(穏やかな)死に関する幾つかの考察

石田くん

第1話 箒、焼却

 起きた。八時。今日は一日予定がない。いつもの様に過ごした。


 部屋を掃除しよう。男は実家から持ってきた箒を手に取った。掃除機はまだ買えていない。


 部屋の右隅で、塵取に、集めた部屋中の埃をサッサッと掃き入れ始めた。素直に入るもの、浮き上がって外に溢れるもの、塵取と床の僅かな段差に詰まるもの、色々ある。埃を掃き入れつつ、その合間合間に自分の足に箒を当てることが多くなった。すると脛の真ん中から先はある一触れを境に、埃の様な粉になって塵取に収まっていった。それを繰り返して、胸まで埃になって、自分を塵取へしまっていった。腕をめいっぱい上げて箒を動かし、首も、頭も埃になって、塵取へ入っていった。腕は最後まで動き続け、腕自身に箒の先を当てて腕自身を短くし続けた。そして最後に手まで埃になって、終わった。すべては塵取の中に入った。

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