言い方じゃない?私は至ってまともよ?」
この変な人のメイドさんみたいだ。
「私は騙されたんです!借りたお金はちゃんと返しました!助けて下さい!」
ようやくお嬢様は女の子の方へ近付いた。
「この娘はこう言ってますが本当ですの?」
ゴロツキ達は笑いだした。
「何だか育ちの言いお嬢様じゃねぇか?確かに借りた金は返して貰ったぜ?だがな、借りる時に利息ってもんが掛かるんだよ。それを返せてねぇのさ」
「ちなみにおいくらかしら?」
「わ、私は銀貨1枚借りて、一ヶ月で銀貨と利息の銅貨1枚返しました!」
ちなみにこの世界の貨幣は、銅貨、銀貨、金貨、白金貨となっている。
銅貨10枚で銀貨1枚となる。
「一ヶ月で返すなんてきちんとしてますね。それで利息が違うと言うのは?」
「一ヶ月での利息は銀貨1枚なんだよ。この契約書に書いてあるだろう?」
バッと見せられた契約書をみると、利息は【銅貨10枚】となっている。
これをみてシオンは【悪】がどちらか判断した。
「なるほど。まさかこんな古典的な詐欺をやっている方がいるなんてびっくりですわね」
「なんだと!ケチつけるつもりか!サッサと返せっ!」
奪い返そうとしたゴロツキの手を躱してシオンが逆に突き付けた!
「この契約書は無効ですわ!利息の所に銅貨1枚と書いておき、そこの女の子がサインした後、【◯】を足して10枚にしたのでしょう。契約書の◯の字が歪んでいますもの」
「うるせぇ!そんな証拠はねぇだろう!?」
シオンは深くため息をついた。
「そもそも!一ヶ月で借りたお金と同額の利息は帝国法の違反に当たります!故に無効です!」
ビリビリッとシオンは契約書を破った。
「何しやがる!お前達!こいつ等も連れて行くぞっ!」
ゴロツキ達は5人ほどいてシオン達に襲いかかってきた。
「ハル、アキ、左右の男達をお願い。正面は私が」
「「はっ!」」
シオンは腰を落して手を前にして構えた。
ゴロツキ達も女と見くびっているのか、武器を持たず襲ってきた。
「少し痛い目みてもらう──」
下卑た顔で向かってきた男の顎に掌底を喰らわせる。そしてグラついた男の腹に強烈なボディーブローを打ちこむ。
そのまま男は気を失い崩れ落ちた。
まさに一瞬の出来事である。
シオンのメイド二人も残りのゴロツキ達を昏倒させ、気付けば全員が地面に倒れていた。
「この街には衛兵はいるの?」
「いるにはいますが、こいつらは領主に献金して見逃してもらっているので、動いてはもらえないですね………」
シオンは、う~~んと考えながら答えた。
「殺して埋めちゃダメ?」
!?
アメリアは驚いて止めて!と叫んだ。
「お嬢様、それは良いアイデアですが、騒ぎが大きくなるのは少々マズイです。泊まっている宿屋の裏に馬車を停めておく場所があります。馬小屋もありましたから、取り敢えずそこに閉じ込めておきましょう」
お連れのメイドも普通では無かったと女の子は後悔した。
「わかったわ。護衛の騎士を呼んできて貰える?」
「かしこまりました」
シオン達は素手でゴロツキ達をあっという間に叩きのめして、そしてこの女の子から詳しい話を聞くために場所を移動するのだった。
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